第二十話 「なりんの援護くん」其の1
なんとか穏やかな時間にたどり着き、
そしてなりんは仲間たちとともに
そこを発ちます。
さて。
第二十話 「なりんの援護くん」
其の1
写真撮影を済ませて、皆で改めてお団子で
お茶をいただく。
歩も三色を一口ずつ齧ってみせた。
歓談のなかで、時間のない者から先に解散と
なってゆく。
先ずこりんと援護くんが病院を発った。
こりんは部活に、援護くんは介護の業務に
戻る。
「じゃあ、また学校でな。」
「またね、こりん。」
そして。
「援護くん、またね。」
「はい。では、また。」
またねと再会への挨拶をかわす、なりんと援護くんのふたり。
潤いに湿っているような、それでいて
爽やかに乾いているような、そして
そのどちらでもあるような、ないような。
そんな万感の響きがこもっている。
なりんと援護くんはお互いにしっかりと目を合わせ、
まるで眼の底に姿を刻み込むかのようにみつめあって
そして援護くんが歩き出し、なりんが見送った。
穏とマサキとるぅーはしばらく病室に残るという。
なりんとしおんヌは、わーにゃたちの車に
同乗して、今夜のステージを務めるべく
アイドルカフェ・しすたあ☆ふっどに向かう。
運転はぺいぺい、助手席はしおんヌ
後席は運転席のうしろがわーにゃ、真ん中に
もいもい、そしてなりん
だったのを、わーにゃが
「私はこちらで。」
と、真ん中にちょこんと納まった。
車まで、マサキが見送りに来た。
「なりん、今日もエンドくん歌うのか。
歌えるのか?」
車外から、とがめるのではなく気遣う言葉をかける。
マサキもだいたいのいきさつは、
歩やベリ子の含みのある言葉や穏の
皮肉交じりに簡潔な説明から、勘よくつかんではいる。
そもそもがふたまた、もとい両天秤な
なりんの恋ごころに、マサキは寛容だ。
自分のほうが後から加わった新参者という
わきまえもあったのだろうか。
そして、マサキは先ほどのふたりの姿も目にしている。
どうあれ、なりんのマサキとの人間関係は
延焼して破局、なんてことになる様子もなく、
今まで通り特ににかたちを変えることは
なさそうだった。
後部席の窓からマサキを見上げる、なりん。
「ううん、今日は別のうたよ。」
ちょっと意表を突かれた顔のマサキ
「まだ奥の手があったのか?」
「やったことのある歌よ。
だから大丈夫。ごめんね、心配かけて。
ちゃんとステージ務めてくるからね。」
「そうか…。しっかりな、なりん。」
「ありがとう。またね、マサキくん。」
オートウインドウが上がり、
運転席のぺいぺいがアクセルを丁寧に浅く踏んで、
車を静かに発進させた。
今回は、とくに後書きに何を記すべきか
何故か何も思いつけません。
仕方がないので、
投稿のタイミングを優先することとしましょう。
この物語が、いつかあなたの眼にもとまりますように。
では!