話題の援護くん 其の2
なりんは電話でベリ子から
ことの次第となりゆきを教えてもらいます。
さて。
其の2
「はい、なりんです。ベリ子さん、ありがとう電話。
私、どうしよう」
ベリ子からの連絡があったのは、ほどよい放課後の
午後4時頃だった。
「なりんちゃん、落ち着いて。
記者さんと援護くんを取り持ったのは歩よ。」
「え!?」
「しすたあ☆ふっどの蛭子さんからこんな取材の問い合わせが
あったって連絡を受けて、それから次にうちが
記者さんから連絡もらった時に、歩が
記者さんに人となりを見たいって言って
動画を送ってもらって」
おお、現代的な段取り。
「それを見た歩が判断して、援護くんに記者さんの動画を
みせたのよ。
思い切って取材を受けてみないかって」
「そんなことがあったんですか。」
後夜祭からまだ何日も経っていない。
本当に今なりんの身の回りの出来事は
全てがスピーディだ。
「援護くんは最初乗り気じゃなかったけど、
歩が身元は隠したままで主張はしておけって。
それで援護くんのヤングケアラー支援にも
プラスになるように、歩が計らうからって」
「それで、援護くんが乗ったんですか?」
「そう。それが歩の張り合いにもなるんだったらって」
張り合い。手術を待つ身の歩には
気を紛らわせる張り合いが必要と
いう理屈なのか。
だが。
なりんは思った。それって、
援護くんをその張り合いのだしにするってこと!?
…いや、こうなった大元は私のうっかりなんだけど。
「あの、うちのお姉ちゃんは関わってないですか?」
「のんちゃん?ええ。これは歩と援護くんの
ふたりで進めた話しよ。」
あぁ、ごめんなさいお姉ちゃん。
あなたのせいと思いかけたけど、ぬれぎぬでした
まるっきり私でした。
「ベリ子さん、あたし、ステージで喋り過ぎちゃって。
援護くんに謝りたいんだけど、援護くん忙しいのかもらしくて
メッセに返事まだくれないんです。」
ちなみに、後夜祭の配信録画は巧みに編集
されていて、援護くんについての発言は
削られている。
つまりなりんはネット発信まではしないで
済んでいるものの、
記者は後夜祭の現場にいて、ステージ上の
なりんとレラのMCから直接情報を得ていたと
いうことだ。
てことは、
あの日マサキを探しに店外に出た際に
もいもいに呼び戻されていなかったら、
自分が直接に記者に取材されていた可能性だって
あったということだ。
危なっかしいな、私。そして、
もいもい様様だなあ。
「そう。早く返信くれるといいわね。
この次援護くんがお見舞いに現れたら、
あたし達からも援護くんに直接伝えるわね。
なりんちゃんが気にして謝りたがっているって。」
「お願いします。あの、実際、援護くんどんな感じですか。」
「怒っている、て感じではなかったけど、
そうねえ、子どものすることとは、思われたかもね。
援護くん、優しいから。」
ずきっと突き刺さる言葉だった。
あたし、女じゃなくて子どもだ。援護くんにとって。
自分で、そうしちゃったんだ。
なりんは改めて大失敗を自覚した。
「でもね。あたしも記者さんに会ってるけど、
そうわるいことにはならないんじゃないかな。
実際の記事も抑制が効いているものだったし。
そこだけでも、気に病まないでね。」
「うう…、ベリ子さん、なりんは深く反省していますって、
援護くんにお伝えください。」
「分かったわ。あ、それからね。」
「はい。」
「援護くん、もう次の助けたい子供をみつけて、
力になって
あげてるみたい。」
「え?そうなんですか。」
「だから余計に忙しくしているのかもね。」
「そうなんですね…。」
援護くんは次々と子供たちを助けていく。
もとから、それが援護くんの願いで、
援護くんが援護くん自身に命じた使命。
やはり、私ももう助かった子供として、
押しのけられてしまうのだろうか。
いや、それが寂しいから、私は援護くんと共に
子供たちを助ける側にまわる決意をしたのだ。
一緒に子供たちの力になる、
援護くんの隣りで。
今思えば、自分のための決意だったなあ。
よくも、わるくも。
「ベリ子さん、援護くんへの伝言、
よろしくお願いします。あの、それから
歩くんにお大事にねって」
「伝えるわ。」
なりんはスマホを持ったままひとりで何度も
お辞儀をして、通話を終えた。
またもなりんのいないところで
状況は進んでおります。
なりんは援護くんが本来受けるはずのない
取材を受けて、それが記事になってることに驚き、
そのきっかけが自分の発言からと気にやみますが
援護くんは歩とも話し合い、自分の意志で取材に応じています。
そして、その取材すら関係なしに、援護くんは
なりんの知らないどこかのヤングケアラーであろう子供の
力になってあげてます。
ふたりの時間は、それぞれの方向に明確にずれ始めたのかも
知れません。
なりんは果たして、援護くんの隣りをもう一度
目指すのでしょうか!?
この物語が、いつかあなたの眼にもとまりますように。
では!




