第十一話 リトルビートプリンセス 其の1
文化祭があった日曜の夜に、
なりんは父・澤菜賢一に電話をしておりました。
さて。
第十一話 リトルビートプリンセス
其の1
やや遡って、
文化祭当日の夜のこと。
「お父さん、元気?」
「凜!文化祭どうだった?高橋君との研究発表、
うまくいったのか?」
その晩、なりんは父の賢一に電話していた。
「うん。大成功だったよ。」
「そうかあ、そりゃよかったなあ、おめでとう!!」
祝福の声に、芯が通っている。
自分からは立ち入らずに、されど
娘からの報告の電話がかかってくることを
待ちわびていたのだろう。
本当にいいひとで、そして気持ちが熱い。
自慢の父だなあ、となりんは心から思う。
「ありがとうお父さん。あのね、相談したいことが
あるんだけど。」
「なんだ?どうした。」
「お父さんの友達で、ドラムできるひといる?
あたしが会える人で。」
「穏がいるじゃないか?」
「そうなんだけど、そのお姉ちゃんがもう
ドラム続けらんなくて。
ベリィが休業になったから、就活で忙しいみたいで。」
なりんは父に心配かけたくない思いもあって、
多少の事実は端折って説明した。
「父さんの仲間でか?のんの代わりに?」
「いや、ドラムを教えられるひとが必要なの。
まったくの初心者の中学生に。」
「うーん、つまりその子がバンドに代わりに
入るってわけか。」
「そう。」
「そうだな…。なりん、その子がモノになるまで、
のんの代わりを直接できる子ならどうだ?」
「えっ。」
そんなの、願ってもない。
「会ってみるつもりがあれば、お伺いをたててみるぞ。」
お伺いを?立てる?
「お父さん、どういう立場のひとなの?そのかた。」
「いや、そこはユーモアだ。話し進めていいか?」
「うんぜひ。」
こうしてその晩の通話は一旦おわり、
次の土曜には閉店中のベリィを借りて会えることに
なった。
相手の素性は、伏せられたままだ。
ちなみにその翌日の日曜にはもう
フェス後夜祭の本番が控えている。
なりんはこりんと、それから仕方ないので(?)
穏にもお願いして
またベリィに集合することにした。
「教わるのがマサキくんなら、もうマサキくんも
呼んだら?しおんヌさんも。」
穏の提案で、マサキにも連絡をとってみると
「おう!しおんヌには俺から連絡入れとくよ!」
とマサキはうっきうきで快諾した。
この第十一話では、物語の中で今残っているタスク
「ドラマー探し」と「フェス後夜祭」とを
双方進めてゆく予定です。
あるいは次エピソード(第十二話)に分離するかもですが。
(しそうだな、どうかな。)(というところ)
ドラマー探しはもっと引っ張ってもよかったはずではありますが、
自分(作者)の中の決定を、早く書き著してしまった方が
いいかもなあという謎の焦りによりここで行こうと判断しました。
なりんちゃん、親(お父さん)の力を借りた形になります。
いいんじゃないですかね、それでも。こだわらなくてもね。
親ガチャかといえば、長年の単身赴任で普段会えないお父さんでもありますし。
ほかの候補としては
マサキとの会話で言及もあったベリィ方面、しおんヌ人脈方面、
そしてアイドルカフェ方面もありましたね。
また、普通にネットなどで募集かけたりとかね。
サブタイトルはぎりぎりまで考えて、感覚的に決めました。
この物語が、いつかあなたの眼にもとまりますように。
では!