文化祭の藤堂家 其の3
3人そろった藤堂家と、なりんこりんで昼食会。
そして食事が済んでの組み分けは、
こりんとるぅーちゃん、マサキは単独、そして
なりんと春菜さん!?
…、さて。
其の3
午前中、るぅーは春菜さんと校内の各出し物をまわって
ふたりで注目を集め、
昼食どきに予定通りなりん達の教室にやってきた。
「焼きそば買ってきたよ。」
他にもいくつもの収穫を自慢げに見せる、るぅー。
「皆で食べよ?」
もちろん、なりんもこりんもやぶさかでない。
「いいんですか?」
春菜さんにお礼を言い、机を集めたテーブルに
つく、なりん、こりん、そして藤堂家の三人。
裕人は総監督兼発表者なので
体育館で学級委員たちとおにぎり片手に
入念に準備中だ。
マサキは今回もぶっつけ本番なので時間があり、
なりんは発表までは会場付きの展示観覧受付だ。
「春菜さん、おかげんいかがですか?」
「しばらく寝たきりだったのであちこち痛かったんだけど、もうリハビリも済んで
そろそろ出勤始めるところなの。」
春菜さんは、気さくなひとのようだ。
「ご快復、なによりです。」
「るぅー、おれのおすすめポイントは周れたか?」
「お兄ちゃん、なんでお化け屋敷とかホラー喫茶とか多いのよ。
やだって言ったじゃない。」
食事が済んだらるぅーはこりんと先に
体育館に向かい、春菜さんのぶんまで席取りを
して待つことになった。
「はるか、マサキ、ちょっとなりんさんとお話ししたいことがあるから。」
「おう、それじゃマサもちょっとひとりで歩いてくるぞ。」
マサキは既に人気者なので、どこへ行こうと
ひとりになることはない。
「おれ今日も一生けんめい喋るから。
ふたりとも、しっかりみてくれよな。」
マサキの頬が紅潮している。
「マサキ、しっかりね。約束も忘れないでね。」
「おう。約束は3つ。昨日もちゃんと守ったよ、ばあ…、」
ここで「ばあちゃん」と呼んでしまえば、
約束を守れても水の泡だ。
どう呼んだものか思案した様子の後、
マサキが選んだ呼び方は。
「…春菜ちゃん。」
自分で言っておいて、マサキはいよいよ盛大に
赤くなった。
こんなマサキくん、初めて見た。
「あはは。」
笑顔で返す春菜さん。ほんと、
不思議な家族だなあ、藤堂さん家。
春菜さん、聖母の余裕だなあ、と思いながら
なりんがその横顔を見上げると。
春菜さんもほんの気持ち赤くなったような、
それでいてそれと同時に蒼ざめたような
不思議な顔色で、笑顔をゆっくりと収めているところだった。
あれ?なんだろ、この感じ。
並んで手を振って三人を見送る、春菜さんとなりん。
「…さて。」
あらたまる春菜さん。
「なりんちゃんって呼んでいいかしら。
ぜひ聞いて欲しい話があるのよ。」
美しい顔がぐいっと横を向いてなりんをみつめる。
「はい。」
ソウル、ソウルハンガーにまつわる話があるらしい、って
マサキくんが言ってたな。
並んだ春菜さんの両目を隣りから見つめ返す、なりん。
どんなお話が聞けるんだろう。まだちょっと
想像がつかない。
このあと なりんと春菜さんのやりとりが始まります。
どんどんまいりましょう。されど続きはまた明日。
この物語が、いつかあなたの眼にもとまりますように。
では!