「たいく館」の奇跡 其の4
裕人の研究発表に続いて、
マサキ少年の講演が始まります。
彼は自ら満場に集めた高校生たちに
果たして何を話すのか…
さて。
其の4
「みんな、おれは藤堂マサキ。中学一年生だ。
おれの話を聞いてくれ。」
ここで一斉に拍手が贈られた。校内周りの先々で
既に人気を博しているマサキへの歓迎は
期待に比例して大きなものだった。
「マサはばあちゃんと妹の三にん暮らしだ。
この夏休みにばあちゃんが倒れてしまって、
マサと妹は病院でとほうに暮れたんだ。
なんせ、マサたちにはばあちゃんしかいないからな。」
おぅ…と会場が嘆息する。
のっけから重い事情で、なかなかに聞かせる話術だ。
「幸いばあちゃんはあるひとのおかげで
息を吹き返したが、もう少しでマサは
ばあちゃんを看病しながら妹の世話をみて
こんごの暮らしを立てるさんだんも立てねば
ならないところだった。」
あるひとというのは、援護くんのことだろう。
兄妹は、純粋に援護くんの魔王力?が
大切なおばあちゃんことうら若き春菜さんを
甦らせたものと信じているようだ。
るぅーがベリィで、なりんがソウルハンガーを
弾くことに既に心配しなくなっていたのも
この魔力の実績とでもいうべきものが、
―ならばなりんちゃんの魔力もあてにできることだろう―
という不思議な信頼に繋がってのものだった。
「みんな。マサは薄氷一枚でたすかったが、
マサとちがって本当にそういうめにあってるこどもだって、
この世にはたくさんいるんだ。」
マサキの真摯な眼の光と語りが、観衆の
胸に迫る。
「そんなとき、そんなやつが近くにいるって
気づけたとき、
なにも全部助けてやれなくてもいいから、
みんなができることをしてやってほしいんだ。」
なりんはマサキの演説力に驚いたし、
見るまでもなく裕人も目を見開いて驚いている。
「声をかけるでもいいし、事情を知るだけでもいい。
誰でも、なんでもできるわけじゃない。」
観衆の目と耳が完全に吸い込まれる。
「ただ、ほっとかないでやってくれ。
実際マサは、すごく助かった。
助け合いってやつはさ、きれいごとなんかじゃ
ないんだ。
もっともっと、なまなましくて、せつじつな
ものなんだよ。
みんなだって、こまったときは助けてもらっていいんだ。
だから、ちょっと気になるやつがいたら。」
そこで、マサキ少年は息を整え
「そん時は、声をかけてやってくれ。
それがマサの、みんなへの願いだ。」
会場がしーんと静まり返り、やがて、
ぽつぽつと拍手が始まり、ひとり立ちあがり
ふたり三人と立ち上がり、一斉に大喝采が
広がった。
マサキは満面の笑みで手を振り、
「ごせいちょうありがとう!またな!」
と壇上を降り、なりん達の待つ舞台袖へと
迎えられた。
駆け寄るなりんと、その前に割って入って
両握手でマサキをホールドする裕人。
先生たちも感涙にくれて歓待している。
拍手はしばらく鳴りやまず、
パフォーマンス組の発表のための会場入れ替えが
しばし滞るほどだった。
明けましておめでとうございます!
今回のマサキの演説、大晦日にあげて
作品から皆さまへのメッセージとして
良いお年を!なんてのも理想的だったのですけどね。
新年いっぱつめのメッセージで2025年のスタート
というのもまあわるくないかなー、なんて
結局こうしてみました。
思えば去年は大変なお正月で始まったものでした。
人々の受難と助け合いは今も続く現在の現実であり
今後の我々の助け合いは益々(ますます)切実なものに
なっていくのかも知れません。
そこも踏まえて尚。皆で良い年にしてまいりましょう。
この物語が、いつか誰かのきっかけにもなれば幸いです。
それでは、本年もよろしくお願い申し上げます!




