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「たいく館」の奇跡 其の2

今回は裕人たちの発表本番直前までの

経緯と様子をお送りします。


さて。


   其の2


「講演まで時間があるな。それではマサは

校内を見て回ることにするぞ。」

「待ってください。講演があるとはいえ

他の生徒たちにとってはマサキくんは

部外者のままです。ひとりでは行かせられませんので、

 …そうだ。」

 ここで裕人はコーヒーサーバー担当組の

こりんに声をかけた。

「こりんちゃん。マサキ君の付き添いと案内を

お願いできますか?」

「分かった。それじゃマサキ、行くか。」

「おう。なりんぬは来ないのか?」

「あたしは展示の受付。実際に取材相手との場に

いたのも私だから、これでも展示のかなめなの。」

「そうなのか。」

 こうしてこりんとマサキの組み合わせによる

文化祭の校内巡りが始まった。


「金子さん、いとこ?」

「かわいー!」

「おっすおれマサキ。マサと呼んでくれ。」

 器量がよくて愛嬌たっぷりな愛くるしいマサキ少年は、

女子であれ男子であれすぐに魅了し可愛がられ

どこでもたちまち人気者となった。

 連れまわるこりんも誇らしく、なんだか鼻高々だ。

「みんな、マサは今日たいく館でマサの家の

話をするから、聞きに来てくれ。」

 屈託なくマサキがきり出す。

「おう。楽しみにしてるぞ。」

「マサキくんのお話し、楽しみ。」

 こんな調子で宣伝して周るので、裕人の研究発表は

講演部門では異例の大入りとなった。

 例年、午前は開会式と吹奏楽部、昼食時間を挟んで

研究講演部門、一度入れ替えがあって

ダンスや演劇は改めての入場となり

シメの軽音部となるのだが。

午後いちの講演は関係者の生徒や教職員が

まばらに座るのみだったものが

今回は満席だ。

 裕人の前の発表者は、発表中にも徐々に増える

客席に戸惑い、終わり際に満席になる状況に

やや憮然ぶぜんたる面持ちだったが。

 そうして集まったいつもの客層とは異なる雰囲気の、

にぎやかな喧噪けんそうが心地よい。 

 話はれるが、土曜日はそもそも

内々のリハーサル的な側面があり

本番は一般開放の日曜日という共通認識が

あった。

 ついでにもうひとつ逸れた話をすると、

校内にも軽音部があったものの、四月に見学してみて

ちょっとそりが合う雰囲気ではなかったので

なりんは入部しなかった。

 放課後の祖父の見守り介護を引き受けたのも

そういう経緯もあってのことだ。

 そしてその祖父は今は自らの選択で

養老院に入っている。


 閑話休題、「たいく館」こと体育館に話を

戻すと。

 裕人も思いがけない大入りに戸惑っていたが、

それでも本番直前まで原稿の見直しを怠らず

現状万全の準備で臨んだ。

 なりんもこの時間は裕人を壇上で補助する。

 思えば元々はなりんが裕人にヤングケアラーの

実例としての登壇をオファーされたのであって

 それを即答で断り、出来る範囲でなら協力する、

という申し出を十割以上当てにされて

なりんは裕人の精力的な取材に同行し、

今もこうして共に出番を待っている。

 土壇場で多くの生徒が発表を辞退したが、

彼らが取材で多くを語ったのもなりんの

いわゆる「本音の魔力」の影響によるものなら

取材を受けておいてぎりぎりでなりん同様

発表を断ったのも、

なりんの魔力で過剰に喋り過ぎてしまったのを

気にしてのことだ。

 なりんはなんとなくこの因果に気づいてしまっては

いたが、

ここまでこぎつけたのだからこの際

これ以上考えないことにしていた。

 こりんは客席で壇上を見守っている。

「裕人くん。いよいよだね。」

 なりんが裕人に声をかける。

「はい。僕はもう自分の成果を発表するのみです。

 ただ、」

「ただ?」

「マサキくんは大丈夫でしょうか。」

 そのマサキを見れば、なりんたちと同じ舞台袖で

リラックスこの上ない様子で、

女子達どころか教師たちにまででられている。

「高橋くん。そろそろです。」

 体育館担当の運営から声がかかる。

 うなずく裕人。

「続いては、―」

 紹介のアナウンスに続いて、裕人が舞台袖から

壇上に進み出た。


おさらいですが、「金子さん」とは金子鈴かねこ りんさん

つまり、こりんのこと。

なりんというニックネームを決めたのは援護くんで、

こりんは「かねこりん」から「ねこりん」と名付けられそうになり、

本人が拒絶して自ら「こりんで手を打つ。」とこの呼び名を決めました。

なりんはこのいきさつを覚えていて、

のちに猫以外の動物にこりんを例えるなら、と

全身とげとげの針針だけど愛らしい生き物「ヤマアラシ」の英語名から、

「こりんTHEポーキュパイン」というバンド名を考案し、採用されます。


そして。

「遠藤圭吾」を縮めて「援護くん」と名付けたのは、実はこりんちゃん。

援護くんはいっぱつでこの名を気に入り、なりんもそうなんですが

いつもの内心の声で「お前が名付けるのかよ。」と、悔しがってます。


で、これこそ大切なお話しなのですが

こりんが猫なぞらえを照れてイヤがったのは

あくまで物語の上での創作であって、

こりんのヴィジュアルのモデルである

橋迫鈴はしさこりんさんは、

別に猫イメージに拒絶もありませんし、

自ら猫耳髪型もしたりします。


て、ことはですねえ。

皆さん橋迫さんのことも、試しに

ねこりんって呼んであげてみたりしてください♪

(※無責任な提案)


この物語が、いつかあなたの眼にもとまりますように。


では!

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