赤いパスタは解(ほど)けない 其の4
物語のなかでは九月の初旬ですが、
我々の世界では本日はクリスマスイブ。
というこのタイミングで藤堂家の聖母、
「おばあちゃん」ことうら若く麗しき
藤堂春菜さんのお話。 とはいえ
ご本人は登場せずに伝聞のみなのですが。
さて。
其の4
食事で空腹が満たされるとなりんの気持ちも落ち着き、
三人は募る話に花を咲かせた。
ふたりの大切な「おばあちゃん」は、
さっき耳にした通り「藤堂春菜」さん。
身寄りを失ったふたりを引き取って育てて
くれているのだという。
「マサはるぅーより後に来たんだ。」
「えっふたりってもしや」
「別々に生まれて育って、ばあちゃんのおかげで
兄妹になったんだ。」
藤堂春菜さん。どんな経緯で、
なんでそんな偉業を。
援護くんとも通じるものがあるひとなのかな。
「ばあちゃんは美人だからな、売れっ子のホステスさんで
マサたちを育てるだけのよゆうはあったんだ。」
ホステスさん。いまどきなかなか聞かない
単語だな。
要はクラブ勤めとか、いわゆる夜職のひとなんだな。
「でもなんで自分のことをおばあちゃんだなんて」
「それはなぞだ。マサたちにも分からん。」
待てよ。夜職ってことは。
お姉さん呼びもお母さんやママ呼びも、
もう職場だけでうんざりなのかもしれないな。
でも、名前呼びだっていいだろうに。
「でも一時期仕事ができない時期とかもあって、
ばあちゃんは取返しをつけるのに無理したんだ。
るぅーのことも心配だったし。」
うつむく、るぅー。持病による発作を思えば、
なかなか熟睡も叶わなかったのかも知れない。
兄妹も愛に溢れているが、そんなふたりに
育っているのも、春菜さんが愛に溢れたひとだから
なのかも知れない。
そうか、だから援護くんのことも兄妹は
比較的すんなりと受け入れられたんだ。
そんな無償の愛を注いでくれるひとの実在を、
身をもって知っているから。
なりんは、ほんの少し姿を垣間見ただけの
「春菜さん」の偉業を聞くにつれ、落ち込んでいる自分が
鼓舞されてゆくのを感じた。
ちょっと寂しかったくらいでなんだ。
あたしも愛ある人にならなくちゃ。
援護くんの隣りに立つって、そういうことよ。
やがて約束通りしおんヌが兄妹を迎えに現れ、
その日はお開きとなった。
そういえばしおんヌさんとのなれそめも
聞けてないままだな。それは次の機会だな。
「なりんぬ、次は文化祭だな。」
「またね、みんな。」
「ワタシは、次はおそらく後夜祭の打ち合わせ
デスネ。」
駅で、三人と互いに手を振る。
なりん達はそれぞれのホームから
帰途についた。
メリークリスマスイブ!
皆さん、愛あるひとになりましょう!(唐突)
私もなるべくそうあるように努めます。
あ、もう仕事始めなきゃ、
ではまたシーユゥ、ドロン☆