第四話 赤いパスタは解(ほど)けない 其の1
休業中のベリィの店内。
一同は仲良く店内を清掃し、
先ずは本来の編成のポーキュパインが
演奏を披露することになります。さて。
第四話 赤いパスタは解けない
其の1
ベリィに入った一同は、先ず店内の掃除から
始めた。
「ここがベリィのステージ」
「そうよ。はい、るぅーちゃんはこれ。」
物珍しそうなるぅーの手に、穏から
モップが渡される。
「なに?これ。」
「ベリィを使う者は、ベリィを清めるの。
それがベリィの掟。さあ、
先ずはおそうじよ。」
ここのところベリィの店内の出入りは
こりんひとりだったので、これまでは色々と
手の行き届かない箇所もやむを得なかったものの
今日は人手がそろったので、隅々まで大いに
捗った。
「こういう段取りも楽しいでスねェ。」
素直な性分の顔ぶれなので、仕事も早い。
「さあ、それではレッツプレイといきますか。。」
なりんとしおんヌが自前のベースを取り出し、
こりんはベリィに借りているエレキギターを
持ってくる。
穏はステージに据え置かれているドラムセットを覆うシートを
取り外した。
楽器の点検、アンプの電源、コードの接続、準備が整い
先ずはポーキュパインが本来の編成で
持ち歌の「ベリィHOT」を披露することに。
ステージにこりんTHEポーキュパイン、
客席フロアに裕人とマサキとるぅーの3人が
椅子を置いて座った。
その傍らにしおんヌこと詩音はベースを構えて立っている。
ある程度は演奏を見て覚えるつもりのようだ。
その立ち姿がとても様になるので、
ステージ上から対面の形で観ているなりん達は
内心ちょっと見惚れた。
ステージを見上げる、るぅーと裕人の目が
同じくらいキラキラしている。
マサキはゆったりと微笑んでいる。
しおんヌの鋭い笑みは、かなりカッコよかった。
自分で自分をハーフ美少女と自称するだけのことはある。
「えー。ウゥン!」
マイクに向けて咳払いし、こりんが叫ぶ。
「お初です!
ライブバー・ベリィプレゼンツ!
WE ARE!
こりんTHEポーキュパイン!!」
ドラムスティックがキレよくカウントを入れ、胸躍る演奏が始まる。
三人とも破綻なく前奏を終え、こりんの
力強く伸びやかなボーカルが響き渡る。。
♪ベリ子の賄いなんでも辛ェ!!
フェスでの初披露の時とと同じく、
懐っこい毒の効いた痛快な歌詞とビートが
奏者自身と観衆たちを楽しく湧きたたせる。
裕人もるぅーも立ち上がって頭上で手拍子を打ち、
それを見てマサキも立ち上がり、
同様に大いに楽しむ。
しおんヌは耳を済まし、なりんのベースのみならず
バンド全体に目を配りながら
弦に触れぬ程度の中空で指を動かしている。
ワンコーラスを終えて入るそれぞれのソロ演奏もばっちりきまり、
7人だけの店内は既に最高潮だ。
そうして曲が〆(しめ)のパートに入った。
♪のんのしたたか舌先三寸、なりんの底なし大喰らい♪
♪こりんの毒舌ヤマアラシ、みんな仲良し気兼ねなし♪
♪ベリィHOT!セイ!♪
で、フロアの4人が叫ぶ。
「ベリィHOT!」
♪ベリィHOT!MOREセイ!
「ベリィHOT!」
♪ベリィHOT!ベリィHOTサマー!
ラルゴな後奏がゆったりと着地し、
ポーキュパインは無事に持ち歌の披露を完遂した。
4人の惜しみない拍手と歓声が店内に響く。
裕人も本当に嬉しそうだったが、るぅーの
瞳の輝きと満面の笑みが、なりんは心から嬉しかった。
「素晴らしいでぇス!ところで
セイMOREではないのでスカ!?」
「そこは音便ってやつだ。
実際これで通じてるからな!」
しおんヌとこりんのやりとりがなんだか
不思議な気分だ。自分だって今日初対面なのは
一緒なのだが。
「やるな、みんな。」
マサキが眼光鋭くお褒めの言葉を授ける。
「なりんぬ、今度はソウルハンガーの出番だ。」
いつになく凛々しく命じるマサキ。
短めの後奏もきれいに決まり、三人は
「…。」
ステージ上から、頷き返すなりん。
さあ、ここからだ。
劇中歌?というのか、「ベリィHOT」の全貌は
前作「なりんの援護くん」の第13話「援護くんにバラッド」に
登場します。 メロディはオーソドックスなもので、
どなたでも歌詞になんとなく節をつけて歌えば、おそらくそれが正解ですね。
ちなみにその際もうひとつ披露されたなりんのソロ曲
「なりんの援護くん」
こちらのメロディは私も知りません。(何)
ただ、作詞は かの名曲「アンド・アイラブハー」のメロディに
乗せて作ったものです。
前作掲載の歌詞をメロに乗せて歌えば、語呂がはまるはずです。
以上、執筆の裏話しでした。
第四話「赤いパスタは解けない」は全5章。
既にそこまでは書き上げてあります。
次回の後書きではこの四話のタイトルについてお話する予定。
では。