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目覚めよ、女神 其の4

新学期が始まり、前作以来の高橋裕人くんが再登場。

第三話・「目覚めよ、女神」はこの「其の4」までです。


 さて。



   其の4


 さて夏休み明け。

「なりんちゃん!会いたかったです!」

 級友の高橋裕人たかはしゆうとにいきなり感慨深げに叫ばれたので

教室のなりんは面喰らった。

「裕人くん、こりんはいいの!?」

「あたしならここだ。」

 裕人のうしろから、なんだかもじもじと現れるこりん。

「おっ!おはようこりん。なに今日は一緒に来たの?」

「駅で張ってやがってよ。別に避けることもなくね?だからその、

そんだけだから。」

 こりんと裕人は幼馴染みで、電車の駅も一緒だ。

「貴重な高一の夏休みを、僕はぜんぜん一緒に

過ごしてもらえなかったんですよ?

 ならここからが大事じゃないですか!」

 うん。確かに。

「勘違いするなよ?文化祭の成果次第で

そのあと 話を聞いてやらないでもない、って

まだそこまでの話だかんな?」

「はい、そちらの準備も着々と進んでいます。

 でも、それはそれ。

 僕のこりんちゃんありきの青春も、

これはこれで超大事です!」

 こりんが真っ赤になる。

「よせ!大声でなにをおまえは」

 周囲の級友クラスメイトたちは、内心

盛り上げたり冷やかしたくはあるものの、

えてここは黙して触れず見守るスタンスだ。

 そりゃそうだろう。誰にとってもの、

高一の夏休み明けだ。

 ひとごとをへたにつついてヤブヘビともなれば、

 自身の夏の繊細な秘め事に向けて

こりんの無作法無頼な好奇心の矛先ほこさきが、

逆襲して来かねない。

 そんな危険なこりんを封じる裕人のラブシャウトに

級友たちは内心で

(ありがとうな、高橋。)

(ナイスだ、高橋。)

と、感謝とエールを送っていることを

裕人もこりんもついでになりんも、

気づくことはなかった。

 それにしても。

 ですますの敬語口調は援護くんと一緒なのに、

十代の若さがそのまま勢いとなって覆いかぶさってくる。

 裕人の若い恋心は元気いっぱいだ。

 てか援護くん、健康なのに覇気はないよなぁ。

 その辺がモテ感の無さなのかなぁ。

 かといって裕人くんのこの元気が、モテ感か?

と言えば それもどうなのかな。

 モテ感、あゆみくんは現役のモテ男で

マサキくんはどうなんだろな。あたしがもし

同級生だったら、そして援護くんに出逢ってない前提だったら、

あたしは意外と範疇はんちゅう、範囲に入れちゃうかもなあ。

 わるくないよ、あの子。

 こりんと裕人の成立直前の幸せいちゃいちゃに

付き合ってらんないので、なりんはぼんやりと

そんなことを考えていた。

「なりんちゃん、その少年のお話、僕も聞いてみたいです!」

 ぅわなんだタカハシ、お前の能力はテレパシーか!?

 なりんは驚いたが、そういう事ではなかった。

「今マサキとるぅーちゃんの話になったんだけどよ、

日曜にマサキと会うだろ?そしたら裕人も

会ってみたいんだと。」

 こりんが説明する。

「そっか、なぁんだ。いいんじゃない?」

「いいですか!?それでは僕もご一緒します!!」

「なりん、なぁんだって、なんだ?」

 こりん、お前自分の恋には朴念仁だったくせに

こんなとこで妙な勘はたらかせるな!

 その思考が、その勘を自分が正解だと

評価しているのだと、なりんは気づいていない。


 それからなりんは夏休みのあいだは棚上げに

なっていた裕人の聞き込み調査の付き合いに駆り出され

休み時間も放課後も学校内外各学年の

様々な生徒たちの話を聞き出す手伝いを続けた。

 裕人としては文化祭の発表をなんとしても

成功させ、こりんとの交際を正式にスタートさせたい。

 なりんはなりんでフェス後夜祭のための

練習おさらいをしたいのだが、その時間は限られた。

 こりんは部活に復帰して他の部員たちに

難なく追いつき顧問に舌を巻かせたり

レギュラーたちをやきもきさせた。

 部活が終わると帰りの電車で

家寄りに手前の、

ベリィのある街の駅で下車して

閉店中のベリィのステージでひとり

ギターとボーカルの練習を続けた。

 ベリィの閉店で再び無職状態になってしまったのん

ひとり早速独自に行動をとっているようだ。


 そうしてそれぞれに過ごすうちに

あっという間に日曜日がやってきて

なりんがひとりベリィにやってくると、もう

マサキたちが店の前で待っていた。

「遅いぞ、なりん。」

 約束の時間まではまだ余裕があるが。

「ごめんね、待った?るぅーちゃんも、それから

えっと」

「はじめまして、ナリんヌさン!」

 マサキたち、つまりマサキはひとりではなかった。

 るぅーがついてきていて、はにかみながら

小さく手を振り、

 そして初対面の若い女性が

おかしなノリの挨拶をくれた。

 年の頃はレラくらいか、もっと上か。

 ちよっとだけ顔が濃い。キャラはもっと濃そうだ。

「なりんぬ、紹介するぞ!こちらはしおんぬ、

なりんぬたちと同じぬの一族だ!」

 ぬの一族!?

「ワタシは詩音しおん・メーガン・田名たなでス、

しおんヌ、と呼んでクダサーイ!」

「しおんぬさん?」

「YES!HAーーーーPPY!!!!」

 右手を掲げられたので、自然と手を出して

ハイタッチに応じるなりん。

「えっと、どちらのお国から?」

「イエ、純日本産まれ日本育ちのハーフでス!この喋り方は

ハーフ美少女としての矜持きょうじでっス」

「じゃあもしや普通に喋れる?」

「はいそりゃあもう。」

 いきなり普通に喋るしおんヌさん。

 さすがマサキくんの連れてきたお友達だ。

 いかにもだな!

「しおんぬさんは、それは楽器?」

 肩にかけたケースを見て尋ねるなりん。

「ハイ!ワタシはベーシストでっス!」

 ベーシスト!?

「なりんぬ、しおんぬはおれが見つけたベーシストだ。

 なりんぬがそうるを弾く以上、ベースは別に

要るだろう?」

 いやちょっと待って待って。

「わりぃ、遅れた。ん?」

 そこへ現れる、こりんと裕人ゆうと

 こりん達も別に遅れてはいないが。

「皆さん初めまして。こりんちゃんとなりんちゃんの

クラスメイトの高橋裕人です。」

 裕人はとても嬉しそうだ。

「思った以上に賑やかね?」

 続けてのんも現れた。

「こんにちは、るぅーちゃん。よく来たわね。」

 るぅーに声をかける穏。

「皆さんのお店、見てみたくて。」

「そちらは?」

「ワタシは引率保護者兼ベーシストの詩音・メーガン・田名でス、

コールミー・しおんヌ!!」

「ぬ?それもマサキくんが?」

「NO!ワタシはすでにしおんヌでシタ!

 憧れのハーフ顔タレントサンにちなんだのでス!」

 ああ、いるねえ。

「あのタレントさん実はハーフでなくない?

 喋り方もそんなじゃないし。」

 こりんがずばずばと尋ねる。

「ワタシはほんとにハーフなので、この喋り方

シマース!!HAーーーーーーPPY!!!」

 ちょっとよく分かんないような、いやむしろ

すごーく人となりが分かったような。

 とにかく凄い勢いだ。

 まあわるい子ではなさそうではある。

 「ぬ」の時系列は…マサキくんはいつ

しおんぬさんと知り合ったのかな。

「とにかく店に入りましょ。」

「なりんぬ!」

 マサキが自分のギターバッグを肩から外し、

鞄持ちにしてなりんに突き出した。

「これがそうる、ソウルハンガーだ!」

 バッグを両手で受け取るなりん。

 これが、この中に入っているのが、

ひと喰いの魔弦、ソウルハンガー!?

 躊躇する間もなく既に受け取ってしまっている、

なりん。


 さあ、我らが「本音の魔女」なりんは、

遂に「魔弦」ソウルハンガーを手に入れた。

 魔弦よ、お前はどんな本音を響かせる?

 そしてなりんよ、お前は魔弦を如何に奏でる!?

 今こそ融合を始めようとしている、

魔力と魔力。 

 溶け合い、一つとなり。


 目覚めよ、女神。

新キャラクター・詩音・メーガン・田名ことしおんヌさんが

ここで登場します。

ヴィジュアルイメージのモデルである為永詩音ためながしおんさんは、

ハーフというわけではないのですが(ご家族のプライバシーを確かめられたわけでは

ないのですが、おそらくは日本のかた)

この物語に登場するしおんヌさんは、ハーフという設定にしてしまいました。

 これはラジオ番組のコーナー企画で為永さんが扮する・・いや為永さんのご友人という設定の

(設定って言っちゃってるよ)「ハッピーメーカー」さんの決めセリフであるところの

「ハ―――――ッピィーーーーーーーー!!」からイメージをふくらませたものです。


「目覚めよ、女神」編はここまでの予定。ここから先はまた前後のつじつまが大切なので

またしばらくプロットとにらめっこ、かつ新たに切った貼ったのストーリーの縫い合わせが

必要になってくるので、あるいはしばらく更新の間が開くかも知れません。


 それでもまたこの物語「援護くんの隣りに」もきちんと完結まで書き上げる所存ですので、

 どうかご一読のほどよろしくお願い申し上げます。


 この物語が、いつかあなたの眼にもとまりますように。

 では!

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