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漫画とかアニメだと特別枠の入学ってカッコいいイレギュラーみたいな立ち位置なんだけどなぁ……

文才は皆無なので小説なんて呼べるものではありません。


四月。

都内某所。


天ノ川学園校門前。

俺は呆然としながら立ちすくんでいた。

まだ夢をみているのではないかとすら疑う。


いや、昨夜は入学式がある事を念頭に置きながら行動した。日課の深夜アニメのリアタイを断念して日付が変わる前には就寝。

しかも九時。

さながら遠足前の小学生の如く。

良い子はもう寝る時間だよに従った。


しかし遠足前の小学生の如くなので、なかなか寝付けなかった。

新たな環境での学生生活の始まり。

ワクワクはハチャメチャに押し寄せてきてた。

何度か目が覚めては漫画を読んだりゲームをしたりして時間を潰した。

結局寝たのは三時をすぎていたと思う。

あれ?これ深夜アニメリアタイしても良かったんじゃね?って思った瞬間に眠りについた。


鮮明に昨夜の記憶を呼び起こし今この状況が夢ではないことを再度認識した。


(マジでこの学園に受かったのか……)


ズレたメガネを右の人差し指を使って定位置に戻しながら心で呆けた。


合格基準。

容姿が優れている者。

外見こそが全て。

それがこの美男美女の花園。

私立天ノ川学園である。


そんな学園に俺、不須田ヨウは受かってしまった。


容姿の良し悪しなんて個人の美的感覚ではあるので判断基準としてはふわふわしたものには違いない。

しかし、俺はお世辞にも顔が良いとは言えないし生まれてこのかた容姿を褒められたこともない。

両親にすら贔屓目で言われたことはない。

つまり、完璧に自他共に認めるブサイクなのだ。


「おはよー」

「おはようございます」


飛び交う朝の挨拶。


ちょっとずつではあるがこの現実に実感を持つことが出来た。


校門に入っていく見渡す限りの美形達。

眩しくて神々しいその光景に挨拶ですら天使の祝詞かなんかと錯覚してしまう始末。

今からその聖なるアーチである校門を醜悪の権化とも言える俺が通過する。


(ブサイクが死ぬ結界とか張られてねぇだろうなぁ……?)


警戒心をむき出しにする。


俺はやや恐る恐る校門への一歩を踏み込んだ。


当たり前ではあるが何事もなく無事校門を通過。

向かうは入学式の会場である第一体育館。


(体育館、四つもあるのか……でけぇ学園だわ)


学園の地図に目を向けながら歩きだした。


「あれってもしかして」

「あー、噂の」

「控え目にキモくない?」


校門前からうすうす気づいてはいたのだが、俺は注目を浴びていた。

それもそのはず。

合格基準を満たしていない者がそこにいるのだから。

ヒソヒソとたまに暴言を交えながら陰口を叩かれている状況。

俺としては中学時代とあまり変わらない日常ではあるから特に気にする程のことでもない。


地図を見ながら体育館を目指す足をとめない。


桜並木に囲まれた道を歩いていく。

そよ風が吹く度に桜の花びらがひらひらと優しく舞っていた。

そんな心穏やかになりそうな景色とは裏腹に心ない言葉もまた飛び交う。

歩くこと約五分くらい経っただろうか。

目的地である第一体育館に到着。


「あ、ニャンポコ……」


不意に背後から聞こえた女性の声。

俺には聞き覚えのある単語であった為に反射的に振り返ってしまった。


「あ……」


雪のような白い肌を引き立てる漆黒の長髪。

胸元まで伸びたその毛先から伝わってくる撫でるまでもなく美しさ。

淡いピンク色の縁をした大きなまん丸としたメガネは元々小顔の彼女をさらに小顔に魅せていた。


レンズ越しの彼女の目は俺と一瞬目が合うもすぐに逃げ場を探すように避けた。


「す、すみません……」


か細い声。

そよ風ですらかき消すのは容易ではないかと思えた。

しかし、美少女が発したともなれば俺の耳には充分に到達した。

流石、顔面偏差値最強を誇る学園。

パッと見は地味そうにみえる風貌の彼女ではあるが基礎ステータスが高すぎる。

二次元キャラでいうとこの清楚系とはまさにこの事を言うのではないかと思えるほどの透明感。


「……失礼しました」


俯きながら俺の左側を通り越し彼女は体育館へ入ってしまった。

ブレザーの赤いリボン。

察するに俺と同じ新入生であろう。

この学園は女子生徒ならリボン、男子生徒ならネクタイの色で学年がわけられている。

二年生は青、三年生は緑。

学校ならよくある識別方法だ。


ニャンポコ、知ってるのか……。


ニャンポコとは俺のスクールカバンにぶら下がっている白い猫のような小さいぬいぐるみのキーホルダーだ。

白いと言ってももう何年も愛用している為、少しばかり黄ばみかけている。一応定期的に洗濯をしてはいるがだいぶよれよれでくたびれている。

そんなニャンポコを右手で握りながら俺は彼女の背中を見送った。


見惚れてる場合じゃない。


俺も地図と同封されていた合格通知の紙に記載されてるクラスを確認する。

一年A組、出席番号31番


自分の指定されてる席を見つけて着席。

腰を下ろす最後の最後までチラチラと俺を見る周囲の学生達。

ポジティブに捉えるなら美男美女の注目を浴びれるってのは本来なら凄く嬉しい事で優越感すら感じれる状況なのではないかと思う。

俺にとってはただただ落ち着かないだけ。

勘弁して欲しい。


ほら、入学式始まったぞ。

みんな校長先生のありがたいお話聴きましょうね。


新入生、そしてその保護者一同が壇上に上がった男に視線を向けた。

ちなみに俺の両親は仕事で欠席している。

息子の一世一代の奇跡的偉業を見守るべきではないかと思うのだが、まぁ俺としては気が楽なのでありがたいて言えばありがたい。


(この人、なんで俺を合格にしたんだろう……)


俺は今まさに壇上で挨拶をしている校長先生を見ながら眉をひそめた。


黒い髪をオールバックにし高級感漂うビジネススーツをビシッと着こなした齢、四十代半ばくらいだろうか。スーツの上からでも明らかにわかる筋肉質な身体付き。まさか校長までもイケメンだとは。

いや、イケオジとでも表現するべきか。


よく見れば舞台袖に待機している教職員全員が綺麗な顔立ちをしている。


抜かりなさすぎだろ天ノ川学園……。


俺はただボケっとしながら校長を見ているだけ。

正直なんの話しをしているのかわからない。

てか、ちゃんと聞いてない。

まぁ誰しも学生なら入学式に限らず校長先生の話なんて真剣に聞いてる奴なんかいないだろ。存在するはずもない。

本当に聞いてる学生がいるならそれは……ごめんなさい。めちゃくちゃ偏見です。


俺は入試を思い返した。

入学式の約二週間ほど前が天ノ川学園の入試当日だった。

入試と言っても書類選考に受かった人たちだけが集められるごく一般的な面接。


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