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ボンッッッッッ
大きな炎の塊が空に向かって真っ直ぐ飛んで爆発して消えた。
「ひっっ?!」
「な…⁈」
「は…⁈」
『ハッハッハ!!!』
おいーーー!!そこの精霊王!笑い事じゃないんだけどお?!
なにこの威力…なにあの炎の大きさ…
こんな大きなもの放ったのに魔力が無くなることもなく…むしろ何も減ってない…?
「え…」
「ニーナ⁈無事か⁈」
「今、何があった⁈」
ま、まずい…お祖父様も叔父様も居るの忘れてた…。
魔力があるってバレたら元の家に帰されちゃうのかな、それはやだな…びっくりしてる…そうだよね…
ああ、どうしよう…
「お…おじさま…おじいさま…わ、わからないの。あたまにうかんできたことばをいったらボンッ…ひ、っヒック…」
やばい、身体の年齢が低すぎて精神年齢まで引きずられてる…泣くわコレ…
「う…う、」
「おい、どうした!なんで泣いているんだ?」
「うわあああぁあああああああん――っ」
うわーーーーすごい子供みたいな泣き方しちゃってる!!!!子供なんだけどね!恥ずかしいけど止まんないーーーー!!
叔父様ともお祖父様ともお祖母様とも離れたくないーーーー!!!!
「おっ、おっじさまぁあああ…おじいさまああ…ニーナはパパとママもところにいきたくないのぉーーーっっ!!!うええええんっっやだやだやだーーーーあ゛あああ」
止められなくて、でもどうしたらいいのか分からなくて、お家に帰さないでって言いたいだけなのに上手く気持ちを伝えられないってもどかしいわーーーーー!!!はずかしい、なんて混乱しているとお祖父様の後ろに立っていた叔父様に抱き上げられて抱き締められた。
「なんだ、そんなことか」
「…っっヒック」
「ニーナは、お家に帰りたくないのかい?」
「う゛んっっっ」
「じゃあ、叔父様がニーナのパパになってもいいかい?」
「え…?」
何それ。叔父様のそんな優しい顔、初めて見た。
ぎゅって抱き締めてくれるこの腕の中はいつも、いっつも暖かくて大好きだったけど今日はなんか、こう、もっと暖かくて、安心できて。
叔父様がパパになってくれるの?養子ってこと…?
「…おじさまがニーナのパパになってくれるの?」
「ニーナさえ良ければね。ずっと考えていたんだよ。君が公爵邸に来てから」
「ずっと…?」
「そうだよ、ニーナも知ってるだろうけど私に子供はいなだろう?だからね、君が私の娘になってくれたら嬉しいなぁって」
「ほんとう…?」
「うん、本当。だけどね、君が私の娘になるってことは将来この公爵家を継ぐことになるんだ。難しいことはもっと大きくなったら話すけれど、とっても重くて大切なことなんだ。だからすぐに決めなくてもいい。ただね、覚えておいて。君を今更あの伯爵夫妻の元に帰すことだけは絶対に有り得ないよ」
あ…後継の心配はしてないってそういうことだったの…?公爵か…でもいいのかな、捨てられた私なんかで…色だって…
「で、でも!だって、ニーナはっ…」
「君が捨てられたからとか魔力が多いからとかそんなことは関係ない。ニーナだから、娘になって欲しいって私は思っているよ。それだけは忘れないで」
そういってより一層強く抱き締めてくれる。
ああ、この人がパパだったら、どれだけ幸せなんだろう。
こんな私でもいいって言ってくれるの…?魔力があるとかないとか関係ないって言ってくれるの…?
こんな色素の薄い人間、この国では蔑まれる対象だって、お父様もお母様も話してたのに…あんなにあの二人は困ってて……だから私をここに預けたのに…?
「な、なる…」
「ん?どうした?」
あまりに恐れ多くて、受け入れてもらえることが嬉しくて声が震える。
「お、じさまのむすめになりたい…!!!」
抱っこされたまま叔父様の顔を、瞳をまっすぐ見つめてこれ以上出ないってくらい今度は大きな声で伝えた。大きな声を出しすぎてまた声は震えたけど、でもこれできっと伝わったはず。
だって叔父様の顔が、ぱあああって明るくなってる。
キラキラした笑顔だ。とっても嬉しいって時の顔。
私がお祖母様と作ったクッキーをラッピングして渡した時に見せてくれた表情だ。
「そうか…そうか〜!!!!嬉しいなぁ!!はは!こんな可愛くて素敵なレディが娘になってくれるのか〜!!!」
「きゃああっ」
私を抱き締めたまま、その場でくるくる回ってはしゃぎ出すから驚いたけど嬉しくて、とっても楽しくて、傍でにこにこしながら拍手してるお祖父様も何やら満足気な精霊王もいて、とても幸せだったから。
気が付いたら私は“あの時”契約したミリィとブルーのことをすっかり忘れていた───