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「あれぇ?おじさま…?ニーナね、おみずのなかでおぼれてたみたいなの。ぶくぶくーっていきできなくてちょっとこわかったの。でもね、でもね、えっ…と、アレ?いない…」


寝ぼけているのか、まだ意識がはっきりしていないのか。上半身を起こして何かを探すようにして周りをキョロキョロと見渡している。


「そうか、そうか。それは苦しかったなあ…いや、でも本当に良く無事で戻ってきてくれた」


「本当だよ、ニーナ。君が無事で良かった。とっても心配したんだよ?」


「ごめんなさい…」


「別に怒ってはいないよ、でもこれからは何処かに行く時は私達や母さん、もしくは騎士達に行き先を言ってから行くようにしようね?」


「はあい!!!あのね、おじさま!ニーナね、ちいさななおともだちが二人もできたのっ!ミリィとブルーっていうんだけどね、わたくしがおきてもそばにいてくれるっていってたの…」


悲しそうに俯くようにしていると、先ほどまで黙っていた精霊王が魔法を使い、ニーナの頭に花冠を乗せた。それが気になったのか、ニコニコしながら頭から外してじぃっと見つめ始めるニーナ。


 その様子を何やら楽しそうに眺める精霊王と父さん。


 いや、うん。分かる。分かるよ?可愛いし、無事だったしこんなに綺麗な場所なんだ。和みたくなるその気持ちはよーーく分かるんだ。だが、早めに戻らないといまだに森の中を探し回っている騎士も可哀想だし、なんなら心配しているだろう母さんにも報告をしないといけないと思うんだけどな…?


 ん?いや、待て、何か重要なことを聞き逃してしまった気がするのだが…。


「あーー…ニーナ?その聞いてもいいかい?」


「はぁい、なんですか?おじさま」


声を掛けると、じっと見つめていた手元の花冠を自分の頭にそっと戻して笑顔でこちらを振り返った。可愛い。


「その、先ほど言っていた、ミリィとブルーっていうのは…?」


「せいれいさんだって言ってました!」


「せ、せいれい…」


「はい!おなまえがないからつけてほしいといわれたので、ニーナがつけてあげましたの」


 な、なんだと…?


「せ、精霊王様…?私が聞いた話によると精霊に名付けができるのは主従契約を結んだ時のみだったと記憶しているのですが…?」


『そうだな』


 そうだな?!そうだな、だけで済まされるものなのか?いやまて、主従契約するには膨大な魔力が必要になるとも聞いたことがある…ニーナは魔力が少ないんじゃなかったのか?


「あの…つかぬことをお伺いしますが精霊との主従契約には膨大な魔力が必要になると思うのですが…?」


『あぁ、間違っておらぬよ。その点ニーナなら問題ないだろうよ』


な…なんだと…?

問題ない…ということはそれなりに魔力があるということなのか?


「恐れながら、以前魔力測定を行った際にニーナの魔力は測定不可能とされました。そして魔力がほぼないから、だと結論付けられたのですが…違うのですか…?」


『なに、簡単な話よ。精霊と契約ができるということは通常の人間よりも遥かに多い魔力がある証拠だ。何よりニーナが契約した精霊は上位のものだ。軽く見積ってもお主の倍はあるぞ?』


 私の倍…?私は人よりも魔力が多い方ではある。

 その私の倍…


「父さん…聞いてましたか…」


「……あぁ」


 上位精霊と契約ができるほどの魔力がある、というのは少々厄介なことになりそうだな……。

 これが王家にバレたら…確実にあの坊ちゃんたちのどちらかと婚約を結びたがるだろうな。


「隠すか…」


「いいんですか、こんな重大なことを」


「致し方あるまい…ニーナを王家には渡したくないからな」


何やら考え事をしていた精霊王が湖の中心から私たちのそばまで近寄ってきた。


『王家にそれが知らればニーナはこの地から去ることになるのか?』


「…いずれはそうなるでしょうね」


「第二王子であれば…婿として嫁いで来ることも可能だがな。ただ上位精霊と契約をしたとなると第二王子との婚約、という線はないだろう」


『いつの世も人間は面倒なものだな…そうか、ならばお主らは何がなんでもこの事を秘匿せよ。もし、万が一知られても私の命により秘匿せねばならなかった、とでも言えばいい』


「なぜ、そこまで協力を…?」


花冠に止まる蝶を不思議そうに見上げているニーナをじっと見つめがら真剣な顔をする精霊王が何を考えているのかは分からない。だが、軽く了承してもいいのか…?これを了承

したせいでニーナに何かあるのは…


『何、簡単なことだ。純真で精霊からも好かれるこの娘にこの地に留まってほしい。ただそれだけだ』


「留まってほしい…ですか…」


『ああ、何より我はローザに恩があるからな。それを子孫に返しているにすぎない。深く考える必要はないさ』

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