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「俺、戻ったら兄上にも陛下にも今のラナの話を伝えておくよ」
「ええ…陛下達に?私の名前出さなくていいわよ…恐れ多いわ。それにこれは私の考えであって国としてどうかなんて分からないのよ…?!」
「いいや、大丈夫だ。ラナからの話だって名乗らなくてもバレるだろうしね。国としても、いい機会だと思うしな」
えええ、そうかなあ。まあでも、それに関しては任せるけれど……。
国のことまでは考える余裕ないもの、私は公爵領が繁栄することで国にも良いことがあればそれで満足ですわ。なので、丸投げしちゃいましょう。
「あ、ここですわ。ドレスショップ。まあ、まあ!外観素敵になってる!ウィンドウから見えるマネキンもいい役割をしているわ」
「マネキンとはなんだい?」
「アーサー様は初めてみるわよね?男女の平均的な体系を模して作った人形ですわ。見ていただいたように服を着せて、飾っておくんです。季節によって着せる服も変えたりして、このお店の前を歩くだけでも洋服が見れて楽しい気持ちになりませんか?」
「確かに。へえ、これはいいね」
「ねえ、ラナお店はいれるかしら?」
もちろんですよ、レイラ様。早速お店に入りましょう。
ってことで、今は裏で作業している人ばかりでしょうから裏から入って驚かせないようにしましょうか。何より従業員たちの顔を見て話を聞きたい。
何か困っていることとかないかしら。
「ニーナお嬢様!本日はどうされましたか?」
裏口に周り、扉を開けると私に気が付いたデザイナーが駆け寄ってきてくれる。
ニコニコしてていい笑顔ね?それにしても、この人また寝てないのかしら?今日はもう家に帰さないと駄目ね…。
「イリーナ、久しぶりね。夏季休暇で帰ってきたから様子を見にきたのよ。それと以前頼んでいたものはできたかしら?今日はリュス様、レイラ様も来ているから王家への献上する品も受け取りたいわ。あ、それと紹介するわね?彼は護衛としてよく来ることになるだろうから。アーサー・グラン・アヴェール様よ。アーサー様、こちらはこの店のデザイナーのイリーナです。私のドレスもレイラ様もドレスもほとんどが彼女のデザインなんですよ」
「お初にお目にかかります。イリーナと申します。公爵家の方ですね。騎士団でもとても優秀だとお噂で聞いてます。本当にとても素敵ですね…」
「ちょっと、イリーナ大丈夫?」
「お嬢様の周りには綺麗で素敵な方しかいませんね…すごいです…眼福…」
ああ、妄想タイムに入ってしまったわね。早く帰してゆっくり休んでもらいたいのだけどこれはダメだわ。この後、きっとアーサー様に着てもらえるための舞踏会用の衣装のデザインをし始めてしまうわね。まあいいわ、明日から三日くらいお店に入ることだけは禁止しておきましょう。
「さて、店に並ぶものを少しだけご紹介しましょうか?」
「いいわね、どこまでできているのか気になるわ」
「俺もニーナのデザインしたものが見てみたいな」
リュス様は興味なさそうだけど、一応付き合ってくれるみたいね。
ではまず、このお店のメインのドレスね。
日常用から茶会用、夜会用と種類は多く、その分デザインをただ増やしているわけではない。
まずは男爵~伯爵までの少し資金に余裕がない方々用に、この日常用ドレスを買ってもらうとその他に色々と小物をつけるんです。小物といっても、アクセサリー類ではなくて例えばシンプルな日常用ドレスにこのボリュームのある袖をこのボタンでぽちっとつけるだけで雰囲気は変わるでしょう?もう少し華やかにいたい場合は、このトレーン付きのショールを羽織ればちゃんとした夜会用ドレスになります。付けたり、外したりするだけで茶会用にも夜会用にもなるドレスです。こうすることで金額は大幅に下げられます。袖や襟、ショールは令嬢の好みで選んでもいいですし、基本セットそのままで購入いただいても問題ないです。カラーもこの通りたくさん用意してますからね。
高位貴族用にはセミオーダー、フルオーダーも承ってます。もちろん、形はたくさん揃えてますわ。
「ねえ、ニコール王女殿下とニーナで少しだけファッションショーしてよ」
「え、」
「いいわね!そうしましょう?ね?」
ええええ……めんどう…!
でもいつか彼らが誰かにドレスを送るときにうちの店を使ってもらうためには必要なことなのかもしれない。
ぐぐぐ…やるしかないか。
「では、まずレイラ様にはこちらを。これは今流行っているAラインと似た感じだけど、少し違うの。ビックラインとロングトレーンが特徴です。でも、これは正直夫人用というか、少し年齢が上の人が好んで着そうなイメージで作ってもらったの。上王妃様、王妃様にどうかしら?」
「素敵。そうは言うけど、わたくしもこのデザイン好きよ。何よりドレスの裾がキラキラしてるのはなぜ?これとっても綺麗ね」
「ドレスの裾には本来宝石を散りばめる予定なの。でもこれはサンプルだから、ガラスを細かく砕いたものを散りばめているの。宝石かガラスかなんて分からないくらい綺麗でしょう?」
そう説明すると、さすがに男性陣も宝石だと思っていたのか近寄ってきて凝視している。
ふふ、そうなのだよ。形は前世でいうと80年代ってところだけどこの世界でなら最新になるのです。さて、私はAラインのロングスリーブドレスを着ようかしら。色は…どうしようかしら。
「ニーナ、ぜひこのカラーのドレスを」
渡されたドレスのカラーは、なんと彼の瞳の色。ドレス自体はセリアンブルーなのだけど、膝下くらいから色が濃くなるようにグラデーションにしているのだけど。そのスリーブ部分のレースカラーはプルシャンブル―。
どちらも青だけど、普通の青ではない。それにレース部分が透け感もあるので、そこにガラスを散りばめて夜空に煌めく星をイメージしている。
このドレスのデザインは確かにお気に入りだし、私が案を出したものだけど。なんで彼は自分の瞳の色を進めてきたのかしら。私のこと好きなのかしら?




