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「ああ、聞いているよ」


「魅了に掛かったのは何も例の件を伝えられた人達だけじゃないの。その人達を使って唯一、魅了魔法に掛からない私は邪魔者だったから消された。予言の中の私は魔力も少なくて、存在感も薄くて、みんなに蔑まれて嫌われる貧乏な伯爵令嬢だったの。そんなの絶対嫌なのよ。私は楽しく生きていきたいの。それにこの国の上層部に手を出すと言うことは、我がお父様も宰相様も国王陛下までもが魅了魔法に掛かってしまうということ。そうなってしまったらどうなりますか?まともな判断ができない王と上層部が揃ってしまえば……」


「その魅了魔法を掛けた相手の言いなりに…?」


「そうです。国庫なんてすぐに空になりますわよ、きっと。だからひとまず私は死なないことが目標なんですのよ」


 ふふ、と笑ってみせるとアーサー様もネロ様も苦虫を嚙み潰したような表情をしてる。なぜかしら?でもだって大切なことだと思わない?死んだら何もできないもの。

 だから、とりあえず生きて大切な人達と少しでも長く生きたいの。もう転生前みたいに何もかもから逃げるようなことはしない。

 

 『大丈夫よ、あなたのことは私たちが守ってあげる』


 『もし何かあればお前だけ連れて精霊界に帰るだけだ。あそこなら安全だからな』


それは……なるべく最終手段にしたいなぁ…。みんなと離れるのはやだ。

 それに精霊界に行くってことはもうこの国にも家にも帰れないってことでしょう?そんなの寂しいわ。


 『……俺たちがいるのにか?』


 みんながいればきっと楽しいわ。でもね、そうなったらきっと私は一生後悔する。この国で、この世界で、出会った大切な家族にも、友人にも、公爵領に住む民たちのことも守れなかったって。守るためにこの世界に転生したわけじゃないのは分かってるけど、それでも今の私には守りたいものがたくさんあるから。それを全部捨てて逃げて生き延びてもきっと罪悪感で押しつぶされる。


『本当にあなたって子は…まぁでもそんなあなただから大好きなのよ私』


『ふん…まぁそうならないように手助けはしてやる。泣かれたらうざいからな』



 

 「ふふっ」


「ニーナ?ボォッとしてどうしたの?」


「ミリィとブルーが私がもう助からなくてどうしようもなくなったら精霊界に連れ去ってくれるんですって。でもそうならないように気を付けないとね」


「えっ……そこには人間の俺もいける?」


 何を言い出すのだろう。精霊界が気になるのかしら?

 でも横でミリィが首を横に振っているから、おそらくできないのよね。そうよね、きっと私がイレギュラーなだけね。


「無理だそうです、アーサー様」


「そうか……ん~君の安全が確保できれば精霊達は君を連れてはいかないってことだよね?」


「まあ、そうなりますね」


 そうか、と言って何かを考えこむように黙ってしまったアーサー様を置いて窓の外を見ると、湖までもう少しというところまで来ているようだ。今年も無事に来れて良かった。それに今回アーサー様もネロ様もいるから湖までたどり着けるか不安だったけど大丈夫だったみたいね。

 彼らにも可愛い精霊の姿が見えたらいいのに。



「お嬢様、到着いたしました」


「そう、ありがとう。さあ、リュス様、レイラ様起きて下さい!到着しましたよ?準備してお昼にしましょう?」


「……もうついたの?」


「ねむい」


二人とも夏季休暇の課題がまだ終わってないみたいで、昨日は今日の分までを終わらすために夜更かししてくれたらしい。無理しなくてよかったのに。って思うけどやっぱりみんなで来れるほうが楽しいから、お昼は気合入れてきたし木陰でならもうひと眠りくらいできるでしょう。

 そこで思う存分寝てもらうためにも、早く降りて準備しなきゃ!


 馬車から降りるときにはさっきまで黙り込んでたアーサー様が復活していて、降りるときのエスコートをしてくれた。少し高めになっているこの馬車は他のと違って揺れにくい仕様になっている。まだ試験段階だから売り出してはないけどいずれは売り出していく。馬車の揺れって腰にもお尻にもくるからね……あって損はないと思うの。そんなことを考えながら地に足をつけると、かの御仁が突然現れた。




 『久しいな、ラナよ』


 

 

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