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「私、いつ魔力がないなんて言ったかしら?」
チラリと視線を向けて隣にいるレイラ様に話しかけると、レイラ様は呆れたようにダラン侯爵令嬢に視線を送ったまま答えた。
「言ってないわ。ラナ、魔力ないの?」
「ふふふ、意地悪しないであげて?これでも私、反省してるの。これまで体調が悪くて学院どころではなかったのだけどそのせいであちらの方々に勘違いさせてしまっているんだもの」
「ラナは体調悪かったんだし入学を遅らせるのは前公爵様や夫人、お父君の希望だったのでしょう?貴方は悪くないわ。でも、そうね。そんなに言うなら、攻撃魔法が得意なダラン侯爵令嬢とラナでこれから試合したらどう?」
えええええ、なんてこと言うの…?!ダメだってーーー!!まだ攻撃魔法の威力の調整上手く無いのに…!
でもなあ…これからもこういうのあると思うと気が滅入る。そもそも身分社会なんだから魔力の有無なんて関係ないでしょうに…でもいちいち相手して何らかの罪を問うのも対処するのも面倒。そもそも物語の方に集中したいと思う矢先にこれだもん。面倒。
「はぁ…では仕方ないですね。攻撃魔法の威力の調整が上手くないのだけれど…それでもいいのなら、私は構わないわよ?」
「威力の調整…?何を仰っているの?どうせわたくしが勝つのだから、試合なんてする意味もありませんわ」
「あら、じゃあもうこれ以上ラナに文句言わないでくれる?」
「なっ!わたくし達はレイラ様やレッド様、リュス様の為を思ってっ!」
「お前、不敬ね?誰がその名を呼んでいいと言ったのかしら?」
「もっ、申し訳ございませんっ」
ああああキレた…レイラ様が笑いながら怒ってらっしゃる…これはもうダメね。なるようにしかならないわ。
「そもそもね?貴方、侯爵令嬢でしょう?彼女は公爵令嬢よ。しかも王家の縁戚である公爵です。分不相応なくせに外見で人を判断してあからさまに攻撃するなんて、頭大丈夫なのかしら?ただでさえ今の対応だけで不敬罪やら高位貴族に対する侮辱罪で首が刎ねられてもおかしくないわよ?分かっているのかしら?だから、わざわざ魔法試合で譲歩してあげるって言ってるのに、それも嫌だ?ここに長く通っているくせに何をしていたのかしら。ここは学舎であって決して人を落としいれて楽しむ場ではないのよ?分かっているの?」
あーあ、レイラ様の勢いにすでに瀕死状態だけどこの状況作ったのも貴方達だからこれ以上の手助けはできないわよ?対戦して終わりにするって言ってるんだから大人しく受けとけばいいものを…。
さて、そろそろお止めしなくては。
「レイラ様、そこまでで。私のためにありがとうございます。ですが、私も公爵令嬢としての矜持がございますの。このまま彼女に好き勝手言われても不快なので、ぜひ、試合いたしませんこと?ダラン侯爵令嬢とその他の方々対私で構いませんよ」
この金髪ド派手女が大声で騒ぐから周りに人が集まってきてザワザワしてきてる。こんなに大事にするつもりなかったのになーーー。嫌になる。
「さぁ、どういたしますか?」
ニッコリ微笑んで返事を促すと、びくりと肩を震わして顔を上げこちらを睨んでいるけれど俯いていたダラン侯爵令嬢の目にはうっすらと涙が浮かんでいるわね。でもね、泣きたいのは編入早々こんなことになってる私の方よ?
そんな目で私を見てきているってことは、この対戦に乗り気だって思っていいのかしら?早く返事をしてくださらないかしら。
「わ、分かりましたわ。自信がおありようなのでこの二人とわたくしの3対1での魔法試合をいたしましょう」
「そう。では、私、レイラが責任を持って先生に伝えておくわ。ラナ?貴方の不正を疑われたくないから私はここから先一人で行きますがいいですね?」
「もちろんです。そうしてくださらなければ私の方からお願いするところでした。コリン様、レイラ様のお手伝いをお願いできるかしら?」
「も!もちろんです!」
そう言って私は廊下に一人残され、目の前には今にも人を殺しそうな目でこちらを見ているダラン侯爵令嬢。
ああ、怖い。さて、彼女はどんな試合をするのかしら?
それにしても厚化粧で分かりづらいけれど、彼女すごい可愛いわ。原石ね。この試合に勝ったらあっちの店舗の宣伝役として社交の場にドレスを着てもらうのもいいかもしれない。
「ねえ、ダナン侯爵令嬢?私が勝ったら私のお願いを一個聞いてくださる?そのかわり、私が負けたらもう王家の方々には必要最低限近寄らないわ」
「言ったわね?いいわよ。目障りな貴方を全学院生の前で無様な姿にしてあげる」
そう不敵に笑って取り巻きを連れて去っていった彼女の背中を見ながらため息を吐く。
(なぜああもう交戦的なのかしら?仮にも一応は淑女でしょうに…)
「つかれた。さて、そろそろ向かわないと。授業にも遅れるわね」




