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私は人より要領がよかった。そして人より沢山、本を読んだ。しかし心がなかった。
父は地方の大きな私立大学の出で、今は工場で輸送機械の設計士をしている。母は専門学校を出て歯科助手として働いていた。結婚してからは専業主婦となり、私は主婦としての母しか知らない。私には2つ上の姉がおり、いつも比較し、比較された。姉は何かに秀でている人間ではなく、私は自らの優性を誇りに感じていた。好奇心旺盛だった私は姉がする「勉強」を横から眺め、姉が苦しむそれを楽しんで行えた。掛け算九九を5歳で暗誦し、小学校で習う漢字も小学校入学前には殆ど読めるようになっていた。自慢するための場でないため以降は割愛する。その頃の私はかなり活発で休み時間は必ず外で遊び、放課後も公園で走り回っていた。私がわんぱく坊主としてのキャリアを順調に重ねるにつれて、人から叱られることが多くなった。怒られることは嫌いだった。変わらなければならなかった。