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トルケ・ジョーン・カリア  作者: 藤原小次郎
学校と戦い
21/34

第10回:戦いとお茶

 長い時間ながいじかんをかけて選んだ挙句。


 ティーパーティーに着ていくドレスに悩んでいたカリアは、ついに結論を出した。


「迷うくらいなら迷わない選択をすればいい」


 そう決めた彼女は、学園の制服を着ていくことにした。ユニフォームの良いところは、選択に時間を浪費しなくて済むこと。それに、このデザインはなかなか悪くない。


 身支度を整え、目的地に到着すると――ブレイドはまだ来ていなかった。カリアは木造もくぞうの壁に背中を預け、目を閉じて休息きゅうそくに入る。


 時間ときは刻一刻と過ぎていき、開始十分前かいしじゅっぷんまえになってようやく懐かしい気配けはい感知かんち。カリアがまぶたを開くと、廊下ろうかの向こうから慌てた様子で駆け込んでくるブレイドの姿が。


 赤いワンピースドレスに身を包み、完璧かんぺきにメイクを施した彼女を見た瞬間しゅんかん、カリアは少し後悔こうかいした。制服で来たことを。


 メイクも髪型かみがたも、まるで人形にんぎょうのようにうつくしい。もっとも、ブレイドは普段ふだんから素顔すがお綺麗きれいだから、大差たいさはないのだが。


「重要なパーティーなら正装せいそうすべきだったか…いや、学生同士がくせいどうしの集まりだし、貴族きぞく舞踏会ぶとうかいじゃあるまいし」


 そうつぶやいた時、ブレイドが息を切らしながら近づいてきた。


「カリアさん、招待しょうたいありがとう! でも本当にS級限定レベルエスげんていの場に私が入って大丈夫だいじょうぶかしら?」


問題もんだいない。何かあれば私が責任せきにんを取る。彼らとは疎遠そえんだし、話し相手はなしあいてがいた方が心強い(こころづよい)」


「ふふっ、それじゃ遠慮えんりょなく。さ、行きましょう!」


 場所は本校舎ほんこうしゃ最上階さいじょうかい校長室こうちょうしつがあるこのフロアには、レベルエス専用せんよう施設しせつ完備かんびされていた――食堂しょくどう図書館としょかん教室きょうしつ闘技場とうぎじょうりょう


 しかしカリアは自らブレイドのクラスを選んだため、ここをおとずれるのは初めて(はじめて)だ。豪華ごうかという言葉ことば以外いがい形容けいようのしようがない空間くうかんだれかにおしえられなければ、貴族きぞく屋敷やしき勘違かんちがいするほどだった。


 校長室の重厚じゅうこうとびら横目よこめに進むと、空間転移くうかんてんい魔法門まほうもんあらわれた。


 この学園では重要な施設間しせつかんかなら転送門てんそうもん設置せっちされている。創立者そうりつしゃである無名むめい空間魔法くうかんまほう使いと創造魔法そうぞうまほう使いがのこした伝統でんとうだという。


 門の向こうに広がるのは――


 〈空中庭園くうちゅうていえん


 景色けしきながめるもなく、二人をけていたのは準備係じゅんびがかりのトートカナではなく、赤くかがやつるぎ一閃いっせんだった。


「――ッ!」


 カリアは瞬時しゅんじ同格どうかくの剣を召喚しょうかん反手はんしゅかまえたまま、魔法武器まほうぶき同士どうしがぶつかる高音こうおんひびかせた。


 表情ひょうじょう一つえないカリアに対し、襲撃者しゅうげきしゃ少女しょうじょ後方こうほうのブレイドがおどろきをかくせない。


 青白あおじろよろいに身をつつみ、胸元むなもと黄金こがね薔薇ばらきざんだその少女。黒髪くろかみのショートカットが銀色ぎんいろひとみ際立きわだたせている。


「ハッハッハ! 言った通りだろエミ? こいつは強いぜ」


 カメロンのこえひびほうくと、トビーとトートカナが家具かぐ片隅かたすみせたテーブルにすわっていた。どうやら今回こんかい襲撃しゅうげき仕組しくまれていたらしい。


 エミと呼ばれた少女はくちびるみしめ、さらに力をめて剣をもうとする。だがカリアの腕力わんりょく――いや、ステータスの数値すうちあきらかに上回うわまわっていた。


 一分間いっぷんかんおよいのすえ、エミは舌打したうちをして剣をさやおさめた。


「カタトスをたおしたはなし本当ほんとうだったわね…自分じぶんたしかめるまでしんじられなかった」


「だから言っただろ? ほら、いたたじゃねえか!」


 カメロンの嘲笑ちょうしょう無視むしし、エミはカリアにかってふかあたまげた。


突然とつぜん斬撃ざんげきもうわけありません。入学式にゅうがくしきでシルバーブレードを倒したうえ冒険者ぼうけんしゃギルドではレベルチのカタトス会長かいちょうまで…その実力じつりょくたしかめたくて」


 ゲームでれているとはいえ、いきなり戦闘せんとうになる展開てんかいにカリアは内心ないしん呆然ぼうぜんとした。だがブレイドに危害きがいおよぶようならはなしべつだ。


 臨時りんじ召喚しょうかんした剣をしながら、一歩いっぽ前へ出る。


かまわない。つぎからは場所ばしょ時間じかんめてくれれば。ただし――」


 同伴者どうはんしゃおどろかせる行為こういひかえてほしい、という視線しせんおくると、エミはもう一度いちど謝罪しゃざいした。


 一件落着いっけんらくちゃくしたところでトートカナがたたく。魔法まほうちから片付かたづけられていた家具かぐたちがもと位置いちもどり、おちゃとお菓子かしならべられる。


 めた空気くうき紅茶こうちゃかおりとともけていく。新入生しんにゅうせい同士どうし茶話会さわかいは、自然しぜん自己紹介じこしょうかいへとうつった。


 カメロン――貴族きぞくまれながらぐんごし、いつかは独立どくりつするため学園がくえんへ。現在げんざい冒険者ぼうけんしゃとして山賊さんぞく退治たいじ生業なりわいにしている。


 エミ――東洋とうようくにから伝説でんせつ聖剣せいけんもとめて来日らいにち。アトランティスの開国皇帝かいこくこうてい使つかったとされる〈聖剣エクスカリバー〉をさがしている武闘派ぶとうは


聖剣せいけん手掛てがかりは?」


らない」


 即答そくとうにエミは見開みひらいたが、カリアの表情ひょうじょううそ気配けはいはない。話題わだい途切とぎれたところでブレイドがくちはさむ。


五人組ごにんぐみのこ三人さんにんは?」


「あいつらは文系ぶんけいだ。授業中じゅぎょうちゅうだからられねえよ」


 三年生さんねんせい双子ふたご姉弟きょうだいマリー&マルコ、七年生しちねんせい生徒会長せいとかいちょうマリア――トビーが補足ほそくするこえに、エミがうなずきながらカリアへいかける。


「ところでカリアさんはなん目的もくてきでこの学園がくえんへ? 締切しめきり編入へんにゅうまれだし、ブレイドさんですら遅刻ちこくあつかいだったのに…」


 開学式かいがくしきでシルバーブレードを撃破げきは翌日よくじつにはレベルチの冒険者レベルチのぼうけんしゃカタトスをたおす――15さい一年生いちねんせいとはおもえぬ経歴けいれき


本当ほんとうきたいのか?」


 カメロンとエミがいきんでうなずく。ブレイドが心配しんぱいそうに見守みまもなか、カリアは紅茶こうちゃ一口ひとくちんでこたえた。


いえにいるのが退屈たいくつだったから」


 沈黙ちんもくながれる。二人のかおにはあきらかな不信感ふしんかんかんでいた。この世界せかいのオックスブリッジともわれる名門校めいもんこうに、そんな理由りゆう編入へんにゅうできるはずがない。


 自分達じぶんたちなみだながして入学にゅうがくした過去かこおもうと、どうしても納得なっとくできなかった。


(このにはなにかくごとがある…)


故郷こきょう危機ききすく手掛てがかりになるなら…)


協力者きょうりょくしゃ指示しじ通り接触せっしょくつづけるべきか…)


 トビーとトートカナが二人ふたりけわしい表情ひょうじょう気付きづくよりはやく、カリアは椅子いすから立ちがった。


「そろそろはじめるか」


「ああ、もちろん! エミも問題もんだいないよな?」


「ええ、先程さきほど一撃いちげきだけじゃ物足ものたりなかったわ」


 トートカナが魔法まほう展開てんかいした異空間いくうかんかう三人さんにん。その背中せなか見送みおくりながら、ブレイドはそっとこぶしにぎりしめた。


(カリアさん…無理むりしないでね)


 こうして空中庭園くうちゅうていえんに、あらたな因縁いんねんまれることになった――

 ......

 神聖しんせいジェグナート王国、帝都ていと議会ぎかい大厅ホール


 あおぎん——この広間ひろま構成こうせいする全て(すべて)の基調色きちょうしょくだ。草花くさばなから人々(ひとびと)の衣装いしょうまで例外れいがいなく。


 〈考究こうきゅう〉と呼ばれるこの建築物けんちくぶつがこうした色調しきちょういろどられている理由わけは、初代しょだいジェグナートおう女帝じょてい位階色いかいしょく由来ゆらいする。


 あおぎん。その融合ゆうごうが、ふる神聖しんせいでありながら血塗ちぬられた歴史れきしきざんできた国家こっか形作かたちづくってきたのだ。


 通常つうじょうなら、このもの天賦てんぷさいめぐまれたものばかりである。


 そうしたものかおには、往々(おうおう)にしてそのさい見合みあった自信じしん宿やどっているはずなのだが——


 例外れいがいなく、玉座ぎょくざしたから入りいりぐちまでつづ絨毯じゅうたんうえとびらまも衛兵えいへいたちがかぶと表情ひょうじょうかくしているのをのぞけば、広間ひろまあつまる全員ぜんいん顔色かおいろなまりのようにおもたい。


 召使めしつかいから貴族きぞくおういたるまで。


 左右さゆう整列せいれつした文官ぶんかん武官ぶかんれつ同様どうようだ。


 もし一般市民いっぱんしみんがこの光景こうけいにしたら、きっといぶかしむだろう。なぜこのはなやかな社交場しゃこうばあつまったものたちが、一様いちようくら表情ひょうじょうをしているのか?


 そのといたいする最高権力者さいこうけんりょくしゃ回答かいとうは、こうなるだろう。


「まったく理由りゆうがないわけではないのです」


 例えば(たとえば)、出勤初日しゅっきんしょにちあさに「職務怠慢しょくむたいまんで一つのまちほろぼした」とらされたら、どうおもうか?


 しかもこころそこでは、それがたんなる過失かしつではないと気付きづいているとしたら?


 おのれ職務しょくむ忠実ちゅうじつたしたにもかかわらず、惨事さんじきてしまったのだ。


 そう、これはまぎれもない不可抗力ふかこうりょくぶべき事態じたいだった。


 連合魔法学院れんごうまほうがくいん開学祝宴かいがくしゅくえん出席中しゅっせきちゅうに、よみがえった吸血鬼きゅうけつきによって一つのまちえたとは。


 自然発生しぜんはっせいでなければ、人為的じんいてき可能性かのうせい否定ひていできない。


 報告書ほうこくしょを読みすすめるアポスはふかいきいた。この問題もんだい完璧かんぺい解決かいけつするすべたらない。


 ページをめくるたびえていく犠牲者名簿ぎせいしゃめいぼ


 生者せいじゃ血族ちぞく確執かくしつ千年せんねんときえてつづいている。


 一つの問題もんだい解決かいけつしても、伝播でんぱによってあらたな火種ひだねまれる。


 まさに百足むかでへびるがごとし。あたまひとれば、ふたつがまれよう。らなければ、毒牙どくが喉元のどもと千切ちぎられる。


 まさに油断ゆだんすきかれたかたちだ。


銀刃ぎんじんのアポス」が国外こくがいすきかれたのだ。


 たまたま——そう片付かたづけられるかもしれない。


 だが、もうひとつの警戒事案けいかいじあんかんがあわせれば、偶然ぐうぜんとはれまい。


 人類じんるい魔法文明まほうぶんめい飛躍ひやくさせた〈タロータロス〉の消失しょうしつ


 その事実じじつった直後ちょくごに、吸血鬼事件きゅうけつきじけんまちえる?


 さらに〈タロータロス〉にきざまれた〈シス〉の紋章もんしょう本物ほんもの確認かくにんされたとなれば……。


 厄介やっかいなことになった。


 自ら出陣しゅつじんすれば瞬時しゅんじ解決かいけつできるが、それは黒幕くろまく居場所いばしょ判明はんめいしている場合ばあいかぎる。


 ちからがあっても、その使いつかいみちからなければたからぐさりだ。


 親征しんせい威圧感いあつかんしめせば、相手あいてはアポスのおそれて潜伏せんぷくするだろう。吸血鬼きゅうけつき死者ししゃながら、けっしておろかではない。


 よわものいじめと強者きょうしゃへの畏怖いふ——それは生物せいぶつ本能ほんのうだ。


 ……ふと、アポスのまゆね上が(あが)る。


「そうか、よわきをくじき、つよきをおそれる……!」


 ひらめきをたアポスは報告書ほうこくしょじると、かたわらにさむら侍女じじょ手渡てわたす。玉座ぎょくざから立ち上がり、外套がいとうひるがえしながら命令めいれいくだした。


「カタート支部しぶ冒険者ぼうけんしゃ、トールク=ジョン=カーリアに指名依頼しめいいらいせ。緊急対応きんきゅうたいおうだ」

 ......

 ――連合魔法学院ユナイテッド・マギア・アカデミア、本館屋上・人造幻界アーティフィシャル・イリュージョンにて。


 槍先やりさきが突き出る。マントがひるがえる。黄色い光の奔流ほんりゅう闘技場アリーナはしから中央へとけ抜けた。


 あまりの速さに、残像ざんぞう実体じったい区別くべつすらつかない。これこそが〈戦技・神龍連突シェンロンリャントゥ〉の真髄しんずいだ。


雑魚ざこかどうかは……これで判別はんべつできる」


 最初さいしょ一撃いちげき勝負しょうぶが決まる。相手が雑魚なら、そこで戦闘せんとう終了しゅうりょうだ。


 だが相手は――新入生しんにゅうせいながら〈レベルセイの冒険者(Sランク・アドベンチャー)〉に認定にんていされたカリア・ヴェルムーン。結果けっかるよりあきらかだった。


 刹那せつな黄金おうごん閃光せんこう炸裂さくれつする。まるで真龍しんりゅううみよりあらわれたかのごとく、両手りょうてにぎ双剣そうけん魔力まりょく軌跡きせき龍須りゅうしゅの如くえがく。


 そのかがやきがはなつエネルギーはまたたく間に闘技場アリーナたし、戦場せんじょう観客席かんきゃくせきへだてる境界きょうかいすらえて、無形むけい圧迫感あっぱくかん全員ぜんいん心臓しんぞうつかんだ。


「……ッ!」


 右手みぎてけんわずかにすべり――直後ちょくご、グッとにぎなおされ、槍先やりさき剣先けんさき一点いってん衝突しょうとつする。ほぼ同時どうじ左手ひだりて斬撃ざんげきが、おそかる恵美メグ攻撃こうげき寸分すんぶんくるいもなくめた。


 轟音ごうおんとも衝撃波しょうげきは三人さんにん接触点せっしょくてんから爆発ばくはつした。この事実じじつ物語ものがたるのはただ一つ――カリアの防御ぼうぎょちから速度そくどが、二人ふたり攻撃こうげき完全かんぜん同調どうちょうしていたということだ。


「……相変わらずだな」


 カメロン・グレイヴはおどろかなかった。かれすでにカリアが〈魔眼まがんのカタート〉や〈銀刃ぎんじんのシルヴァ〉とたたか姿すがた目撃もくげきしている。もしこの一撃いちげきふせげなかったら、むしろそちらのほう意外いがいだっただろう。


 一方いっぽう不意打ふいうちを仕掛しかけていた恵美メグひとみには動揺どうよういろかぶ。完全かんぜん気配けはいしていたはずだ。英雄技ヒーロースキルたる〈隠形ステルス〉は、相手あいてのレベルにかんわらず看破かんぱできない――はずだった。


「なっ……!?」


 みずからの不甲斐ふがいなさに舌打したうちしそうになるのをこらえ、彼女かのじょはカメロンのほうた。長槍ちょうそうかまえた青年せいねんは、あせしずくあごからこぼしながらもわらっていた。


一撃必殺いちげきひっさつ通用つうようしねぇっての。オメーもてるだろ? あいつの――〈全知のオムニシェント〉さ。小細工こざいくなんか全部ぜんぶ見透みすかされてんだよ」


 いしばりながらはなされる言葉ことばに、恵美メグあらためてカリアの目元めもと視線しせんはしらせる。たしかに――通常つうじょうあおから、神々(こうごう)しい黄金色こがねいろへと変貌へんぼうしていた。


(これが……伝説でんせつの……)


 The Eye of Omniscient.


 かみえらばれしもののみがるという異能いのう。まさか実戦じっせん遭遇そうぐうするとは――ましてやこの地方ちほうに、自分じぶん以外いがいにこのクラスの使いつかいてがいるなんて。


魔法まほう戦技せんぎも、あの捕捉ほそくされたらわりだぜ」


 カメロンのつぶやきに、恵美メグ背筋せすじこおりつく。オムニシェントの能力のうりょくは、捕捉ほそくしたデータを次元じげんスキャンにかけ、瞬時しゅんじ解析かいせき学習がくしゅうする――つまり使用者しようしゃすでてきわざ完全かんぜん理解りかいしている。反撃はんげきなど最早もはや無駄骨むだぼねというわけだ。


 全知全能ぜんちぜんのう異名いみょう伊達だてではない。


「チィ……!」


 不意ふいやりね上げる。同量どうりょうちから相殺そうさいされ、カリアのけんちゅうる。すきてカメロンはやり大振おおぶりにまわし、爆煙ばくえん発生はっせいさせて視界しかいさえぎった。


「ラッシュ!」


 恵美メグそできながら後方こうほう退がるカメロン。けむり散去さんきょしたさきには、微動びどうだにせず優雅ゆうがつカリアの姿すがたが――彼女かのじょ足元あしもとには、一センチの移動いどうもなかったことをしめ魔法陣まほうじんひかりのこっている。


「なんでかったんだよ!? あの、カリアが使つかうのはじめてたはずじゃ――」


 けながらも、恵美メグみずから答え(こたえ)に気付きづいた。カメロンのまぶたうらで、あわむらさきひかり渦巻うずまいている。


「ああ、アイツの金色きんいろ初見しょけんさ」あせぬぐいながら、青年せいねん虚空こくうばす。「いてうなら……オレもってるからな。この〈紫電のバイオレット・オムニシェント〉を」


「……っ!?」


 金色こがね虹彩こうさい――伝説上でんせつじょう存在そんざいとされ、最高位さいこうい銀色ぎんいろさだめられていた虹彩魔法にじいろまほう真髄しんずい。その常識じょうしきを、二人ふたり同時どうじやぶった。


いままでかくしてたなんて……」


たりまえだろ。最終奥義さいしゅうおうぎなんだから」虚空くうからいた機関銃マシンガン弾丸だんがんめながら、カメロンは不敵ふてきわらう。「てめぇにせまられるまで使つかわけねぇだろ? ほら、作戦さくせんえるぞ。オレがおとり、アンタが主攻しゅこう


「オムニシェント同士どうしじゃないと……てないってこと?」


解析かいせき時間じかんがかかる。それまでえろ」


 恵美メグけん肩口かたぐちかまなおす。その刹那せつなけむり彼方かなたから黄金きんやいばおそきたる!


るわよ!」


まかせとけ!」


 銃声じゅうせい金属音きんぞくおん共鳴きょうめいする。弾丸だんがんあめ魔法障壁まほうしょうへきはじきながら、カリアはまるでうようにひるがえす。そのうごきは、攻撃こうげき仕掛しかける恵美メグ自身じしん鏡像きょうぞうごとし。


たて!? こいつ……!」


 カメロンが舌打したうちするよりはやく、カリアの左腕ひだりうで出現しゅつげんした聖盾せいじゅん弾丸だんがんを全て(すべて)かえした。右腕みぎうでけん恵美メグ渾身こんしん斬撃ざんげきを、ペンをさずけるようなかるやかさで受けながす。


一人ひとりずつなら……楽勝らくしょうね」


 つややかな黒髪くろかみらしながら、カリアが微笑ほほえむ。その表情ひょうじょうからは、最早もはやこれは訓練くんれんではなく遊戯ゆうぎであることがつたわってくる。


「クソ……集中しゅうちゅうしろメグ! 二方向にほうこうから――」


 カメロンのさけごえ途切とぎれる。突然とつぜん聖盾せいじゅんきりごと消散しょうさんし、かれ槍先やりさきむなしくくうったからだ。


「マジかよ!?」


 バランスをくずした体勢たいせいを、落下らっかしてきた片刃かたはけんささえるカリア。金属きんぞくきしおとともに、ふたた均衡きんこうたもたれた。


「……やるじゃねぇか」


「おいただ光栄こうえいです。Sランクの先輩せんぱいらしいお手並てなみですね」


 慇懃いんぎん物言ものいいでかえすカリア。そのあいだにも、恵美メグはな無数むすう斬撃ざんげきが、全て(すべて)えないたてはばまれる。


(こいつ……自分じぶん攻撃こうげき防御ぼうぎょしてるみたいにうごいてやがる)


 歯軋はぎしりながら距離きょり二人ふたり。その緊張きんちょうをよそに、カリアはいまにもうたしそうな優雅ゆうがさでつづける。


(これが“銀刃シルヴァ”と“魔眼カタート”をたおした実力じつりょくか……)


 ふと、カメロンのくちびるゆるむ。ある計画けいかくかぎが、目のまえ少女しょうじょにあることに気付きづいたからだ。


「……わらってんのかよ」


失礼しつれいね。貴方あなた面白おもしろそうにひかってたから、つい」


 たがいを見交みかわす微笑ほほえみ。その優美ゆうび情景じょうけいを――三つ(みっつ)の衝撃音しょうげきおんが粉々(こなごな)にくだいた。


「――〈魔戦技・闘気分身とうきぶんしん〉!」


 オムニシェントの紫電しでん炸裂さくれつする。カメロンがはなった分身体ぶんしんたい銃口じゅうこうから、真紅しんく魔弾まだんはなたれる!


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