変わらない
「君は変わらないね。」
フリルとレースで満たされた甘ったるい部屋の片隅で、あなたは小さく呟いた。
「それ、どういう意味?」
私がテディベアの首に赤いリボンをかけながら問いかけると、あなたは悲しげに瞳を伏せた。
「そのままだよ。」
「答えになってない。」
不満げに私が頬を膨らませると、あなたはふっと、疲れ切ったように笑った。
「そのまま、そのまんまの意味なんだよ。本当に・・・」
そこまで言ってあなたは顔を覆って沈黙した。私はなんだか可哀想に思えて、手にしていたテディベアを放り出してあなたのことを抱きしめてあげた。
あなたは何も言わずに、ただ嗚咽を漏らしていた。
***
フリルとレースに満たされた無機質な部屋で、私はひとり外を眺めていた。
ざあざあと降り止まない雨。時折空に閃光が走り轟音が響き渡っている。
私は首元に薄汚れた赤いリボンの結ばれた、古ぼけたテディベアを抱えて部屋の片隅で蹲った。
あなたは、どんな気持ちで私を見ていたのかな。
もう私とボロボロに色褪せた写真だけしか、あなたの姿を覚えていない。
私はあなたとは違う、先の尖った自分の耳を両手で塞いで身を縮こませた。
私は変わらない。私だけが変わらない。
雷は怖いままだし、身体だって小さいままで。
私ひとりが、ずっとしょうもない人のままであなた達に置いていかれるのだ。
私はぎゅっと目を閉じて、あなたの姿を、あの時のあなたを思い浮かべた。
今となっては、あなたがあの時どんな言葉を続けようとしていたのか知る術もない。