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「とりあえず、行ってみるか? 馬車はどうする? グレゴリウスが乗って来たのを使うか?」
え? 皇子も来るの? 権力はあった方が良いし、多分、皇子を一人でいさせる訳にはいかないから、仕方が無いのかな? 本当に誰も周りにいないね? 大丈夫?
「皇子も行かれるんですよね?」
「勿論!」
「それでしたら、私の馬車で。マリナ嬢は家の馬車で?」
「皆と来ました」
「じゃあ、問題ないな」
こうして第三皇子のご学友選びが、第二皇子とご学友の訪問に変わったのです。はて、さて、どうしましょう。頼んじゃう? ちょっと母と私、冷遇されているから二人とも一緒に引き取ってもらえないかなー。私、小さいし、母もそうお金を使いこんだりするタイプじゃないから大丈夫だと思う。よし。
思ったよりもガタゴトしない馬車でも、私はグレゴリウスさんの膝の上です。皇子は私のお腹に回されているグレゴリウスさんの腕を見て、ニコニコしています。本当に、好きなんですねー。
「あの。母と一緒なら、グレゴリウスさんの家にずっといても大丈夫です」
「なんだ? 訳アリか」
「皇子」
皇子、本当に素直というか率直ですね。グレゴリウスさん、苦労してそう・・・。さあ、プレゼン、プレゼン。
「叔父が私達を追い出すために色々してくるので、生活の安定を求めています」
「とんでもないな」
皇子は聴衆としては優秀ですよ。
「皇子、一方の話だけでは何とも言えません」
「まあな。でも、グレゴリウスにとっては願ってもない話だろう? 母子二人ぐらい楽に養える」
グレゴリウスさんは別に、子供好きって訳でも愛好者でも無かったようですね。冷静で、どちらかに偏ることも無さそうです。優秀! 素晴らしい。続けますよ。
「父は長男で、次男の叔父が家を継ぎたいとなると、私が邪魔になります」
「そうだな。長子相続が基本だ」
「母上の再婚の意志は?」
皇子が頷き、グレゴリウスさんが別方向から尋ねてきた。
「分かりません。今は、私を守って生きることに精一杯だと思います」
それに個人的な見解ですが、せせこましく嫌がらせをしてくる相手を結婚相手には選びたくないですよ。叔父以外の相手を探せるかどうかも怪しいです。母は実家も頼りにくいですしね。父方の祖父母はもう亡くなっていて、母方は交流していないようです。
家からも出られないですし、お金も無いし、住以外は足りていないのです。私が今日、出掛けられたのも奇跡に近いです。ご学友は強制的に選ばれたのが幸いしました。私が産まれた時はまだ父が存命だったので、私が産まれた届け出もしっかりされていたんです。