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はあ。溜息は付きたくないけど、付きたくなる。仕方が無い。付き合うか。視線だけで、促した。ちょっと私、偉そうで、大物感出ていない? なかなかじゃない?
「場所を移動していいか?」
「はい」
流された。さらっと流されたよ。抱き上げられたままだし、私に選択権はありません。
「部屋をお借りしても?」
「人目につかない道で行くぜっ」
黒ズボンさんが白ズボンさんに確認を取り、白ズボンさんの先導で進む。あーあ。仔牛の気分。歌っちゃおうかな。駄目だ、気分が更に暗くなる。よし、前向きに、良い所を見つけて行こう! うん。自分で歩かなくていいから楽ちん。しかも、隠し通路を通るんじゃない?
普通の道でした。残念。ただの人がいない道でした・・・。暗くないし、死角になる訳でも無い。皇子が通るし、初対面の私がいるから仕方が無いか。
「早速だが、」
「不細工になってるぞ!」
残念そうにぶーたれていたら、見咎められました。ごめんなさい。白ズボンさんは率直過ぎると思う。
「続けるぞ、私に協力して欲しい」
黒ズボンさんが懇願してくる。やだー。面倒くさそう。・・・そうも言ってられないか。よし。
「良いことありますか?」
「協力して貰えるなら、出来る限りのことをしよう」
「それは、俺も保障する」
白ズボンさんも胸を張って請負ってくれる。皇子だしね、うーん。信じても良いかなー。どれ。
「何をすればいいですか?」
「私と婚約して欲しい」
「・・・」
これは、逃げなきゃ。私、五歳! 中身はともかく、外見は全体的に淡い色で構成された小さ目の五歳のはず。私の外見はぼんやりしているんだよなー。色白は良いよね。日焼けには気を付けないと。それで髪と瞳が白に近い灰色なんだ。虹彩が白目に近いから、瞳孔だけが黒っぽい。それでもそこまで黒くないかも。ナルシストでも無いからそんなに鏡でマジマジと自分を見ていないから、断言はできないけど。母は可愛いって言ってくれるよ。それで充分だよね。
うんうん。まずい、現実逃避しちゃった! 逃げないと!! 動く前に、皇子の弁解で動きを止めた。
「あー。大丈夫、大丈夫。幼女好きって訳じゃないから、心配するな!」
「それを疑われていたのか!?」
黒ズボンさんは大変、遺憾の意を表明されました。あれ? 仮面は? いつ外したの? 仮面が付いていないこともあって、表情が分かり易く驚いている。その驚嘆しかない態度に、逃げるのはいったん保留にして手を伸ばす。その仮面、どうなっているの?
「グレゴリウス! 今度は顔が! 良かったな!!」
私が手を伸ばしたことに気が付いた、白ズボンさんの視線が黒ズボンさんに向く。あっという間に距離を詰めて、歓喜の声を上げる。それに黒ズボンさんが思わず右手を自分の顔に伸ばす。ちなみに左手は私を抱えています。