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リレーされたんですが、そう言えば黒ズボンさんは右手に杖を持っていたはず。え? 私を片腕で抱きますか? 杖を持っている方で? いやいや、危ないよ、私が。怖いでしょう! と思っていたら、左腕に捕まらせられました? 杖を持っていない方ね。余計、危なくない?
「よしっ」
白ズボンさん、「よしっ」じゃないから! 落ちるでしょう! 落ちちゃうでしょう!! 黒ズボンさんの勿論、黒長袖の腕にしがみ付きますよ。ズルズル下がってるー。お。止まりました。腕が良い角度ですよ。その調子! しかも杖を持ったままですが、右手も添えられて、良かった。
「やはり・・・」
「動くな」
何、またですか。二人の内緒話。あんまりするなら、妄想を掻き立てちゃうぞ! 後悔しても遅いんだからね。ふふふ。
「名前は?」
一人、人様に言えない妄想をしていると、問い掛けられました。えー。どうしようかな。
「聞こえているよな? え? この子、無視?」
「聞こえているでしょうが、言いたくは無いのでしょう」
そうですね。
「うーわー。これぐらいの子ってどうしたらいい訳? おやつでもあげれば機嫌とれるかな?」
そんなことを聞かせている時点で、期限は最底辺ですよ、頭を抱えている白ズボンさん。
「・・・失礼しました。私はグレゴリウス・サマラと申します。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
一気に切り替えた、黒ズボンさんが最終手段に出ましたよ。はー。正式に名乗られちゃあ、仕方が無い。やりましょう。母と自己紹介だけは勉強したのです。えっへん。
「・・・ご丁寧に、ありがとうございます。マリナ・ストラと申します」
でもさ。逃がさないとばかりに抱き上げたままで、正式な挨拶しますかね? 正式な挨拶は動作も付くんだったかなー? 何分、不勉強で。
ねえ、そろそろ降ろして、帰して貰えませんかね? 拐で騒ぎますよ!