表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生雑誌  作者: 狐の手袋
6/8

念願の意思疎通

 エルフ。耳長で美しい容姿を持ち賢明で長寿。魔術に長けておりその昔は人々から地上に降りた神々の現身とさえ言われた種族。自然をこよなく愛しあまり人と関わりをもとうとしない。

 そんなイメージを持っておりました。話を聞いているとどうやらそうそう変わりは無いようですが、どうやらこの世界では割と交流は多いようで。

 本日はそんなエルフの魔術師がこちらに来るようです。私としてはその高度な魔術にて意思疎通が出来ないかと期待しております。

 ちなみに王様との話し合い以降、学者さんに混じってちょくちょく王様もこの図書館に来ては私をめくって、うぅ~んと唸りながら難しい顔をしてます。吟味でもしてるんでしょうか?まったくもう……。

「ヘクター王。お久しぶりです。」

 おや、随分と透き通った女性の声が。

「おぉ。リズ殿。わざわざ申し訳ないな。」

「いえいえ、何やら面し……、興味深いお話でしたので。急いで来てしまいました。」

 少し首を傾げ笑顔で返事をするリズと呼ばれた女性。話違わずなんという美女。そして、笑顔になると長耳がちょっと下がるんですね。美しく可愛い。

 クラウスさん達もちょっと顔を逸らしちゃってまぁ、免疫のない事。可愛い。

 言葉の最後で私とちょっと目が合った気がするけど気のせいよね?

「これがその魔導書になるのだが、見てもらえないだろうか。」

「では、失礼いたしますね。」

 なんの躊躇もなく受け取ってますな。クラウスさん達なんて触るだけでも散々騒いで悩みぬいた後だったのに、随分とまぁ無警戒に。あまりに普通に受け取ってるからこちらの方が驚いていたら更に周りに聞こえない位の声でぼそぼそめっちゃ早口で、

「……。魔力の類は一切感じないわね。術式も……ない。しかしこの滑らかな素材は一体?随分と純度の高い自然の要素を感じるけど、表面は……土?製法が判らないわね。ドワーフの技術……のようにも見えないし、言語も、見た事も無い言語ね。古代に滅んだ高度な文明があったと聞いた事はあるけど、こんなに保存状態が良いとも思えないし、それにこの女性。まるで生きているように精巧だけど、魂が見えない。封印には思えないわね。古代の遺産と考えるより、どちらかというと……。異界の書物……?」

 おおおぅ。なんかすごい。凄いっすよ。エルフさん!めっちゃ核心ついてきた!

「あぁ、未知とはなんて心が弾むのかしら。それにこの状況……。ふふっ。もっと調べたいわ!」

 これは、これは期待できるのでは?

 リズさん?リズさ~ん!

 私アリアって言います!聞こえませんか?!

「どうじゃ?何か判ったかな?」

 ぬぉぉ。王様ぁ、こっちは今リズさんと話してるんだ。邪魔しないでよ!

「……!っ、お静かにっ!」

 おぉ?真剣な顔をしてリズさんが静止を促した?

「……。聞こえます。この魔導書の声が!」

 ま~~じ~~~か~~~~~!

「えっ。えぇ……。」

 うわぁぁ。長かった。マジで長かったですよ!聞いてくださいよ。

 今まで誰とも会話なんて出来なくて、いやもうほんと。どうなることやらと!

「……。す、少し混乱しているのでしょうか。中々聞き取りづらい……。」

 あぁぁ、ごめんなさい。まくし立ててしまいました。

「して、リズ殿。この魔導書はなんと?」

「少し混乱しているのと、共通語ではない言語を使われているので断片的な言葉しか。」

「おぉ。そうなのか!我々には何も聞こえなかったのだが、さすがリズ殿だ」

 あら。こちらの言語は変換されないのか。向こうからの言葉は聞こえてるから通じていると思っていたけど。でも判らない訳じゃなさそう!

 後はこちらが害をなす気が無い事さえ伝わったら、ひとまずは安泰かな?

「……。ひとまず害意は無いようですね。」

 うほ~。リズさんマジ天使!ありがとう。ありがとう!

「そうか。それは何よりだ!我々も安心できる。しかし意思があったとなると、今までの我々の行動に対して不満などがあったのではなかろうか。丁重に扱ったつもりではあるが、意思を持っているとは思いもしなかったからな。」

 そんなのもう全然気にしてないよ。心配してたのはこっちの都合だし。

「……。処分するようなことが無ければ、大丈夫でしょう。」

「なるほど。それであれば、問題ないな。良かった良かった!」

 私もよかったですよぉ。

「そういえば、我々の言葉は届いているのか?」

 えぇ、そりゃもうばっちり!聞こえてますよ。ヘクター王!

「……。ん~どうやら聞こえてないようですね。」

「そうかぁ、それは残念だのぉ」

 え?いやいや、聞こえてますよ~?

「ただ、私を介して貰えれば、話をすることは可能かと。」

 リズさん?ちゃんと皆さんの声聞こえてますよ。

 アイ ヒア ユー オール ですよ~

「そうか。ならば聞いてみてほしい。その封印を解く事は可能か?」

 リズさんがこっち見てる。誰にも見えないその表情は……。

 めっちゃ……。

 めっちゃ笑ってるよこの人。ちょっと、涙ぐんで笑いめっちゃ堪えてるよ!

「い、いえ。ふ、封印は神と等しいほどの魔力をもって封印されているようで。一筋縄ではいかないようです。」

 あああぁ。もう、あ~~あ。この人遊んでる!絶対遊んでるし。

 更に最悪なのはこっちの声聞こえてねぇですよぉ!

 ま~~じ~~~か~~~~~!

 性悪過ぎませんかねぇ!

「でも、ご安心ください。暫く私もこちらに滞在いたしますので、解明にご協力いたしますわ!」

「本当か!それはとても心強い。感謝するぞ、リズ殿。」

 王様もばかぁあぁぁぁっ。この人適当言ってるだけですよ~~~。

 通じたと思ったのに……。やっと話せると思ったのに。そんな、そんなのあんまりだよぉ。


(ぎゃははははははっ。ひ~。面白れぇ!お前来てから、ひひっ、退屈せずにすんでるぜ、うははははっ。)

 こ、こいつ脳内に直接?!いや、違うそうじゃない。ついにショックで幻聴が?

(いやいや、現実だよ。お前思考を垂れ流しすぎてるからさ、聞こえてくるんだよ。)

 え……また、からかわれてる?だ、誰ですか貴方?

(一緒の棚に保管されてるだろ。お前と違って、正真正銘の魔導書様だ!)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ