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第7話バレンタインデー(前編)

本編に繋がるその後の話。良かったらどうぞ!

2月14日…それは男女共に2月の一大イベントである「バレンタインデー」の日である。


俺は毎年、アローン会のメンバーと貰ったチョコレート(全部義理チョコ)の数や誰から貰ったかを報告し合い、本命であろうチョコを貰った会員に対し、大いに祝うのだ.......貰った奴のポケットマネーで。本命チョコを貰ったことがバレると、『お祝い』で毎回常勤講師1ヶ月分の給与がぶっ飛ぶので必死に隠す。



俺にはどこかの卒業生のおかげで『ロリコン教師』と名付けられていたので、貰うとしても毎回義理チョコであった。



しかし、今年は俺がアローン会に加入してるという事を知っているにも関わらず、俺の事を弄んでくる()()()がいる。彼女の事だ、絶対..............



「あら!リム先生ではありませんか。おはようございます。」



「あ、あぁ、おはよう。アンジュ先生。」



彼女のことを考えていたら、出勤して早々出会ってしまった。思わず何かしてくるのではないかと身構えてしまう。



「ふふふ、どうしましたか?そんな身構えて。ちょっと朝からエミリー学科長が呼んでいるので失礼しますね。」



そう笑いながら言って、彼女は足早に俺の元を去った。彼女が早々に立ち去ったことに安心したが、同時に何故か寂しいような、残念なような複雑な気持ちになってしまったのは.......学生の時手を焼いていた彼女が大人な対応をすることで、改めて『()生徒』なんだと実感しただけだろう。どうしても彼女に対しては生徒だった時の気持ちが抜けきらないようだ。気をつけなければ。



俺は気を引き締めつつ、授業準備に取り掛かった。


****************


授業も終わり、アローン会の会合も終わった。


今年は本命チョコを貰った会員は現時点ではいなかった。もし貰った会員がいたら退勤後そのまま『お祝い』開催コースであったのだが。高級焼肉、楽しみにしていたんだがな。



それにしても今日はいつもと違って平和な1日だった。彼女が朝以外一切現れなかったのだ。どうやら医療科の3年生が実技演習の一環として街の治療院に出ており、その引率をしているらしい。何故か態々医療科の学科長が食堂の隅で一人昼ご飯を食べていた俺に教えてくれた。去り際に、


「安心してね。大丈夫よ。」


と、言われたが。もう後は家に帰るだけなんだ。こんなこと思い出して変なフラグは立てたくない。



そんなふうに今日の事を振り返りながら歩いていたら、いつの間にか自宅のアパートの前にたどり着いた。アパートのオートロックの鍵を開け中に入ろうとした時、




「リム先生!待って!.......よかった、間に合って。押し入らなくて済んだわ...。」




今日の朝以来会っていなかった彼女....アンジュが現れた。なんか最後の方、不穏な事言ってなかったか?



「どうしたんですか?こんな所で。夜、女性が一人でこんな所にいたら危ないですよ。特に貴女の家はスラム街に近いんですから。」



何だかんだもう夜中の21時を過ぎているのだ。俺が住んでいる所は街の警備を担当している黒騎士団の詰所も近いため比較的治安も良いが、彼女の住む場所はスラム街に近く治安が悪い。いくら彼女自身、魔術に長けているとはいえ、若い女性が夜中に彷徨いて良い所では無い。



「大丈夫です。転移魔術使えるのですぐ帰れますから。」



「え、転移魔術使えるのって王族だけじゃなかった....?」



「正しくは王族並に魔力量がある人.......ですね。転移魔術が使えるのは行ったことがある場所に限られるのと、国に申告しないと、発動した時点で捕まってしまうのが難点ですね。私はきちんと申告してますが。」



「そ、そうなんだ。さすがですね。ところで、何か御用ですか?そんなに息を切らせて。」



「こ、これを渡したくて。」



そう言って彼女はそっと持っていた紙袋を差し出した。



「本当はお昼に渡そうとしたんですけど、急遽お昼は演習の引率係になってしまって...何度エミリーを恨んだか。」



「最後何か言った?ごめん、聞き取れなくて。」




最後、怖い顔で何やらボソッと呟いていたがよく聞き取れなかった。



「大丈夫です。それよりこれ.......。」



「中身を見ても?」



「もちろんです。」



彼女は珍しく顔を赤くして黙って俯いていた。いつもなら俺を弄り倒す彼女が。俺は紙袋を受け取り中身を確認することにした。


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