表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

第3話 女同士の企み

弟子のリンは次席で高等部に合格した。


この私が指導して太鼓判を押すのだ、もちろん首席で合格だろう?と思っていたが、どうやら王族が試験を受けた中にいたらしい。正直面白くないが仕方がない。奴らにもメンツというものがあるのだ。平民であるリンに負けたら、貴族側が嫌がらせしてくるのだろう。


そういったやつは私が復讐しに行っても良かったのだが…リンは嫌がりそうだ。あの子は優しい子だから。


その証拠にリンは授業の後、暇な時、治療院を手伝いに来てくれた。たまに私好みの面白い友達も連れて。


************


ある日のこと、リンが手紙を持ってきた。


「医療科の先生と今日、師匠の話をしたんだけど、ちょっと術式の事で相談したいんだって。手紙に詳細が書いてあるからって言ってた。」


「あらー。懐かしいわね。」


宛名を見たら昔術式の共同開発をした同級生エミリーだった。なんと、エミリーは医療科の学科長になっていた。


医療関係の術式のことで相談したいことがあるから、学校に来れないか?ということらしい。ヤクザ組織壊滅事件の後始末も終わったし、リンの指導も無くなったので暇してた私は即了承の返事を出し、スケジュールを調整することにした。


***********


久しぶりの母校は懐かしかった。一応、先に高等部全体の責任者である学園長と魔術科の学科長に挨拶をしてから、医療科の棟へ向かった。


「久しぶりー!元気だった!?」


「元気よ?エミリー!偉くなったみたいね!」


「全然!師匠である前学科長が突然、『後継にしてあげるからあとは宜しくね』って言い残して消えちゃって。もう大変だったのよー!?最近ようやく落ち着いて術式開発に手を出せるようになったの!是非貴女の意見を貰いたくて!」


「どの術式…?」


昔はよく術式開発で意見交換しながら、ああでもない、こうでもないと意見をぶつけ合って来たが、あの頃に戻ったようだった。


**************


「ところでアンジュ?最近何か良い話無いの?」


「良い話?恋愛的な?」


「そうそう!!昔はリム先生の事散々からかってたじゃない!普通に卒業しちゃったから、残念に思ってたのよー。」


「あー、あれね?私は本気だったんだけど、最後まで冗談って思われちゃって。卒業の時位はちゃんと告白すれば良かったなぁ…って後悔してるのよ?これでも。」


「え、あれ本気だったの?あんた綺麗なんだから、攻めたらいけたかもしれないわよ?」


今までの人生の後悔はこれだけ。卒業の時、ちゃんと告白していれば、リム先生は応えてくれたんだろうか?でも振られてしまったら…と思うと、やっぱりあの時のままの関係で良かった気もする。


「…リム先生は結婚しちゃった?」


正直、聞くのが怖かった。もし、先生が結婚していたら…そう思うと、少し悲しくなってしまった。


「あの先生の事、そこまで好きなのはあんただけだと思うわよ?貴女との事があってまだ何人かの先生には『ロリコン教師』って言われ続けてて、いまだに結婚出来ない、彼女すらいないって嘆いてるくらいだし。『高等部アローン会』に所属してるって聞いてるわよ?」


少しほっとした。リム先生が『ロリコン教師』と呼ばれるようになってしまったというのは少々申し訳なかったが、彼女は昔から情報通だったからその情報に間違いはないだろう。……しかし何だ?その会は。


「何?そのアローン会って。」


「独身男のみ入会が許される会らしいわよ?」


「何それ!」


「……いまだに好きなの?」


「…多分。」


つい、顔が赤くなる。もう昔抱いた恋心は忘れたと思っていたが、どうやら違かったらしい。燻っていたものが再燃したようだ。


しばらくニヤニヤと私の顔を見ていたエミリーだったが、急に立ち上がり、


「そうだ!!!いい考えがあるわ!貴女、医療科の臨時講師として雇ってあげる!医療科の棟は魔術科の棟と近いし、貴女の弟子であるリンもいるわ。リンの顔を見るため…とか、魔術科の医務室へ行く為…とか言って、リム先生に会いに行けば良いのよ!我ながら本当にいい考えだわ♡」


「え…?」


私は戸惑ったが、乗り気な友人を見ていると段々それがいい考えに思えてきた。


「エミリー、ありがとう!私、頑張って先生を落とすわ!」


「ふふふ、どういたしまして。もちろん術式開発も手伝ってね。」


「もちろんよ、エミリー!あぁ、本当に楽しみだわ。」


そう言って、二人してすぐアンジュが臨時講師として雇われる為の手続きを行うのであった。



その頃、魔術科では…


「何か寒くないですか?何かゾクゾクするんですよ。」


「やだなぁ…リム先生、風邪ですか?今日は早く帰った方が良いですよ?」


「…そうですね。風邪の引き始めかも知れません。今日は早めに帰って寝ます…。」


そう言って、早めに帰ったリム先生だったが、次の日ドゥ・リンから師匠が医療科の臨時講師として採用されたと聞かされ、当時、「ロリコン教師」と散々からかわれた事を思い出し青ざめたのは言うまでもない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ