第2話 師匠になる
卒業してからは、スラム街に近いところで治療院を開業した。初めはヤクザもの達が襲って来たが、叩きのめした。それはもう徹底的に。
それ以降は治療院の周りでは争わないという暗黙ルールが各ヤクザ組織の中で出来たらしく平和になった。
しかしある日、2つの組織の組長が治療院内で争って、治療院内がズタボロに破壊された。その上、両組織とも謝罪も無く、「弁償金さえ払えばええやろ!?」と開き直ってお金を投げつけてきたので、次の日各組織に『返金』しにいった。その結果、2つの組織は綺麗さっぱりなくなり、その組織の組長始め、組員は全員捕まり罰を受けることになった。捕まった人々は皆顔を真っ青にして怯えていたらしいが。私は当然の事をしたまでである。
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ヤクザ組織を壊滅状態に追い込んだ後始末の後、領主である父親が持ってきた話が「弟子を取れ」である。どうやら平民の女の子で、街でよく家から脱走して森へ行こうとする弟妹を追い掛けている子らしい。私も噂は聞いた事がある。魔力持ちでそれを上手く使っていつも捕まえているとか。
まぁ、弟子…といっても高等部の入学試験で受かる程度の試験対策をすればいいってだけらしいが。問題はこの治療院の事情である。
治療院の人手が欲しいのは確かであるが、この治療院、来る患者のほとんどがヤクザである。今までも何人も手伝いを雇ってきたが、皆、患者である彼らが怖くて辞めてしまった。
「では、この治療院で怖がらず働くことが出来たら、弟子として認めますわ。」
と、父親に伝えたところ、次の日にはしっかりした女の子がやってきた。
「ドゥ・リンと申します。宜しくお願い致します、師匠。」
と、ガチガチになりながら自己紹介してきた。それも患者が沢山いる中で。患者に怯えるという訳でも無く、ただ私に対して緊張しているらしい。それにこの魔力、貴族である私と同じくらいだ。…これは良い生贄…じゃなかった、弟子が入ってきたようだ。逃がさないように優しくしないと。
「宜しくね。私はアンジェリーナ。アンジュと呼んで?」
「わかりました。アンジュ師匠。」
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正直、リンは優秀な弟子だった。私と同じく、見ただけで私が使う術式をある程度理解し覚え、私の治療を手伝ってくれた。高等部入学前にはある程度治療を任せる事が出来るようになったので、ついつい甘えて沢山仕事を振ってしまったほどだ。
常連の患者達からは「さすが鬼師匠」と言われたが、そう言った人には麻酔の効力を抑えて治療してやった。
第3話は明日の23時予約投稿しています。
次の話も良かったら楽しみ下さい。