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企画参加作品

メイジとヒーラーの恋愛物語 ~奇跡のヒールじゃなくて知力のヒールです!~(短編化)

作者: 紅藤

とびらの様主催「あらすじだけ企画」の参加小説です。

期待する短編小説とは形態が異なる可能性があります。

 アンバード公爵家でお抱えの回復師をしているロルフは、今年から入ってくる後輩が気になっていた。ロルフは国一の魔術学園の僧侶科を首席で卒業した秀才である。その才能をみだりに自慢することはなかったが、公爵家に就職できたのはそのおかげだと思っている。後輩も母校を首席で卒業した猛者だと聞いて、ロルフは彼女に高い期待を寄せていた。


 しかし、年始めにやってきた後輩は、安っぽい杖とローブに、悪趣味なアクセサリーを着け、本当にこれが首席?とロルフは怒りより先に呆れを抱いたのだが。顔合わせの際に世間話の一環で話を振ってみると、ロルフの知らない論文やロルフですら持っていない僧侶の最高級防具など、その知識量は本物であった。なお、最高級防具こと破邪のローブは友人に譲ってしまったらしい。ヒーラーにとっても重要な武器である杖も、今日は普段遣いでないものを持ってきたのだとか。あと、金ごてごてイヤリングは、つけていると安心するお守りなのだ、と語った少女クリスは、間違いなく変人であった。


 翌日。平民にしては見目の良いロルフがキャロラインという令嬢に付きまとわれていると、クリスが令嬢たちを振り切ってロルフを小部屋に匿ってくれた。そこでロルフはクリスに低級ヒールを使われる。別段、体力を使った訳ではないが、疲れが楽になったロルフは、お抱えヒーラーになったのだから仕事中は公爵様に無許可で回復してはならないと叱りつけた。


 最近クリスの顔色が悪い。それに気が付いたロルフは今度は自分がクリスを小部屋に引っ張りこんだ。事情を聞き出すと、要はMP不足で体調が悪いのだという。しかしクリスはMPポーションを携帯しておらず、代わりにエリクサーを取り出した。無事エリクサーでMPは回復。しかし、クリスの体調は翌日も悪い。ロルフは後輩を問い質し、失くしたという金色のイヤリングを探し出した。お守りが戻ってきて喜ぶクリスだったが、ロルフは至近距離で見た装飾品に硬直していた。その至高の輝きは金ではない。幻の金属、オリハルコンだと。あと、このダサいデザインはなんだろうと思っていると、クリスは自分が見たドラゴンをそのままデザインしたのだと話してくれた。


 夏。仕事ぶりが板に着いてきたクリス。そんな折り、当主様の友人が魔物の核を落とす事件があった。核は、たまたま水仕事をしていた侍女の手によって覚醒し、屋敷を暴れ回る。休憩中に魔物と遭遇したクリスとロルフは、二人で魔物を押さえ込むことに。魔物の攻撃にロルフは侍女とクリスを庇おうとするが、クリスは自分の方が魔法防御が高いからと言ってロルフの前に立ってしまう。結局、主にクリスの手によって魔物は討伐されたが、ロルフは、クリスは本当にヒーラーなのか?と思った。


 事件の後からすっかり老け込んだ当主様。知人が起こした事件で雇っている侍女が怪我をしたと聞いて、妻から責められたことが原因だろう。ロルフは、令嬢の追っかけに疲弊した春をふと思いだし、駄目元でクリスに回復させた。すると、翌日も当主はクリスの回復を望み、毎日繰り返すうちに健康的な60代になった。クリスのヒールは、噂を聞き付けた当主の妻にも日々かけられることとなり、夫婦は若返った。これはロルフのヒールでは決して起こらないことだった。その差を研究する暇もなく、アンバード家に分家の娘が訪れる。彼女は若返りの噂を聞きつけ、ヒーラーの貸出しを求めたのだ。


 娘の要件は、虚弱な婚約者を若返りの奇跡で治すことだった。快諾したクリスを心配してロルフは付き添うが、案内された婚約者の屋敷は第一王子の別荘。大物登場に戸惑うクリス。案内人の魔術師がクリスの同級生だと知って戸惑うロルフ。第一王子の身体はクリスの本気のヒールによって呆気なく治ったが、クリスが凄腕の魔術師だとを知ったロルフは悩む。クリスをこのまま公爵家に留まらせるべきか否か。何故か彼の心情は離れたくないと訴えていた。


 この一件からクリスは白魔として名を馳せることとなり、あらゆる家から縁談が、あらゆる組織から勧誘が届いた。ロルフは悶々とした日々を過ごす。ある日クリスの同級生がやってきて、クリスに勝つために結婚を申し込むとわめいたので、とっさにロルフはクリスの縁談は既に決まっていると言ってしまった。


 それを聞きつけた公爵は妻と共謀して、ロルフとクリスの婚約を進める。ロルフは抵抗したが本心に逆らうことはできず、クリスとのデートの日になった。奇しくも二人の服装はそれぞれの職業の正装だった。街は治安が悪い。案の定、クリスのオリハルコン杖に魅了された冒険者と乱闘になり、無事ぶちのめした。


 ロルフはクリスに回復をかけながら、好きだ、どこにも行かないでくれないかと告白した。クリスは私もですと答えた。かくして、僧侶の先輩と魔術師の後輩は恋人同士となったのだ。

読んでくださった方と、とびらの様に感謝を。


2021.01.09 少しでも読みやすいように改行を追加。

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― 新着の感想 ―
[良い点] メイジとヒーラー、しかもどちらも学校を首席卒業した者同士のお仕事もの、良いですね。 主席といえば孤高なもの。 しかも片割れは変人属性付き。 知識偏重なメイジとなれば恋に奥手で経験が無いこと…
[良い点] 大筋でストーリーの起承転結がきっちりと通っており、分かりやすい楽しさがありました。男性視点の恋愛物、いいですねえ。主人公ロルフは生真面目なタイプなのでしょうか、変人で天才の後輩魔術師との成…
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