第18話 百合乱暴の暴風雨
注意:少しだけ、お互いに合意のない表現があります。そういうのがダメな人は読まずにブラバしてください。
薄暗い部屋の中、有葉はぼうっと明かりの灯るパソコンだけを立ち上げて、そこに座っていた。
天帝や他の妖怪グループからの連絡は、全てそこから有葉に伝えられる。
その、天帝からのメールに、有葉は呆然としていた。
「……結婚式を、開く……」
そう。
それは、玲朗との結婚の儀の日程表であった。
狐の有葉は、狼の玲朗と結婚する。
その、Xディである。
ポン、と、新しいメールがPCに届いた。
それを開くと、中身は玲朗からであった。
『どうする? 』
そんな言葉に、有葉は勇気を出す。
『計画を、実行する』
そう、メールを返した。
玲朗と有葉は、この時のために、とある計画を練っていたのだった。
コツ、コツ。
窓の外から合図があって、有葉はそのメールを速やかに削除する。
それから、「はーい! 」と返事をして、ベランダのサッシを開けた。
「……起きていたのね、有葉」
そこには、黒髪の美人が立っている。
有葉は、顔をぱあっと輝かせた。
「鷹音! ……あ、電気点けるね! ささ、入って入って! 」
「こんなに暗くして、パソコンだけに集中するのは、目に悪いわよ」
「『暗い所でパソコンやスマホするのは、目に悪い』って、科学的にも否定されてるわよ? 」
有葉は、ちょこちょこと鷹音にクッションを勧める。
鷹音は、パソコンを一瞥すると、それから有葉に向き直った。
「……あなた、結婚するって本当? 」
「うえ? え? 」
「カエルが来たわ。あの、天帝の使者だって言ってたけど」
「そ、そうなの? 」
まさか、鷹音まで結婚式に呼ぶとは思えなかったが、鷹音がショックを受けたのは、有葉にもよくわかっていた。
「鷹音、あのね――」
「おめでとう、有葉」
そう言いながらも、鷹音は有葉に近づいてくる。
床のカーペットの上に座っている有葉は、少し身を引いた。
「おめでとう」
「た、鷹音? 」
鷹音は、止まらない。
有葉は、後ろに下がったが、ゴツンとベッドに突き当たってしまう。
「鷹音、落ち着いて――」
「おめでとう。……この言葉を聞くたびに、私を思い出すわね、あなた」
鷹音は、暗い目の中で、有葉を見やった。
有葉は、500年生きているが、これほど情念の炎を見せる女性は、久方ぶりであった。
「友達じゃないわ。私は捕食者。あなたは獲物よ」
「鷹音――! 」
そこで、有葉の口は、鷹音の唇で塞がれた。
二人の最初のキスは、最悪の状態で実行されたのだった。




