2度目の魔王城
皆と話していると時間はあっという間に過ぎ、魔王城の裏庭が見えて来た。よく見ると扉の前に人影が2つ。近づくにつれ誰かが分かってくる。1人は約束相手のダリアナ。もう1人は…。
「あれ?ダリアナと…ルーク?」
ダリアナは出迎えに来てくれたんだろうけど、なんでルークがいるんだろ?
疑問に思いながらも裏庭に到着し、ベリルから降りると2人は私に近づき、ダリアナが機嫌良さそうな声を出す。
「シズクー、待ってたわよ!」
「お待たせダリアナ。今日はよろしくね!」
「ええ、任せてちょうだい!」
ダリアナと軽く挨拶を交わし、なぜいるのか気になるルークに視線を向ける。
「ルークも久しぶりだね。」
「ええ、お久しぶりです。」
ルークにも挨拶をし、さっそくだが気になることを聞く。
「えっと、ルークはなんでここにいるの?」
私の問にルークはニコリと笑う。
「例のシャンプーなどに関して、正式に取引をと思いまして。」
「え?正式に?」
「はい。数人ではありますが、ダリアナの持っていた物を使用した方たちに異常はありませんでしたし、評判も良かったので。ぜひ、取引をして頂きたいのです。」
「私からもお願いしたいわ。興味を持った子がたくさんいて、どこで手に入れたのか、今後使えるのかって聞いて来る子が多くて困っているの。あ、もちろんシズクから貰ったとは言っていないから、そこは安心してね!」
「あ、うん。ありがとう。」
ダリアナが私のことを言うとは思ってないけど、安心して!と力強く言うダリアナに笑みがこぼれる。
でも、そっか。評判、良いのか…。ダリアナも質問攻めされて大変みたいだし、前に評判良かったら売る的な話したしなー。仕方ないか。よし!
「分かった。ダリアナも困ってるみたいだし、評判もいいならやってみるよ。ルーク、まずは、どうしたらいいのかな?」
「ありがとうございます。そうですね…。とりあえず、城の備品として買い取りたいのですが、まずは、商業ギルドに登録からですね。それから、容器の準備や他で売るなら場所も考えなければいけませんね。」
「なるほど、商業ギルドか。なるべく早い方がいいよね?ダリアナ、今日行ってもいいかな?街の案内は、その後でお願い出来る?」
「分かったわ。私も早い方が助かるもの。時間はたっぷりあるしね。」
「私も一緒に行きますので、登録に時間はそうかからないと思います。」
「ルークと行くと早く済むってこと?」
「はい、私も幹部の1人ですし、財務を預かっているので、商業ギルドとは何かと縁があります。きっと、融通をきかせてくれますよ。あ、それと、身元保証人が必要なのですが、シズクが良ければ私がなります。どうですか?」
「身元保証人?それって、もし私が何か良くないことしたら、ルークにも責任が行くんじゃないの?」
「えぇ。まぁ、そうですが、シズクなら大丈夫でしょうから。」
「でも…。」
「大丈夫ですよ。そうやって私の心配をするシズクが、自ら良くないことをするとは思えませんし、仮に何かあった時には、私も責任を取りますから。もちろん、シャンプー以外にも、何か売りたい物が出来た時にも同じく責任は取ります。それに私を保証人にすると何かと得だと思いますよ?」
「得?」
「えぇ。例えば、店舗の確保や店に必要な物の発注など、多少優遇してもらえるかと。それに、あなたに言い掛かりをつけようとする者は減ると思いますよ。」
「言い掛かりって…。それは、私がヒューマンだから?」
「それもありますが、新参者が自分たちより稼いでいるといい気分はしないでしょう?」
「あー、なるほど。でも、今の所はお城との取引だけだから、そんなに儲けはないでしょう?そこは心配ないと思うけどな。」
「あら、それは甘い考えだと思うわよ?」
黙って話を聞いていたダリアナが、うふふと笑い、ルークは頷いている。
「そうですね。城で使うとなると、今より噂は広がるでしょうし、きっとすぐに欲しがる人たちが出てきますよ。シズクがあまり乗り気でないのは分かっていますが、こちらとしては、城で独占していると反感を持たれたくはないので、他での販売も考えてくれると嬉しいのですが…。」
「うーん、ならルークに任せるからお城で売るっていうのはどう?」
「さすがにそれは無理です。個人的な商売を城では出来ませんし、私にも仕事があります。それに仮に売ることになったとしても、城まで買いには来ませんよ。」
「?どうして?」
?を浮かべていると、ルークが呆れたような顔をして、言い聞かせるようにゆっくりと話す。
「いいですかシズク、魔王城ですよ?誰でも気軽に入れる場所ではないのですよ?」
「あ、確かにそうだよ。」
私が入れてるからって誰でも入れる場所ではないよね。
まぁ、数の問題はあるだろうけど、作業的には容器に詰め替えるだけだし。でもどうしようかな。自分で店を開くか、あとは、委託販売が出来たりするかな?
うーん、と悩んでいるとダリアナから声がかかる。
「とりあえず、商業ギルドに向かいましょう!ギルドに行けば、必要な物や物件の紹介もしてくれるから、イメージもしやすいわよ。」
「そうだね。まずは、登録しないと始まらないし、行こっか。」