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通信を終え

魔王との通信を()え、ふーと息を吐く。


あー、何かやらかしたとかじゃなくてホント良かった!


「さて…。ということで、明日の夕食は魔王と食べることになりました!」


なるべく明るく声を出し、私の近く。正確には、通信が聞こえる範囲まで徐々に移動し、右隣に座っているウィーナと、狼の姿になり、あたかも聞いていませんよ。と左隣に丸まっているスピネル。それとウィーナに抱えられた状態で連れてこられたクアに向け、ニコッと笑顔を向ける。


そんな私の笑顔に反し、ウィーナはムスッとなっているし、スピネルの尻尾は残念そうに垂れ下がり、クーンと悲しい鳴き声が聞こえそうな目で私を見ている。


「…そんな目で見ないでよ。…明後日はみんなの好きなもの作るから、機嫌直して。ね?」


一瞬ピクッと反応し、好きなものに意識が行ったのか、嬉しそうに笑っている。だが、すぐに意識を戻したウィーナにキッと睨まれる。


「簡単に食べ物に釣られると思わないでよね!」


フンッとウィーナはそっぽを向く。


あらら。どうしたものか…。


と、困りつつも微笑ましくウィーナを見ていると、ベリルが私に近づき、念を押すように確認する。


「シズク。今回は、約束をしてしまったので仕方ないですが、以前魔王には関わらないよう言ったのは覚えていますね?」


「あ、うん。覚えてるよ。」


確かに覚えてはいるけど、ベリルはなんで魔王に対してこんななんだろ?

魔王、ベリルに嫌われる事したのかな?


「ねぇ、ベリル。ベリルは魔王が嫌いなの?」


「はい。」


あはは…。即答か。


「どうして?」


「…理由は、…言いたくないです。」


ふいっと目をそらし、これ以上は言うつもりはないらしい。


そんなベリルに、フローラは微笑ましいとクスクス笑い、ナイトは呆れ気味に視線を向けている。


多分、フローラたちは理由を知ってる。だけど、教えてくれる気はないようだ。


でも、2人の様子からして深刻な感じの理由ではないのかな?


「そっか。でも、何かあったら我慢せずに言ってね! 」


まぁ、ベリルは悩みがあっても、なかなか話してくれなさそうだけどね。




翌日の朝8時頃。朝食と野菜の収穫を終え、これからどうしようかな?と悩んでいるところだ。


ダリアナとの待ち合わせは10時だから9時半に家を出れば間に合うし。

さて、何かする事あったかな?


「シズク。」


うーん、と声に出し悩んでいると、ナイトに呼ばれ顔を向ける。


「ん?何、ナイト。」


「今日だが、俺は家に残ってもいいか?」


「え?いいけど、どうしたの?」


「解体の続きをしたいんだ。続けてやった方が慣れるのも早いだろ? 」


おー、それはありがたいな!


「分かった。なら、ナイトのお昼ご飯、何か用意しとくね。」


「あぁ、ありがとう。何かあれば呼んでくれ。すぐに行く。」


「うん。分かった。」


「シズク、シズク。」


ん?今度はスピネル?


「何?」


「オレも家にいていいか?」


「え?スピネルも?」


「おう!」


「いいけど、スピネルも解体の続きするの?」


「ん?いや、家にいればシズクのご飯食べられるんだろ?」


「え?」


「ん?」


…。と互いに少しの沈黙


「えっと、それが理由なの?」


そう聞くと、とてもいい笑顔で「おう!」と、元気な返事が帰って来た。そんなスピネルに苦笑するも、私の作るご飯を本当に好きだと思ってくれているんだな。と、嬉しくも思う。


「分かったよ。スピネルのも用意しとくね。その代わり、スピネルも解体、もしくは家事をすること!いい?」


「おう!任せとけ!」と、またまたいい返事をするスピネルに、今度は声を出して笑う。


それから、2人のお弁当作りをしている最中のこと。


突然私の前に画面が現れ、5分前のカウントダウンが表示される。


あー、そういえば魚入れたんだっけ。

うーん、5分か。…よし!とりあえず卵焼き作り再開しよ!


と、タイミング悪くフライパンに卵を投入した途端に始まったカウントは放置することにした。


それからもどんどんカウントが進み、10秒前になった頃、私から約1m離れた場所の空中に、50cm程の白い穴が現れた。


そして、いよいよ0になり、中からゆっくりとスライドするように魚が出て来て、私と穴の中間で停止。


ん?そこで止まるの?


と、何もせずいると、穴が消え、消えたと同時に魚が下へと落ち、ベチッと床にあたる。

それを見て「あ…。」っと無意識に声が出た。


そのまま数秒、床にいる魚をじっと見ていたが、動く気配がない。


あれ?動かない。なんでだろ?

…まさか死んでる?


確認のため、魚を鑑定しようと思い、まずは床から台の上に移動させようと手を伸ばし、もう少しというところで魚がいきなり動き出す。


「!?ビックリしたー。」


思いの外ビクッとなり、独り言にしては大きめな声がつい出てしまった。


なんとなく恥ずかしくなり、ソファーの方をチラッと見る。


声を出したからか、みんなは私の方を見ていたようだ。


フローラ、ベリル、ナイトの大人組は、「うん、そうなるよね。大丈夫だよ。」と思っていそうな、暖かい目で微笑み。


ウィーナは「何やってんだか。」と呆れ顔。スピネルは、笑いを堪えているのか、肩が震えている。

クアだけは、『だいじょうぶ?』と本気で心配してくれている。


とりあえず、心配してくれたクアに「大丈夫だよ。ありがとね。」と言い、何事もなかったように魚を拾う。


さて、時間が経てば勝手に出て来ること。どんな感じで出て来るか。ちゃんと生きているか。主に知りたかった事はこれで分かった。動かなかったのは、落ちた際に脳振盪を起こしていたのだろうと考え、とりあえず検証は終了。


うーん、あとは。この魚をどうしておくかだ。昨日獲ってきた魚は、昨日の内に食べたし、1匹だけアイテムボックスにしまうのもなー。よし、半身にして塩焼きにしよ!お弁当のおかず追加だ。

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