どこに行ったの?
黙々と手を動かし、後は揚げるだけ!という所まで準備をして、3人の様子を見に行くと、部位を切り分けている所だった。
「あ、もう少しで終わりそうかな?次も出す?」
「そうですね。まだ時間もありますし、やりましょうか。」
ベリルからそう返って来たので、新たに3匹出して、「頑張って!」とエールを送り、氷の板に置かれた解体済のお肉をボックスにしまう。
その最中、魔石が一緒に置かれている事に気づいた。
「これって魔物の魔石?」
5cm程の魔石を手に取り、なんとなく日にかざす。
キラキラしていて、とてもキレイだ。
「あぁ。使い道はあるだろ?いらなければ売ればいい。」
ナイトの言葉に「そうだね。」と返し、ふと疑問に思ったことを聞く。
「ねぇ、前にも魔物解体したよね?その時は、魔石なかったの?」
「?いや、あったはずだが…。持ってないのか?」
「え?うん…。」
2人して頭に?を浮かべる。いったい魔石はどこに行ったのか…。
「確か肉とかと一緒に置いてたよな?」
話を聞いていたスピネルが、同意を求めるようにベリルに聞く。
「えぇ、そのはずですが…。」
今度は4人で?を浮かべる。うーんと悩むも答えは出ない。
あれ?そういえば…。
「ねぇ、肉とかってことは、他にもあったの?」
「ん?毛皮も置いてあっただろ?ガルムが、売れば金になるって。まぁ、オレたちがやったのはボロボロになったから、ガルムがやった2匹分だけだけどな。」
ボロボロ具合を思い出したのか、アハハと笑っているスピネルに対し、私は増々訳が分からなくなった。
「え?なかったんだけど…。」
「は?…マジで?」
コクン、と頷く私にスピネルの笑いが止まり、シーンと沈黙が流れる。
「…どういうことでしょうか?解体を終えた時には、確かにあったのですが…。」
当時を思い出すように、目をつぶって考えていたベリルだが、あったのは間違いないようだ。それに、ナイトも同意する。
「あぁ。最後に確認して家に入ったからな。」
「ってなると、オレたちがいなくなってから、なくなったってことか?」
「そうなりますね…。」
スピネルが言うように、いなくなった後に、となると誰も見ていないので、考えた所で犯人は分からない。
この森の結界内に入れる、私たち以外の誰かが持って行ったってこと?
……まさか、妖精?…いや、お菓子を持って行くからってそれはないよね。
第一理由がないだろうし…。だって、わざわざ小さな魔石を盗む?
あれだけたくさん、大きな魔石がこの森にはあるのに?
うーん、仕切り直しだな。でも、解体が終わって、ベリルたちが帰って来てからは、私以外誰も外に出ていないよね?
なのに、お肉をしまってる時点で、もう魔石も毛皮もなかった…。
………いや、待てよ。確か。
「…クア?」
ポツリと呟くと、ベリルがそれを拾う。
「クア?クアがどうかしましたか?」
「えっと、私お肉しまいに外に出たでしょ?あの時、クアがいたんだよね…。」
そう、あの時クアがいたのは、お肉が乗っていた氷の板の上だ。
「あー、そう言えばいたな。骨とかいらない部分はクアが食ってくれるから、作業が楽だってガルムが言ってたぜ。」
「そっか。それはよかった…。」
スピネルには悪いけど、若干呆れたようにアハハ…と空笑いし、今現在、骨を食べているクアにチラッと視線をやる。
話には入って来なかったけど、クアは最初から処理係としてこの場にいたのだ。
「…ねえ、クア。」
と声を掛けると、食べるのを中断し、『なーに?』と返事をしながら、私の足元まで来る。私はクアと目線を近くしようとしゃがみ込む。
「あのね、教えて欲しいことがあるんだけど、前にお肉の解体したでしょ?あの時に、毛皮と、これと同じような石があったと思うんだけど、知らない?」
子供に聞くように、ゆっくりとした口調で話、さっき日にかざしていた魔石をクアに見せる。
クアはジッと魔石を見て、『うーん?』と考えているもよう。少しして、『あ!』と思い出したようだ。
『うん、あったよ!』
「どこにあるか分かる?」
『うん?ぼく、たべちゃったよ。おにくいがいは、たべていいぞって、おおかみのおじさんがいってたから。…たべちゃだめだったの?』
自分は悪いことをしたのかと、クアはシュンとなる。
あー、なるほど…。確かにお肉以外の物だね…。
うーん、どうしよう…。これは叱るべき?でも、クアとしては、言われた事をやっただけだし…。………よし、次からはみんな気をつけよう!
「えっと。まぁ、すぐに必要な物でもないし、大丈夫!でも、今度からは食べずに置いておいてくれる?それで、食べていいか分からない時は、誰かに聞いてね?」
『うん!わかった!』
いい子、いい子とクアを撫で一件落着!
私たち以外の何かが居たとかじゃなくて一安心だ!
でも、毛皮はともかく、魔石って食べても大丈夫なのかな?