試したい事
魔王城から帰って来て、4日目。
すっかり日常の生活に戻り、みんなとのんびり過ごしている。この日も夕食を終え、後は寝るだけ!と、ソファーでだらけていた。
でも、いつもとは違い、突然目の前に『通信中 ダリアナ』という画面が現れる。
アイテムボックスなどの確認のために、自分で画面を出すことはあっても、いきなりは初めてで少しビックリしたものの、通信装置を取り出し、「はい。」と返事をしながら、教えてもらったように魔力を流す。
「シズク。今、大丈夫かしら?」
数日ぶりのダリアナの声。でも、なんとなく元気がないような?
「うん。大丈夫だよ。どうしたの?」
何かあったのかと、少し不安になる。
「えっと、それがね。…貰ったシャンプーが、もう無くなりそうなの…。」
え?あれ?もう??
「え?でも…。4種類、全部使ったの?」
1瓶で1週間分はあると思ってたんだけどな…。
まぁ、体調が悪いとかじゃなくて良かったよ。
「それがねー、魔王城に大浴場があるのだけど、そこで使っていたら周りの娘たちが興味を持ってね。その時は、5人くらいしかいなかったから使わせてあげたの。…でも、その後にも何人か入って来て、その娘たちも使ってみたいって言うものだから…。」
あー、なるほど…。
「あー、うん。分かった。えっと、いつ行けばいいかな?」
「明後日はどうかしら?休みだから、約束していた街の案内も出来るわよ!」
「分かった。じゃあ、明後日ね。何時に行こうか?」
「そうね…。10時でどうかしら?昼食におすすめの店、教えてあげるわ!」
「分かった。楽しみにしてるね!…あ、ところで私から貰ったって、誰かに話たりは…?」
「大丈夫よ。誰にも話していないから安心して!」
それを聞いてホッとした。
「そっか、良かった。…あ、そういえば、そっちに行くなら魔王様に連絡しないとだよね?いつなら迷惑にならないかな?」
「そうねー。いつでもいいとは思うけど…。あ、そうだわ!明日会議があるから、私が言っておきましょうか?」
「え、ホントに?ありがとう。じゃあ、お願いしてもいいかな?」
「任せて!それじゃ、明後日ね。おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。」
と、通話を終えた。
うーん、もう少し大きな容器を用意しないとだな…。街にいい感じのがあればいいんだけど…。
この後は、いつも通り皆と寝て、いつも通りの朝を迎えた。
それから、今日はお昼を食べた後、皆で狩りに行った。前のお肉はまだ残ってるけど、「解体の仕方を忘れないうちに練習したい」とナイトが言ったからだ。
とはいえ、ベリル、ナイト、スピネルの3人で事足りるので、クアと私たち女性陣は、湖でのんびり魚釣りをして待つことにした。
まぁ、わざわざ釣りをしなくても、ウィーナに任せれば、あっという間に捕れるんだけどね。水を操れるから、魚を1か所に追い込んで、網で掬うだけでよかったりする…。
でも、人が来ない場所だから警戒心がないのか、割とすぐに食い付くので、釣りをするのも楽しい。
それに試したいこともあったので、ちょうどいい。
試したいこととは、生き物をアイテムボックスに、生きたまま入れられるのか、だ。
前に家を収納した時、特に考えもせず、…いや、実のところ忘れてたんだけどね…。まぁ、それは置いといて!
クアが分裂したスライムが、家の中にいる状態で収納したんだけど、スライム達は何事もなく無事だった。
クア曰く、スライムたちに収納されていた間の記憶はないらしい。
それで今回、湖に来たついでに、魚を生きたまま収納してみよう、という事に。
1度は入ってたし、スライムでも…。と、思わなくはないが、ちゃんと安全か見極めてから試してみようと思う。
という事で、さっそく捕まえた魚を1匹ボックスに収納し、どういう状態なのかを見てみる。
まず、状態は仮死状態になっていた。それから、収納時間は12時間と書かれている。ご丁寧なことにカウント付で。
生きたままでも、12時間は入れておけるのか…。あの日は、朝9時頃に家を収納して、夜の7時前には出してたから、12時間は経ってないな。
12時間経ったら勝手に出て来るのかな?
カウントが減っていく画面を見つつ、どうなるのか気にはなるが、今の時間は2時頃。このまま入れておくと、勝手に出て来た場合、夜中に起こされる事になる。
試しに1度魚を取り出し、また収納しようとすると、今度は出来ず、画面に約5分のカウントが表示され減っていく。
今度は、同じ種類の別の魚を収納してみる。こちらは問題なく収納出来た。
なるほど、生き物は1度出すと、ボックスの中にいた時間分、待つ必要があるのか。魚事態も、収納前と何も変わらず元気だし、問題はないかな。
……でも、これってどうなんだろ…。流石にゲームでこんな設定なかったよ…。
うーん。…………まぁ、いっか!生き物を収納なんて、そうそうしないと思うし!
とりあえず、12時間経ったらどうなるかだけ試すとして…、夜の8時〜9時の間に収納しとけば勝手に出て来ても大丈夫かな?
そう自己完結し、狩り組が戻って来るまで釣りを再開して時間を潰す。
ベリルたちとわかれて30分くらい経っただろうか?少し遠くから「おーい!」と呼ぶ声が聞こえ、そっちを見ると、スピネルが狼の姿で駆けて来るのが見えた。
あれ?スピネルだけ?2人はどうしたんだろ?
近くまで来たスピネルは、嬉しそうに尻尾を振っているので、何か問題が起きた訳ではなさそう。
「スピネル、お帰り。2人は一緒じゃないの?」
撫でて欲しそうにしているスピネルを撫で、そう聞くと「あ!」と何かを思い出したもよう。
「それがさ、ここまで持って来るのは大変そうだから、シズクに来てもらおうってなってさ。」
ん??
「えっと、それってどういう?」
「ま、来れば分かるって!行こうぜ!」
スピネルに急かされ、釣り竿などをアイテムボックスに片付け、背中に乗せてもらって目的地まで向かう。
着いた場所には、ベリルとナイト。それから、魔物や動物で出来た山があった…。おそらく20匹以上はいると思う…。
「………ねぇ、獲り過ぎじゃない?」
「「「……………。」」」
自分たちでもそう思っていたのだろう。無言の3人は少し気まずそうだ。
「…でもさ、アイテムボックスに入れとけば大丈夫だろ?」
「まぁ、それはそうだけど…。」
スピネルの言う通り、時間の進まないアイテムボックスに入れておけば、傷むことはまず無い。
でもねー…。正直、死骸をそのままっていうのは抵抗があるんだけど…。…仕方ないか。何より命を無駄には出来ない。
「このまま、ほっとく訳にもいかないからね。それじゃ、帰ろうか?」
魔物たちをボックスに入れ、家路につく。帰ってから、3人は解体を始めた。まずは、1人で1匹を解体して、時間があれば、次を出すことになっている。
3人が頑張ってる間に、私は魚を捌き、夕飯の支度。ちなみに夕飯は魚のフライ。タルタルソースをいっぱいつけて食べようかな!