久々のお昼寝
話が終わり、今度こそ森に帰ることが出来そうだ。
あ、そうそう。他の幹部たちへの挨拶は、城にいない人もいるし、2日間いなかったことで、仕事が貯まってる人もいるとダリアナに聞き、邪魔をするのは悪いから、また今度ということにした。…貯まっているのは、ダリアナも同じみたいだけど…。
「それじゃ、帰りますね。お世話になりました。」
2人にお辞儀をして、獣姿のナイトに乗る。
「あぁ。」
「またね。連絡するわ。」
と、2人の言葉を聞き、「またね。」と手を振る。それを合図に、ナイトは空へ浮かび森へと向かう。振り返り2人を見ると、ダリアナが手を振ってくれていた。私も見えるようにと大きく振り返す。2人が見えなくなった所で振るのをやめ、ナイトに話しかける。
「待たせてごめんね…。でも、便利そうな物も手に入ったし!この世界じゃ、電話の変わりみたいだけど。……他にも向こうと違う所がいっぱいあるんだろうな…。色々知っていかないとね…。」
ここが異世界ってことは、最初から分かってる。でも、元の世界と違う所を見つけると比較しちゃうし、どうしても向こうの生活を…、家族を思い出してしまう…。……でも、いつまでもしんみりしていられない。早くこの世界に馴染まないとね!
「…そうだな。でも、ゆっくり知っていけばいい。…それに、無理にこちらの世界に合わせる必要はない。シズクは、シズクのしたいようにすればいいんだ。」
ナイトの諭すような言葉にビックリした。今はテレパシーは使っていないのに、私の考えが分かったみたい…。…でも、おかげで肩の荷が少し下りた気がした。
「ありがと…。」
ナイトに感謝が伝わるようにと、毛並みをゆっくり撫でる。
ついさっきまで、寂しいとか、頑張らなくちゃとか考えていたけど、ナイトの言う通り、ゆっくりやって行こうって思える。時間はたくさんあるんだしね!
家に着くまで約30分。その間は、この数日の話や他愛ない話を皆としながら湖に帰った。
着いてまずやることは、やっぱり家。アイテムボックスから出し、「ただいまー。」と中に入る。
ほー、と和みたい所だけど、お腹も空いたしご飯を作らないとね!
うーん、簡単に親子丼にしようかな。…って、鳥型の魔物とニワトリの卵で、親子って言えるのかな?他人丼?……まぁ、いっか!
お昼を簡単に済ませ、リラックスタイム。ソファーに横になり、狼姿のスピネルに顔を埋め、もふもふを堪能。家族だけの時間が戻って来たと実感する。
誰にも気を使うことなく、思う存分だらけられるぞー!
そう意気込み、しばらく横になっていると眠気が襲って来た。でも、それに抗うことなく眠りにつく。
すーすーと静かな寝息が聞こえ、それに気づいたウィーナは、小鳥の姿でスピネルの頭に着地し、シズクの様子を窺う。
「寝ちゃったのね。」
起こさないように声を潜め、「仕方ない子ね。」と呆れたように小さく笑う。
「気が抜けたのでしょう。無理もありません。」
ベリルも同じく声を潜め、「良く頑張りました。」と言うように、暖かい目をシズクに向けている。
そこに、ふわっとシズクに布団がかけられ、ベリルの視線が布団を持って来たフローラに移った。フローラは、シズクの頭を一撫でし微笑んでいる。
皆、この数日シズクが無理をしているのでは…。と心配していた。この世界に来て生活環境が変わり、やっと慣れて来た頃に魔族たちの相手。それに加え、家のこともしていたのだ。精神的、肉体的に疲労が来ていてもおかしくはないだろう。…ゆっくり休んでくれた方が自分たちも安心出来る。
静かで穏やかな心地好い時間。こんな時間がずっと続けばいい…、と願わずにはいられない。
眠りに落ちたシズクが目を覚ましたのは、約2時間後。
体を起こし、今は何時?と時計を見ようと視線を動かすと、向かいのソファーに腕を組んで寝ているナイトが視界に入る。『ナイトが昼寝なんて珍しいな…。』と思いながら、他の子たちのことも気になり、辺りを見回す。
私の枕になっていたスピネルはまだ眠っていて、ウィーナもスピネルの頭の上で。ベリルは私のいるソファーの下で、狐の姿で丸まって。クアはベリルに寄り添い眠っている。
微笑ましいと思うけど、もし気付かずに下りていたら踏んでいたかも知れない…。
気づいてよかったよ。ホントに…。
そう1人で苦笑していたが、ふとフローラがいないことに気付いた。小さくなってどこかにいるのかな?と思い探したけど、見える範囲にはいない…。
…どこ行ったんだろ?…探しに行く?フローラのことだから、何かあったら連絡くれると思うし、心配はいらないと思うけど…。…それに、息抜きにどこか行ってるとかなら邪魔になるよね…。
さて、どうしようか?と迷っていると、ガチャッ、と玄関の扉が開く音が聞こえた。目を向けるとやっぱりと言うべきか、そこに居たのはフローラ。
私と目が会うと「おはようございます。」とふわりと笑う。それに、私も「おはよう。」と返す。
「起きていたのですね。ゆっくり休めましたか?」
私の座るソファーに近づき、小さな声で話をする。
「うん。枕がよかったからね。ぐっすりだったよ!…ところで、フローラはどこ行ってたの?散歩?」
そう聞くと、首を横に振り、「いいえ、これを。」と、帰って来た時に持っていたカゴを両手で持ち、胸元まで持ち上げる。そのカゴは、闇の精霊王へのお礼にお菓子を入れておいたカゴだ。
「妖精たちがお返しを持って来てくれたので、受け取っておきました。」
見せてくれたカゴの中には、木苺がいっぱい入っていた。
お礼のお菓子が木苺に変わって返って来たのね。…お返ししてくれたってことは、気に入ってくれたのかな?そうだったら、嬉しいな!
「これだけあったら、いろいろ作れるね。今度はちゃんと妖精たちの分も作らないと。」
何を作ろうかな~と、気分が上がる。でも、作るのは明日にして、今日はゆっくりしようとアイテムボックスに収納。
結局、この日は1日だらだらと過ごした。
あ!ウィーナリクエストのプリンは、夕飯のデザートにちゃんと出したよ。
帰ってから機嫌はよくなっていたけど、喜んで食べてくれると作りがいがあるね!