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通信装置 ②

他にも、通話中は防音の結界が張られるらしく、声が聞こえるのは直径1mの範囲内の人だけとか、収納空間に入れていても、連絡があれば違和感を感じるから分かるとか。

それから、上の魔石と回りの小さな魔石は、同じ石を削っていて、他の装置に小さな魔石を嵌めても使えないとか。もし石を無くしたり、取られたりしても、本体がないと連絡は出来ないみたい。まぁ、ただの魔石としては使えるけどね。


「どうして他の装置じゃダメなの?」って聞いてみたけど、「そういう物だから」って言われただけ…。そもそも、この装置自体、なんで声が届くのか分かっていないらしい。

でも、昔からあるようで、ずーーっと前の魔王が女神に指示されて、作るよう職人に言ったとか。


あれ?でも…。


「あの、1つ聞きたいんですけど。…魔王様に貰った魔石に魔力を流せば繋がるんですよね?なら、この装置がなくても、ダリアナの魔石に直接魔力を流せばいいんじゃないですか?」


「…私のように、魔石を作れる者なら、それだけで構わない。…だが、前にも言ったが、作り出せる者はほとんどいない。…それに、違いもある。」


「何が違うんですか?」


「装置では、声を耳で聞く。だが、私の魔石の場合、頭に直接声が響く。…装置と違い、声を出さずとも、会話が出来る。」


えっと、つまりテレパシーみたいなものかな?


「なるほど。この装置がないと、[色んな人]と連絡が取れないってことは分かりました。…この世界って、これが主な連絡手段なんですか?」


そう聞くとダリアナが「いいえ。」と首を振り答えてくれた。


「主には手紙とか、伝言になるわね。…実を言うと、この装置わりと高価なの。だから、持っているのは裕福層や、仕事で必要な人とかね。」


え?高価、だって?…。


「……えっと…ちなみに、おいくら?」


「そうね。これだと、…金貨8枚くらいかしら?」


金貨8枚?…えっと………、80万円!?


「え!?そんなにするの!?」


この世界に来て1番驚いたかも知れない…。この小さな装置が80万円もするなんて…。

呆然と装置を眺めていると、ダリアナの苦笑する声が聞こえた。


「もちろん、これより安い物もあるわよ。連絡出来る人数は少なくなるけれど。…でも、仕方ないのよ。魔石は大きな物ほど貴重だし、倒す魔物のランクも上がるから。」


「?魔物のランクって?」


「魔物にはね、上からS・A・B・C・D・E・Fってランクが付けられているの。主に魔物の強さで決められているけど、強い魔物ほど体内に大きな魔石を持っていることが多いのよ。」


ゲームなんかでよくある感じかな?体内に魔石を持っているから、魔物も魔法を使えるってやつ。でも、魔法を使えるのは、魔族やヒューマンも同じなんだよね…。


「ねぇ、魔物の体内に魔石があるなら、私たちにもあるのかな?…魔法使えるし…。」


昔から思っていた素朴な疑問。だいたいは[魔物から取れる物]。でも、魔物が魔法を使える理由が魔石なら、私たちの中にあっても不思議じゃない。でも…。


「え?…いいえ。そんな話は聞いたことないわよ?」


一瞬、何を言ってるの?とキョトンとなったダリアナ。でも、あまり考える素振りもなく、私の言葉は否定された。


やっぱり、か…。なんで、なのかな?

…1番の可能性は、争いの元になるから、とか?…ヒューマンや魔族を殺して魔石が手に入るなら、わざわざ危険な魔物の相手をしなくてもよくなるし、探しに行く手間も省ける…。魔物か、人か、どちらが楽に魔石を取れるだろうか?

自分の考えにゾッとした。それと同時によかったと思った。魔石欲しさの人殺しは、この世界にはないと分かったから…。


「…どうしたの?大丈夫?」


「あ…。うん、大丈夫だよ。」


長く考え込んでいたみたいで、ダリアナは心配そうに私の頬に手をそえる。その手に手を重ね、安心させるようにニコッと笑えば、笑い返してくれ、ほのぼのとした空間が広がる。


そして、大事なことを思い出した。


「あ、これ返すね。」


そう言って、ダリアナに装置を渡そうとしたんだけど…。


「あら?返す必要はないわよ?森で暮らすのなら、これがないと連絡できないもの。…それに、連絡できないとあれが無くなった時に困るわ…。」


あれ?…あれって、もしかして……、シャンプーとかのことか!?


「…あー、はい…。シャンプーもろもろね。分かった。…でもお金は払うよ。さすがに貰うのは悪いから…。」


そんな理由か…。と、若干呆れながらも、アイテムボックスの空間に手を入れ、お金を入れている布袋を取り出す。その袋から、とりあえず金貨8枚を出そうと中を探った。


ちなみに、この世界にはオシャレな財布はなく、ただの布袋にお金を入れている人が多い。ギルが支払いをした時にそれに気付き、回りを見てもそうだったから、私も布袋を買っておいた。


「お金はいらないわよ。…でも、どうしてもって言うなら、ルシエルに渡して頂戴。連絡を取れないと不便なこともあるかもって、余っていた装置を渡してくれたのはルシエルだから。」


「え?ルシエルさんが?」


そっか…。あのテンションには驚いたし、正直身の危険を感じたけど…。でも、すぐ謝ってくれたし、こうやって考えてくれてるってことは、ルシエルはいい人なんだろうな…。よし、ちゃんとお礼言わないとね!


「でも、支給品の余りだから、ルシエルがお金を出している訳ではないのだけどね。」


ふふっと笑いながら、ダリアナはそう言った。


ん?…えっと、つまり、国から通信装置が支給されていて、その余りを持たせてくれたってことかな?……あれ?それっていいの?城の備品ってことは…国の物になるんじゃ…。そして、今ここにその国のトップがいるんだけど…。


ちらっと魔王に目を向けると、バチッと視線があって、少しビクッとした。


「…どうした?」


小さく跳ねたのが分かったようで、不思議そうに魔王が声をかける。


「あ…。いや、えっと…。…これ、元を正せば国の物ってことですよね?…私が持っていていいんでしょうか?」


「?余っている物は使えばいい。貰っておけ。」


軽いと言うか、何と言うか…。特に気にもしていない…。

というか、なんでそんなことを聞くのか理解できないといった感じ。

余ってるからって、こんな高価な物を「わーい、ありがとう!」って受け取れないでしょ!…金銭感覚が違い過ぎるのかな?


「でも、こんな高価な物貰えませんよ…。だから、お金は払わせてください。」


もし壊したりしたら嫌だし、買い取ってしまえばそんな心配しなくてもいいしね。気持ち的にも楽だ!


そんなことを内心思うも、魔王は首を横に振る。


「気にするな。…それに高価と言うが、これより高価な物を渡しているだろ?」


はい??…これより高価…?何貰ったっけ?………まさか!


「……魔王様の魔石?」


「あぁ。」と、頷く魔王。


私は、貰った魔石と装置を比べるように交互に見る。

小鳥の形に加工され、大きさは長い所で5cmくらい。確かに細かい加工がされている分高くなるだろうし、闇の魔石は貴重って話をしたな…。


……よし!やっぱり魔王様の魔石は返そう!それで、装置のお金を払えばひとまず悩まなくてすむよね?


「魔王様、魔石は返します。連絡用に渡してくれたんですよね?だったら、装置があれば大丈夫そうですから。それと、装置のお金はちゃんと払います。その方が気兼ねしなくていいので…。」


「…分かった。だが、条件がある。」


魔王は差し出した魔石を受け取った。そして条件とは、互いに装置の魔石に魔力を込めること。つまり、魔王とも装置で連絡が取れるようになった、ということだ。ちなみに、魔王が込めた魔石の色は黒…。ただ、自分が作り出した物ではないから、前みたいに私の位置が分かる、ということはないみたい。

それと、お金はダリアナに渡して、財務のトップであるルークに渡すと言うことで話はついた。

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