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通信装置 ①

何はともあれ、これでやっと帰れる!…あ、でも魔王にしか挨拶してないのは、心残りだな…。

幹部たち、とくに私の家に来た面々に、戻って挨拶した方がいいかな?

でも、仕事中だったら邪魔になるし、城にいない可能性もあるよね…。

…何より、また戻るって言ったら、ますますウィーナの機嫌が悪くなりそう…。どうしようかな…。


「よかった!まだいたわね!」


「?…ダリアナ?」


声の方に目を向けると、ダリアナが走りながら手を振って近づいて来るの見えた。


徐々に距離を詰め、ダリアナは私たちの近くで足を止める。走ったことで、少し息を切らしているようだ。ハァーハァーとゆっくり息を吸い、呼吸を整え、話始める。


「間に合ってよかったわ!魔王様が裏庭にいるって聞いたから…。帰っちゃうと思って急いで来たのよ!」


「見送りに来てくれたの?」


そう聞くと、ふふっと、何かを(たくら)んでいるかのようにダリアナは笑う。


「そうね。それもあるけど、渡したい物があって来たのよ。」


「??渡したい物?」


「それはね…、これよ!」


そう言って、突き出された手には、5cm程の四角い台に、台より一回り小さい透明な球が乗っている物があった。


「?これ何?占いでもするの?」


何に使うものか分からず首を傾げると、ダリアナが「え?」と固まる。

多分、ダリアナの計画では、これを見た私は喜ぶ予定、だったのだろう…。

うん…、ごめん!


「…えっと、ダリアナ?…なんか、ごめんね?」


サプライズが失敗し、ダリアナはガックリと肩を落としている。


「…いいのよ。知らないのなら仕方ないわ…。これはね、通信装置…、連絡を取り合うために使う魔道具なのよ。」


そうダリアナは教えてくれ、私に手渡す。

よく見ると、台には4辺すべてに丸く加工された1cm程の石が5つずつ、サイコロの5の目のように()められている。全部で20個。ほとんどが透明な石なのに、なぜか1つだけ赤い石があった。


「どうして1つだけ赤いの?」


「それはね、私の魔力を込めたからよ。」


その答えに、またも首を傾げることになる。


「魔力を込めたって、どういうこと?」


「あら?誰も話していなかったかしら?…魔石の使い方は、昨日聞いていたわよね?」


「うん。自分の魔力を魔石に流して発動させるんだよね?」


「そう。でも、元から魔石に込められている魔力は無限ではないの。使い続ければ、やがてはこの魔石みたいに透明な物になるのよ。」


「へぇー。じゃあ、この通信装置の石は全部、(から)になった魔石ってこと?」


「えぇ。でも空になっても、魔力を溜めることで、また使えるようになるわ。」


ふむふむ。つまり魔石は再利用出来るってことね!


「それで、これはどうやって使う物なの?」


手に持つ装置に、再び視線を向け聞くと、待ってました!と言わんばかりにダリアナは目をキラキラさせている。


「それは、使ってみた方が早いわね!まずは、…この魔石にシズクの魔力を込めてくれる?」


ダリアナは自分の通信装置から取った透明な魔石を私に渡す。


「えっと…、どうやって?」


「あ…、そうよね。そこからなのよね…。なんて言えばいいのかしら…。魔法は使えるわね?」


「うん。」


「なら、魔力の流れは分かるかしら?魔力を手に集中させて、魔石に注ぐようにイメージしてみて。込める属性はなんでも構わないから。」


流れ?意識したことないけど…。まぁ、やってみるか!


流れと言うことで、イメージしやすいのは水の属性。魔法を使う時は、どういう魔法かをイメージして使っているけど、その手前。ちゃんと形になる前の段階を想像してみる。

しばらくすると、身体中に薄い膜が張ったような違和感を感じた。それをゆっくりと手の平に集め、ある程度集まったら魔石が吸い込んでいるようにイメージする。


「もういいわ。見てみて。」


ダリアナの声に目を開ける。手を見ると、さっきまで透明だった魔石が青く染まっていた。


「ホントに色が変わってる…。」


自分がしたことなのに、現実見がないというか…。なんだか不思議な感じがする。


「正直、もっと時間が掛かると思っていたわ…。魔法を使うのとは、少し違うから、始めてで成功する子って中々いないのよ。シズクはすごいわね!」


よく出来ました!と、ダリアナは私の頭を嬉しそうに撫でる。

子供の成長を喜ぶ母親みたいだ…。でも、褒められて悪い気はしないな!


「さてと、次は…。この石を私のに戻してっと…。」


なでなでが終わり、私の手にある魔石をひょいっとつまみ回収すると、自分の装置にはめ込む。


「さぁ、準備出来たわよ!実際に使ってみましょうか。」


とは言ったものの、このままでは近すぎるため、離れて試すことになった。

姿は見えるけど、声は聞き取りづらい位置まで離れ、ダリアナが始める合図に手を振る。


魔力を込めているのだろう、ダリアナの装置が光っているように見えた…かと思ったら、『聞こえる?』と声がした。手元を見ると、はめ込まれた赤い魔石だけが光っている。


「上の魔石に魔力を流してみろ。」


おー!と内心感激していると、実はまだ居た魔王がそう言った。

とりあえず、言われたように魔力を流すと、上の魔石が光、赤い魔石の光が弱まる。それに焦り、大丈夫なのかと魔王を見ると、それでいいと頷く。


『ふふっ。大丈夫そうね。』


あ、ダリアナに返事してなかった…。


「うん、大丈夫!ちゃんと聞こえるよ!」


返事を忘れていたことに焦り、慌てたように返す。でも、魔王との会話を聞いていたダリアナはクスッと笑う。


『そんなに慌てなくても大丈夫よ。…それじゃあ、1度切りましょうか。次はシズクから繋げてみて。」


ダリアナがそう言うと、弱く光っていた赤い魔石の光が完全に消えた。ダリアナが魔力を流すのを止めて、切れたようだ。私も魔力を流すのを止め、どうやったら繋がるのかな?と頭を(ひね)る。


「…何をしている?」


装置を裏返したり、クルクル回して全面を見ていると、魔王から声が掛かる。


「えっと、どうしたら繋がるのかな?って…思ってですね…。」


「…上の魔石に魔力を流し、相手の顔を思い浮かべるだけでいい。」


あ、そうなんだ!難しく考えることなかったんだね!


魔王が教えてくれたようにやってみた。魔力を流し、ダリアナを思い浮かべる。すると、さっきと同じく、上の魔石が光、ダリアナの魔石も弱く光り出す。


「ダリアナ?聞こえる?」


『えぇ、聞こえるわよ。使い方はこれで分かったわね?…他にも教えることはあるけど…、1度切って近くで話しましょう。切る時は、魔力を流すのを止めればいいわ。』


「分かった。それじゃ、切るね。」


「えぇ。」と了承する声を聞いて、魔力を流すのを止め、ダリアナを見ると、こっちに歩いて来るのが見えた。私たちも歩を進め、近くまで来るとダリアナが詳しく話してくれた。


「まず、最初ね。シズクが魔力を流した時、私の魔石の光が弱まったのは、貴女の魔力が主に使われていたからよ。…魔力を流さなくても使えるけど、その場合、通話できるのは…、そうね…2時間分くらいかしら。魔力を流すことで4分の1程度の消費で済むわ。」


それでも、8時間分か…。あまり長話しは出来ないな…。


「あと、魔力が減ると、魔石の色が段々薄くなって来るの。透明になると、補充してもらうまで連絡は出来なくなるから気をつけて。」


他にも話してくれたけど、まとめるとこうだ。


魔力を込めた魔石を互いに交換することで、相手と連絡がとれるようになり、どちらか片方が魔石を持っていても、意味はないこと。

電話と違い、知らない人からかかって来ることはない、ということだ。

あと、装置の大きさなどで変わるけど、石の数だけ、私の場合20人。交換することで話が出来るようになる。

それから、同じ人の魔石を持っていれば、複数での会話も出来るみたい。

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