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お邪魔します。③

ラーナが何を思って私を引き止めているのか分からないまま。

結局お茶のおかわりを貰い、お菓子をつまみながら時間を潰す。


魔王は、私たちのやり取りが始まる前にテーブルから仕事机に戻り仕事を再開し黙々と書類を終わらせていく。


やることもなく、手持ちぶさたな私に、「やはり、本を持って来ましょうか?」と再度ラーナは聞いてくれたけど、「途中までしか読めなかったら続きが気になるから…」と断った。

それに持って来てくれた本が私の趣味に合うかは分からないし…。それなら、いっそ自分で選びたい!…けど、部屋から出るならそのまま挨拶して帰るよ。うん。また階段を上がるのも面倒だしね…。でも、今の感じだと帰るのは却下されそう…。


でもね~…やっぱり暇だー!。あー、ラーナと話したいけど、こんなに静かだと、小声で話しても邪魔になりそう…。

魔王の仕事が終われば、この退屈な時間も終わると思うけど…。早く終わらないかなー。


と、思いながらお茶を飲みつつ、時折ちらちらと魔王を盗み見る。

この部屋に来て30分は()っただろうか?束で置かれていた書類は後数枚で終わりそうだ。


さらに10分程経った頃、ようやく魔王の手が止まった。


「お疲れ様でした。午前の仕事は以上です。午後からは会議がございますので、お忘れになりませんよう、お願いします。」


仕事を終えた魔王にベトラーが労いの言葉をかけ、次の予定を話す。


「…分かっている。」


それに、うんざりといったように答える魔王。でも、いつもの事なのか、ベトラーはそんな魔王に何も言わず、終わった書類を確認している。


そして、魔王は立ち上がり、私の方へ向かって来る。

部屋の中の短い距離。魔王が足を止めるのに、5秒とかからない。


私は椅子から立ち、魔王の出方を待つ。


「…待たせたな。」


待たせていた事に対して特に悪びれた様子はなく、じっと私を見ている。

私が何か言うのを待っているみたいだ。


でも…はい!待ちました!…って、素直に言うわけにいかないからなぁー。


「いえ、お疲れ様です。」


こういう時はとりあえず笑顔で労っておこう。そんでもって、声を出した流れで帰る胸を伝えよう!


「それでは、私たちはそろそろ帰ります。お世話になりました。」


お辞儀をして、これまたいい笑顔を貼付ける。


「…帰るのか?」


魔王は変わらず私をじっと見たまま。だけど、少しだけ眉間にシワが寄っている。何か不快にさせただろうか?


「はい。帰りますよ?」


そう答えれば、魔王は口元に手をあて何かを考えている。


「……昼食を用意させる。食べて帰るといい。」


昼食…今は11時過ぎ…。歩かず、ナイト達の誰かに乗せてもらえば、帰ってからでも、お昼ご飯と言える時間に食べられると思うけど…。

何より、あの子達…特にウィーナは早く帰りたがってるし…。うん、ここは断ろう。


「…えっと、ごめんなさい。なるべく早く帰って、あの子達を落ち着かせてあげたいので…。今日は遠慮させてください。」


「……そうか…。」


気のせい、だろうか?表情は変わらず無表情なのに、魔王が寂しそうに見える。


「あの…。次、次に来た時に…、その…。」


一緒に食べましょう?…誘ってくれますか?

あれ?なんて言えばいいのかな?


それに、魔王は「食べて帰るといい」って言っただけで、一緒にってつもりじゃないかも…。あー、どうしよう…。


私があたふたしていると、ポツリと魔王が呟く。


「次…、があるのか?…」


「え?…えっと、またお邪魔しようと思ってますけど…。……ダメ、ですか?」


「いや…、構わない。…次、だな。」


目を細め、フッと小さく笑う魔王。今度はなんだか嬉しそうに見える。


「はい。次、です。」


雰囲気の柔らかい魔王に私も笑顔になる。


ベリルには魔王に関わらない方がいいって言われたけど…。私もそう思うけど…。

でも、この人にも寂しい思いはさせたくないな…って、そうも思うの。

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