表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/92

お邪魔します。②

ソファーに座った魔王は優雅にお茶を飲んでいる。お菓子や軽食には手をつけないので、お腹は空いてないみたいだ。


しーんとした空間。誰も口を開かず、聞こえるのはカップのカチャッと鳴る音、服の摩れる音や息使いくらいだ。


座ったという事は仕事が一段落したのかな?

……さて、魔王は何も話さないし、どう切り出すべき?スパッと「お世話になりました。さようなら!」…って帰っていいかな?

でも、座ってすぐに帰るのも変な気がするし…。うーん、何か話をして頃合いを見て帰るのが無難かな?…でも、何を話せば…。うーん…。


「…えっと。……いい天気ですね。」


「?…あぁ。」


魔王は私に目を向けたが、急になんだ?と疑問を浮かべているようだ。


困った時にはまず天気の話から。…と思ったけど、やっぱりと言うべきか会話にならない…。次は…。


「…えーと。……あ!仕事!お仕事大変そうですね!魔王様ってどんな仕事してるんですか?」


……今の私の笑顔は多少引きつってるだろうなぁ…。仕方ないじゃないか。沈黙は辛い。というか、いたたまれない…。


魔王は魔王で、なぜそんなことを聞く?と、私の心境を理解してくれないし…。

いや、そもそも気まずいとか思ってないのか?私はいないものと思われてるんじゃ…。……まさか、ね?


……でも、そうだったら寂しいな…。


そう思っていたら、無意識に言葉が出た。


「……なんで私を呼んだの?」


「…どうした?何が言いたい?」


え?言いたいこと?……あれ?…さっきの、声に出てた?


カップに向けていた視線を上げると、魔王と目が合う。

その目は思いのほか真剣だった。

聞いてやるから言え。そう言っているようだ。


あっ、と言葉に詰まる。言いたいことがあるわけじゃないし、魔王が私を呼んだ理由なんて、シアに頼まれているから様子見、もしくは監視的な意味合いだろうし…。


……素直に寂しいと思った、なんて言えないし…。

そんなこと言ったら絶対、は?ってなるじゃん!


「あ、いや…。えっと…。」


何て言えば…。…そもそも、なんで寂しいなんて思ったんだろ?

反応が薄いだけで、無視なんてされてないし。気まずくは思っても、寂しいと思うような事なかったはずなのに…。


自分の思考に混乱した。目を泳がせて必死に考えるけど、うまい返しが見つからない…。



コンコン。


言葉にならない声を(はっ)していると誰かが扉をノックした。

その音に魔王の視線が外れ、少し肩の力が抜ける。


「陛下。追加の書類と資料をお持ちしました。」


声からして訪問者はベトラーのようだ。

魔王は、はぁーとため息を吐き、不機嫌そうに許可を出す。


「……入れ。」


「失礼します。」と入って来たのはやっぱりベトラー。

私たちの存在に気づき嫌そうな顔をするも、すぐに魔王に視線を向け、持っていた紙をテーブルに置く。


「こちらが追加の書類です。こちらにはサインを。それとこちらにも目を通しておいてください。」


真面目に仕事の話をしている2人。

話が逸れたことで緊張から解放された。安心したからか喉の渇きに気づき、少し(ぬる)くなったお茶を飲みほし、ほーと小さく息を吐く。


空になったカップをテーブルに戻すと、ラーナが「おかわりをお入れしますか?」と聞いてくれた。


少し悩み、首を横に振る。魔王たちの邪魔にならないよう、ラーナに聞こえるくらいの小さな声で話した。


「ありがとう。でも、もういいかな。魔王様も忙しいみたいだし。そろそろ帰るよ。」


そう言うと、ラーナは困ったと言うように笑い、眉を下げる。


「…もう少しゆっくりされてはいかがですか?お菓子もまだありますよ?…お暇でしたら何か…。あ、そうです。本をお持ちしましょうか?」 


そして、どうやら私を引き止めようとしている…。なぜ?


「ううん、本はいらないけど…。」


「…そう、ですか…。」


断るとしゅんと落ち込むラーナ。立っていた耳もへにゃりと垂れる。


えっ!?私、何か悪いこと言った!?そんなに落ち込むこと言った!?


「えっと、なんで落ち込んでるか分からないけど、元気出して!」


「…では、もう少しこちらに居てくださいますか?」


「え?それ、何の関係があるの?」


?を浮かべそう聞くと、立ちかけていた耳がまた下がる。


「あ…、分かったから!居るから!落ち込まないで!」


「…ふふふっ。はい。ありがとうございます。」


笑顔のラーナにホッとする。…が、いったい今のやり取りは何だったのか…。もしかして…はめられた?…でも、そんなことして何の意味が?


「ねぇ?どうして、引き止めるの?」


「さぁ?なぜでしょうね?」


分からないから聞いているのに、ラーナは微笑ましいというように笑いかけるだけで、答えてはくれない。

約2ヶ月ぶりの更新です。どんどん更新が遅くなっている…。でも頑張って書きたいという気持ちはあるので、これからも読んで頂けると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ