また明日。
魔石について聞いた後、魔王とダリアナ以外の3人に簡単に家の案内をした。
あ、私の部屋は見せてないけどね。魔王たちにも見せてないし。
今は、みんなでソファーに座りお茶を飲んでいるところだ。
でも、1つ気になることがある。何かというと、フローラたちがまだ影から出て来ないのだ。
家に入って、そろそろ1時間。なぜ出て来ないのか分からない。
『みんなどうして出て来ないの?』
クアの声が頭に直接響くように、私と契約している子たちは声に出さなくてもテレパシーで話が出来る……のだけど。
『……………。』
返答無し。
『おーい、誰か答えてよ。…言ってくれないと分からないよ?』
『……。私たちのことは気にしないで下さい。皆さんがお帰りになった後に出ますから。』
お!フローラが答えてくれた!…けど、なんで帰ったらなんだろ?
ひとまず、どうすれば出て来てくれるのか分かったから、一安心かな?
『…分かった。魔王たちが帰ったら話そうね?』
『はい。』
フローラが返事をし、1度話は終わり。
もう案内もないので、そろそろ魔王たちにはお帰り願おうか。
…とはいえ、どう言えばいいかな?
「…あー、そろそろ夕飯時ですね。」
おい、もっといい言い方があるだろ、私!夕食に誘ってると思われるかも…。
「あら、もうそんな時間なのね。長いしすぎたかしら?」
ダリアナが、ちらっと時計を確認した。
「そうだな。夕食はどうする?城で食うか?」
ギルは私に城で食べるかと聞いているようだ。
「ううん、私はあの子たちと食べるから。」
「昼みたいに一緒でもいいぞ?」
断る私に、昼はそうしただろ?とギルは軽く首を傾げる。
「ありがとう。でも、今日は疲れちゃったし、すぐに休みたいから。」
またも断ると、ギルは「…そうか。」と、少し残念そうに呟く。でも、すぐに明るく笑った。
「まぁ、今日だけってわけでもないからな。じゃあ、そろそろ帰るか。」
ギルの言葉にダンが頷く。
「そうじゃの。長いしすぎても迷惑なだけじゃからな。」
賛同するダンに、えー、もっと居たいのに…。と残念そうなルシエル。
「うーん、色々話を聞きたいんだけど…。」
1人でも居座りそうなルシエル。そんなルシエルにルークは言い聞かせるように言った。
「話ならいつでも聞けますよ。[…長い付き合いになりそうですし。]今日は大人しく帰りましょうね?」
帰りましょうね?と疑問文なのに、疑問文になっていない。
ニッコリと、ルシエルに笑顔を向けるルークは、拒否は許さないと言っているように見える。ルシエルも分かっているのか、大人しく頷いている。
「…分かったよ。」
途中、ルークは私に視線を向け、なぜか笑っていたけど、いったい何だったんだろ?
よく分からないけど、とりあえず笑い返しておく。
みんな帰ってくれそうで内心ホッとしていると、視線を感じた。
見ると魔王が私を見ていた…んだけど。何も言わない。
「…えっと、何ですか?」
出来れば早めに帰ってほしいので、こちらから聞いてみる。
「明日、帰る前に城に来い。勝手に帰ることは許さない。」
そう言うと、魔王は立ち上がりドアの方へ近づく。
許さないって言われてもな…。まぁ、お世話になったんだし、何も言わずに帰るなんて非常識なことするつもりはないけどね。
「はい。えっと、どこに行けばいいですか?」
私の問いに足を止め少し悩んだ後、私に振り向き答える。
「…ラーナを迎えに行かせる。それまでは家にいろ。」
「分かりました。それじゃ、また明日ですね。おやすみなさい。」
まだ、寝るには早いけど、今日はもう会わないだろうから、おやすみの挨拶もしておく。
「…あぁ。おやすみ。」
一瞬、懐かしむように目を細め薄く笑った魔王は、挨拶を返し、さっさと出て行ってしまった。
それを見届けて、ダリアナたちもそれぞれ挨拶をして家を出る。
最後にギルが家を出る時、…なぜか行ってほしくないと思った。
ギルといると懐かしい気持ちになるからなのか…。
大丈夫。会おうと思えば、いつでも会える。
あ、でもギルは幹部の中でも上っぽいし、忙しくてあまり会えないかな?
…うーん、まぁ!今日が最後でもないし大丈夫、大丈夫。