表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/92

勘違い。

ダリアナの話が終わり、しばらく沈黙が続いた。皆、何か思うことがあるのか空気が重い気がする…。


気まずい空気の中、私は勘違いしていたことに気づいた。

魔王の[好き]は、家族愛だと思っていたけど、恋愛の[好き]だということだ。


つまり、魔王には好きな人がいる!…かもしれない。もしくは、気になる人がいるということ。

でも、まだ確証がないから、みんなの意見を聞いてみようってことだ。


まぁ、それが分かった所で、私には関係ない話だろうけど…。

でも、私が知ってる人の可能性もあるかな?

ダリアナ、リズ、ラーナ、知ってる魔族の女性は3人だけ…。

!フローラかウィーナって可能性も!

……うーん、でも、アプローチはなかったと思うし、違う気がする…。私の知らない誰か、かな…。

人の恋愛話ってなんとなく気になるよね?ふふふ♪


「不幸にするつもりはないが…、肝に命じておこう。」


色々考えている間に、重い沈黙を破ったのは魔王だった。ダリアナに答えるように、魔王も真剣に返す。


それを聞き、ほっとしたように笑うダリアナ。私が見ているのに気づき、優しく微笑む。

私も笑い返したけど、いまいち状況が分からない…。


「話は以上だ。ご苦労だった。」


魔王がそう締めくくっる。

私が多少困惑している中、報告会は終わったようだ。


でも、誰も席を立とうとしない。なぜなら、魔王がまだいるからだ。いつもなら、終了と同時に席を立ち出ていくのに、まだ座っている。

そして、魔王の視線の先にはシズク。


終わったってことは帰っていいんだよね?

なのに…なんでみんな座ったままなの!?誰か立ってくれないと、立ちづらいじゃん!


魔王から視線を感じるし…。言いたいことでもあるの?


「…えっと、魔王様、どうかしましたか?」


このままでは、(らち)があかないと思い、聞いてみる。

魔王は一度、机に視線をうつし、再び私に視線を戻した。


「……いや。…帰るのか?」


何か悩んでいるのか、少し言いづらそうにそう言った。


言いにくいことでもあるのかな?でも、他には何も言って来ない。かといって、聞くのもな…。


とりあえず、聞かれたことに答えよう。

身分証を作って街も見れた。今のところ他に用はないから帰るつもりだ。


「身分証も作れたし、今は他に用事もないので、森に帰ろうと思います。…もしかして身分証以外に何か手続きがありますか?」


他にあるなら、済ませて帰った方が楽かもしれない。

また、ギルに一緒に行ってもらおうかな。


「……いや、急ぎするものはない。…物を売る場合、商業ギルドに登録が必要だが…。後は、冒険者ギルドくらいか…。」


「冒険者ギルド!あるんですか!?」


「?あぁ。どの国にもあるものだ。」


私の食い付き具合に、不思議そうな魔王たち。この世界の住人にとっては当たり前にあるもの、でも私にとってはゲームの中のものなのだ。興奮してしまうのは仕方がない。


冒険者ですってよ!?異世界物にはつきものだね!

いっそ冒険者になって、色々な国に行くのもいいかもしれない。


「冒険者って登録した国以外でも、依頼を受けることは出来るんですか?」


国ごとに登録ってなると面倒だからな。


「出来るはずだが…、…冒険者になりたいのか?」


意外そうに魔王が聞いてくる。


「興味はありますね。冒険者になって、色んな国に行ってみるのも楽しいかもしれません。」


「…そうか。」


魔王は一言呟き口を閉ざした。


結局何が言いたかったのかな?

内心首を傾げ、次の言葉を待っていると、ガルムが口を開いた。


「嬢ちゃん、冒険者になるのはいいが、この国で登録するのはやめた方がいいぞ。」


「え?どうして?」


どこで登録しても同じじゃないの?


「嬢ちゃんはヒューマンだからな。他の国でも冒険者として行動するなら、ヒューマンの国で登録した方が色々勘ぐられなくていいと思うぞ。」


勘ぐるって何を?

意味が分からず首を傾げていると、ルークが説明してくれた。


「ヒューマンの多くは魔族を嫌っている、と話したのを覚えていますか?」


「?うん。」


アイテムボックスの話をした時、ダリアナが言っていた。

でも、何の関係があるんだろ?


「冒険者カードには、最初に登録した国名も表示されます。だいたいは、生まれ育った国で登録するので、表示されている国=母国と思われます。

シズクはヒューマンですが、この国で登録すると、魔族の血が流れていると思われる可能性があるので、あまりいい顔はされないでしょうね。」


「それは和平を結んでる国でも?…魔族の人は他の国で冒険者の仕事はしないの?」


「いえ、他国でも魔族の冒険者はいます。和平を結んでいる国なら一応問題はないのですが…。ただ、好意的な者は少ないみたいです。ヒューマンより実力のある者が多いですから、妬みもあるのでしょうが…。」


身体能力が違うし、魔力量も違うとなると、ヒューマンからすれば不公平と思うんだろうな。


「ですが、冒険者ギルドにとっては魔族の冒険者はありがたいようです。ヒューマンでは討伐が難しい魔物などもいますから。」


「そうなんだ。…私としては魔族の血筋と思われても別にいいんだけどな。…いや、むしろその方が都合がいいのかも。私は魔族に好意的なヒューマンと仲良くなりたいし、魔族ってだけで偏見を持つような人はイヤだな。」


魔族ってだけで、個人を理解しようとしない人は論外だ。


住む場所が違えば文化は違うし、個人の性格や趣味嗜好が違うのは当たり前のこと。それを知ろうともせずに嫌う者がいるなら、仲良くなどなりたくもない。


「ふふっ、そうですか。シズクは他のヒューマンと違いますね。普通、もっと迷うと思いますが…。…魔族の仲間と思われてもいいのですか?」


楽しそうに、嬉しそうに笑うルーク。本当にいいのか?と最後の確認。でも小さな子どもに聞くみたいに穏やかな問い掛けだった。


「いいよ。私は魔族の人たちと仲良くなりたいから。それに、私にはヒューマンが魔族を嫌う理由が分からない。…怖いってだけの理由なら、今のところ私には当てはまらないしね。この3日間だけでも関わったみんなが優しいって分かったよ。…ヒューマンを嫌う人もいるけど、何かをされたわけじゃないし、これから先、何かされたとしても、個人のしたことで、魔族のみんなを嫌いになんてならないよ。」


笑顔で語る私に、みんなも微笑んでくれる。

優しい彼らに出会えてよかったと改めて思う。これからも、彼らと笑いあえる日が続けばいいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ