先のことは分からない…。
自分の考えにうんうんと満足気に頷く。
すると、ギルが可笑しいと腹を抱えて笑った。
「クククッ、何を言うかと思えば…。でも、いい考えかもな、俺たちの敵にならないし、シズクを利用しようとした奴らに一泡ふかせられる。」
「でしょ?いい考えだと思うんだよね。もしもの場合はそうするよ。まぁ、そうならないのが1番だけどね。……でもさ、実際私が敵になったって、みんなには痛くも痒くもないでしょ?」
おちゃらけるように言って、やれやれと手をあげる。
ステータスは見れないけど、それは分かる。とくに、ギルと魔王は勝負にもならないだろうな。
「そうだな。強さで言えば、俺らの方が圧倒的だからな。」
フフッ、と勝ち誇ったようにギルは笑う。でも、それはすぐに消え、真剣な目が向けられた。
「シズク、俺たちにお前を倒させるようなことはするなよ。絶対に、だ。」
…強いから私が敵になっても、彼らはどうにでも出来る。私を殺すことだって…。
もしそうなれば、優しい彼らは傷つくだろう。
私が自分の意思で彼らの敵になったら、裏切られたと、彼らの心はもっと傷つくのかな…。
「うん、大丈夫だよ。私はみんなが好きだから。だからね、心配しないで。」
私は、私とあの子たちが平和に暮らせればいいと思ってた。だから、争うつもりも、争いに巻き込まれるつもりもない。
でも、こうやって誰かと繋がりをもてば、自分たち以外のことも考えないといけなくなるんだよね。
今は魔族の人だけだけど、ヒューマンと関わりをもったらどうなるんだろ?
例えば、ヒューマンの友達が魔族を嫌ってたら?
………分かんないや。
とりあえず、中立でいよう。国同士の争いには手を出さない。それなら、どっちと仲良くしてもいいよね?
先のことは分からないんだから、仕方ない!その時になったら、また考えよう。1番は、私とあの子たちが平和に暮らせること。
次は、私の友達が傷つかないこと。身体はもちろん、心も。
「……貴女の気持ちは分かりました。とりあえずは、信じることにします…。」
渋々だが、ベトラーは納得してくれたみたいだ。
だからといって私を、いや、ヒューマンを嫌いなことに変わりはないだろう。
[信じて]、なんて簡単には言えない。少しずつ私を知ってもらって、いつか仲良くなれたらいいな…。
「では、報告会は以上で終了です。陛下、他に何かございますか?」
ベトラーが終了を口にし、最後に連絡などがないかの確認だろうか?魔王へ声をかけた。
ようやく終わる。帰ってみんなとのんびりしたい…。
「最後に1つ、皆に聞きたいことがある。」
魔王がそう言うと、幹部たちが身構えた。いったいどんな重要な案件だろうか、と。
だが、魔王が次に言った言葉に、彼らは呆然とすることになる。