ホントに姉弟?
見た目、いや種族が違うけど、姉弟なの?…もしかして、家庭の事情ってやつ?
「どうかなさいました?」
ウンウン唸っていると、ラーナが不思議そうに聞いて来た。
「えっと…、非常に聞きにくいんですけど…。その、2人の見た目が違いますよね?…それは、えっと…どうしてですか?」
聞いてしまった!?
血が繋がっていませんので。
って言われたらどうしよう…。
「どうして、と言われましても…。なんとお答えすればいいのでしょう…。」
やっぱり、複雑な家庭!?
聞いてはいけないことを聞いてしまった!?とあわあわしていると、キトが呆れたような視線を向けてきた。
「姉さん。多分、この子勘違いしてるよ。いいかい?僕たちは、ちゃんと血の繋がった姉弟だよ。魔族では種族の違う兄弟なんて珍しくないんだ。」
「え、そうなんですか?」
「そう。大体は両親の種族を継ぐけど、先祖の姿で産まれることもあるから、僕たち魔族は見た目を気にしないんだよ。」
そうなんだ。よかった〜。複雑な家庭じゃなかったよ。
「それで、姉さん。この子はなんなの?」
私が安心してる間に、キトはラーナに私のことを聞く。
「シズク様は、魔王様のお客様です。」
「魔王様の?」
「えぇ、ですからキト。失礼な態度や言葉遣いは止めなさい。」
私が魔王の客だと分かり、マズイと思ったのか口元がひくひくしている。
そして、丁寧に頭を下げられた。
「…そうとは知らず失礼いたしました。」
「あ、いえ。気にしないでください。言葉遣いもさっきのままでいいですよ。かたっ苦しいのは苦手なので。」
「あ、そう?ならお言葉に甘えて。」
「キト!」
あっさりなキトにラーナが声をあげる。
「本人が良いって言ってるんだから、問題ないでしょ?ね?」
またも同意を求めて来た。
「はい。出来ればラーナさんも。確かに、私は魔王様の客ではありますけど、私自身は一般人ですから気軽に接してください。」
にっこりと、笑い無言のままラーナを見る。
「…はぁー、分かりました。他に人がいない時だけですからね。」
仕方ないと諦めるラーナ。この数時間の間に、私がわりと頑固だとわかったみたいだ。
「妹のわがままに付き合う姉、みたいだね。」
「なら、キトさんはお兄ちゃんですか?」
「うーん、姉しかいないから妹もいいかもね。」
「そうね。シズクさんが妹なら、私も嬉しいわ。」
ほっこりとした空気になって、3人でクスクスと笑い合う。
「さぁ、お茶にしましょう。焼きたてのお菓子もあるわよ。」
ラーナがお茶を入れてくれ、2人も一緒にと誘い、話をした。
主な内容は私が読んでいた本について。
この本は魔族なら知っていて当たり前、と言われるくらい有名らしい。しかも、実話だそうだ。
「本当にあった話ってなんで分かるの?」
大昔の話なのに不思議だ。
「あーそれね。魔王様が確認したらしいよ。」
「確認?…誰に?」
キトの言葉に首を傾げると、分からないの?と言いたげな顔をされた。
「女神様にだよ。君みたいに、疑問に思う奴が他にもいてね。
本が出たのは、3代目の魔王様の時代って言われてるんだけど、僕たちの寿命って長い種族でも約800年。魔王様は1000〜2000年くらいなんだ。
当時の魔族が生きてるわけないから、正しいのか確認して欲しいってね。」
え!?魔王様、長生き過ぎない!?
でも、1000年も開きがあるのは何でだろ?
いや、それより。確かに女神様なら知ってるよね。魔王どころか、[リーリシア]を創った張本人だもん…。
「女神様に聞いたなら間違いないだろうね…。」
「そういうこと。とはいえ、作者が何を思ってこの本を書いたのか、真意は分からないけどね。」
「真意?」
「そう。この本を読むと2つの意見に分かれるんだよ。1つは、この本の魔族みたいに、ヒューマンと争うのはよくないって意見。もう1つは、ヒューマンは魔族を追い出した敵ってね。…君はどう思う?」
どうと言われても…。難しいな…。
でも…。
「本だけで判断するのは、違うと思う。ちゃんと、自分の目で見て、知って。それから、決めればいいと思う。」
「……そっか。そうだね。シズクみたいなヒューマンもいるしね。」
何を思ったのか、一瞬目を細め、キトはふっと微笑えんだ。
間があったのは、多分。
「キトはヒューマンは敵だと思ってた?」
「うん、思ってたよ。」
あっさり答えたな…。
「でも、今は違うかな。ヒューマンだからってすべてが悪じゃないって分かったし。それに魔族にだって、悪い奴はいるからね。」
困ったことにね、とキトは苦笑する。
「そうなんだ…。」
「そう。だから、ヒューマンにせよ魔族にせよ、知らない奴にはついて行っちゃダメだよ。」
ん?…あ、これは子ども扱いされてる?ラーナも頷いてるし。
「大丈夫だよ。小さい子どもじゃないんだから…。成人してるし。」
そういうと、2人が驚く。
「嘘!?」「そうなの!?」
どうやら、子ども扱いではなく、子どもだと思われていたようだ。
「私15歳だから!」
精神的には23歳だけどね。
「15?なんだ、やっぱり子どもだ。」
キトの発言に首を傾げる。
「え?15歳で成人でしょ?」
「いや、20歳でしょ?」
うーん?と、キトとお互い首を傾げる。
少しして、あ!とキトが声を出した。
「思い出した。あってるよヒューマンは15歳で。魔族とは違うんだった。」
よかった。シアが間違えたのかと思った…。一安心だ。