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昔々のお話①

昔々、魔族とヒューマンは仲良く暮らしていた。


一緒に土地を広げ、家を建て、村を作った。そして川から水をひき、土地を耕し畑を作る。

互いに力を合わせて生きていた。


昔はそんな村や町がいくつもあった。


しかし、ある村で魔族とヒューマンの子どもが喧嘩をし、それがきっかけでヒューマンは魔族を恐れるようになった。


子どもたちは食べ物を探しに森に行った。きっかけはなんだったのか。最初は口喧嘩だった。しかし、ヒューマンの子が魔族の子に手をあげたのだ。魔族の子はやり返した。だが、それがダメだった。

子どもとはいえ魔族。力の加減が上手く出来ず、大怪我をさせてしまった。


魔族の子は、意識のないヒューマンの子を抱え村に帰った。ヒューマンの子の家に着き、親に怪我をさせたことを謝った。


しかし、父親は気を失い動かない我が子を目にして、頭に血がのぼり魔族の子を蹴ったのだ。


魔族の子は自分が悪いからと抵抗しなかった。


だが、1度では終わらず、2回、3回と続き、騒ぎを聞き付けた魔族の親がかけつけた時には、魔族の子はお腹を押さえて倒れ、咳き込んでいた。


魔族の父親は子を抱き抱え、何があったのかとヒューマンの父に問うた。


自分の子に怪我をさせ意識がない。だから、仕置きをしたのだ、と答えた。


理由は分かった。だがここまでする必要があったのか。


魔族の父親はぐったりした子を母親に預け対峙した。

我が子を傷つけられ怒っているのはこちらも同じ。


今度は親同士が喧嘩を始めた。いや、喧嘩なんて優しいものではない。子を傷つけられ頭にきた魔族の父は、ヒューマンの父を痛めつけた。


これ以上は死んでしまう。周りが止めに入るも邪魔だと蹴散らされ、怪我人が増えて行く。


父さん、やめて。

母の腕に抱かれ、小さな声で子どもが父を呼ぶ。


その声で我にかえり、父は唖然とした。自分の周りの者が怪我をし倒れていたからだ。


村人の自分を見る目は恐怖に染まっていた。


もうこの村には居られない。

その魔族の親子は村を出て行った。


だが、その親子以外の魔族もヒューマンの村人には恐怖だった。


元々、魔族は力が強いと分かっていた。でも、その力が自分たちに向けられたことは今までなかったのだ。目のあたりにして思った。自分たちが一緒に暮らしているのはなんだ?と。


ヒューマンが魔族に向ける目は、恐怖や嫌悪になった。


そして、魔族を村から追い出そうとする動きがあった。


魔族たちは、ヒューマンが嫌いではなかった。でも1度出来た亀裂は塞がらず、争いたくなかった魔族たちは、大人しく村を出て行った。


そして、魔族だけの村を作ろうとしていた魔族の親子と合流し、自分たち魔族のための村を作った。


魔族だけの村。そこには恐怖や嫌悪の目を向けるヒューマンはいない。魔族たちは心安らかに暮らしていた。


そんなある日、別の村の魔族がやって来た。

自分たちをこの村に住まわせてくれ、と。


話を聞くと、魔族は狂暴だと近隣の村に噂が広がり、自分たちを見るヒューマンの目が変わっていったと言う。

なにもしていないのに、恐怖や嫌悪の目が自分たちに向けられ、さらには、お前たちは魔物だ、村から出ていけ!と石を投げつける者まで出てきた。


そんなことをされても、今まで一緒に暮らした仲間と争いたくはない。だから村を出たのだ、と。

その話を聞いていたのは、村長である、魔族の父親だ。


村長は自分たちが村を作ることになった経緯を話、彼らに謝罪した。


自分の軽率な行動であなたたちの居場所を奪ってしまった。謝って許されることではないが、自分に出来ることなら何でもする、と。


ならこの村において欲しい。そして、この村のために尽力させてくれ。


村人たちは新たな住人たちを歓迎した。

いつしか、他の村からも迫害された魔族が集まり、人数が増えたことで、土地を広げ、家や畑も増え、村は大きくなっていく。


しかし、それをヒューマンたちは面白く思わなかった。


ヒューマンの村では、魔族たちが村を出たことで、人手が足りなくなってしまった。

力仕事の大半は魔族がやってくれていたため、自分たちだけだと、時間も人数も何倍もかかるのだ。

だが、今さら戻って欲しいとは言えない。いや、言いたくないのだ。彼らは別の生き物だから。



魔族の村が出来て数年。

ヒューマンたちは土地を広げ、自分たちより豊かな暮らしをしている魔族に、最初は羨ましさが、だが、それは次第に憎しみに変わっていった。


自分たちの暮らしはさして変わらない。なぜだ?

お前たち魔族が村を見放したせいだ。


そう思うヒューマンが各村に何人もいた。そんな者たちが集まり、豊かになった魔族の村を奪うのはどうか、と計画を企てた。


近隣の村にも呼び掛け、人数を集めた。そして、村人たちは魔族の村へと向かう。

時間は魔族たちが寝静まった夜。


だが、その村には誰もいなかった。


魔族たちは知っていたのだ。ヒューマンたちが攻めて来ることを。

彼らは、耳や尾などを隠すことが出来る。そうなれば、見た目はヒューマンと変わらない。そして、ヒューマンたちはそれを知らなかった。何故なら今まで隠す必要がなかったからだ。


魔族たちは、時々ヒューマンの村に行商に行ったり、旅人として村の様子を見に行っていた。

そして、ヒューマンたちの企てを知った。

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