屋台
しばらくして、屋台が並ぶ道に来た。
美味しそうな匂いがあっちこっちからして目移りしてしまう。
「ここだ。ここの串焼きがうめーんだよ。」
「おや、ギル様じゃないですか。いらっしゃい!…ん?そっちの子はヒューマンですか?見ない顔ですね。」
店主がギルの後にいる私に気づいた。
「あぁ、初めて街に来たんだ。俺のオススメを教えてほしいって言うんで連れて来た。」
「そうですか。そういうことなら、どんどん勧めてください!ガッハッハ」
テンション高く笑うおじさん。気さくな人のようで、ヒューマンに偏見はないみたい。
「で、今日はどうします?」
「そうだな…。シズクはどうする?」
そう言われ、どんな物か見てみると、味は2種類あるようで、塩でシンプルに味付けされた物と香草を加えた物があって、どちらも串に5cm程のお肉が4つ刺さっている。厚さもあって食べごたえがありそう。
フローラたちのもいるから、7本ずつにしようかな。
「私は7本ずつください。」
「嬢ちゃんそんなに食えるのか?」
「いえ、私の家族の分です。皆と食べたいので。」
「そうか。全部で14本だな。…小銀貨4枚にまけとくよ。それと1本おまけだ。味見に食べてみな。」
そういうと、先に1本渡してくれた。残りは持ち帰り用に包んでくれるようだ。
「ありがとうございます!」
1本が銅貨3枚。300円の14本で4200円。200円まけてくれたことになる。
皆には悪いけど、味見にってくれたんだから食べてみないとね♪
パクっ!
「どうだ、ウマイだろ?」
ギルに聞かれ、コクコクと首を縦に動かす。呑み込んで答えた。
「うん、美味しい!厚いから噛みきれないかと思ったけど、思いの外柔らかいし、塩だけだからお肉の本来の美味しさも分かるんだね。」
ウマイのは当然だ、と言わんばかりに胸を張るおじさん。
「気に入ったか?」
「はい!街に来た時は、また買いに来ますね。」
「おう、大体この辺で開いてるからな。いつでも来な!」
そう言って笑ってくれるおじさんにお金を払い、次に行く。
ちなみにギルは5本買っていたけど、屋台の前でペロッと食べていた。お金もギルが私の分まで払おうとして、一悶着あったのだが、「案内してもらうのだから私が払う!」と押しきりギルの分もおじさんに渡した。
やれやれと、まるで子どもが「自分がするの!」と駄々をこねた時のような生暖かい目で見られたが…、気にしないことにする。