表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/92

行ってきます

「あんまり気にするな。あいつはああいう奴なんだよ。」


慰めのつもりなのか、グリグリとギルは頭を撫でる。


「仲良くなれないかな…。」


「…なりたいなら頑張ればいいだろ?」


ギルの言葉に弾かれたように顔を上げる。


「うん、そうだね。頑張る!」


吹っ切れたように笑う私に、優しい目が向けられる。


「……ギルって、弟か妹がいるの?」


ギルは、驚いたように目を見開いた。


「…いや、いない。どうしてだ?」


「うん?なんとなくお兄さんっぽいから?」


「…………。」


無言になったギル。言ってはいけないことを言ったのかもしれない。


「あの、気分を害したなら、ごめんなさい…。」


「いや、そうじゃないんだ…。謝らなくていい。不安にさせて悪かったな。」


そう言って、また頭を撫でる…。でも、その顔は少し寂しそうな、…複雑な表情だった。


「そういや、これからどうするんだ?」


ギルは、撫でるのを止め、さっきの表情が嘘のように笑顔になった。


…気にはなるけど、聞かない方がいいよね?


「えっと、とりあえず身分証を作りに検問所に行くよ。後は、…とくに決めてない。」


「そっか。誰かと行くのか?」


そういえば、決めてないや…。


「えーと。……誰か着いてきてもらえますか?」


「私が!」


と、ダリアナが真っ先に反応した。が!仕事が溜まっていると言っていたので、「ダリアナは仕事があるんでしょ?頑張ってね!!」と、声援を送りつつ断る。


ガックリ、とダリアナはうなだれているけど、こればかりはどうしようもない。


でも、他の皆も仕事があるのか、顔を見合わせて決まりそうにない。


仕方ない、案内なしで行くか。


そう思っていると、ギルが仕方ないな、と苦笑を浮かべ言った。


「…俺と行くか?買いたい物もあるし、ついでだ。」


「いいの?仕事は?」


「俺、今日休みなんだよ。暇潰しに案内してやる。」


「…じゃあ、お言葉に甘えようかな。よろしくね!」


「あぁ、まかせとけ。」


ギルが案内役に決まった所で、裏庭から移動。

裏口から城内に入り、廊下を進む。


魔王の城と言うと、暗いイメージだけど、そんなことはなく。

窓から日の光が入り明るい廊下。白を基調にした壁、所々に花が飾られていて、ほんとに魔王の城かと疑いたくなるほど居心地が良さそう。……だけど。


当然、城内には魔族の人たちがいるわけで…。魔王たちと一緒にいる私に、様々な視線が向けられる。


居心地のいいとは言えない視線にさらされながら、しばらく歩いていると、どうやら表に出る扉に着いた。


その扉を開け、外に出ると門があり、そこに門番らしき魔族が数人立っている。


彼らは、魔王たちが来たことに気づき一礼した後、定位置に戻る。


皆に送ってもらい門の前に来て、いよいよ街に行ける!と興奮気味の私。そんな私の耳に、魔王とギルの会話が聞こえた。


「では魔王様、行ってまいります。案内が終わりましたら、城にお連れしてよろしいですか?」


他の魔族の前だからか、さっきまでの砕けた感じがなくなった。


魔王は1つ頷く。


「あぁ。帰ったら私に知らせろ。」


「かしこまりました。では、行ってまいります。」


「い、行ってきます。」


魔王に一礼し、歩き出したギルの後を慌てて追いかける。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ