売るの?
「売る?…えっと、ルークさんに、ですか?」
「いえ、私にではなく商品としてです。とりあえず、シャンプーですね。売れると思いますよ?」
…………なーに言ってんの。
「いや、ダメでしょ…。」
「何故ですか?」
なぜ断るのか分からない、といった顔をしている。
「異世界の物ですよ?それに、私が作れるわけじゃないし…。もし何かあった場合、責任取れません。…体質によっては合わないこともありますし。」
「貴女は日頃から使っているのでしょ?それに、ダリアナとリズも使えましたし、問題ないのでは?」
引き下がる気はないのか…。
「…なんで売れると思うんですか?」
「ダリアナが気に入ったようなので。」
……はい?え?つまり、何?ダリアナのためってこと!?きゃー!
「ダリアナは自慢せずにはいられない性分ですから…。それに感化される者も多くいます。遅かれ早かれ、貴女にお願いすることになると思いますよ?」
…違った。ちょっと期待したのに…。
流行の元になる人(魔族)ってことかな?
「うーん、あ!皆さんの知り合いの方にも試してもらって、評判がよかったらってことにしませんか?」
「…そうですね。使ったのは2人だけですから、試してみるのもいいかもしれません。…男性でも使える物ですか?」
「え?まぁ、使えますけど。…私たちが使っているのは女性向けで、花の香りなんです…。スピネルたち用に香り付けされてない物もお風呂場にありますよ?」
「違う物なんですか?」
「用途は同じで、作っている会社、…まぁ店が違ったり、成分、…材料?が違ったりですかね?」
「そうですか。…では、香り付けされていない方にします。」
どうやら、自分でも試すようだ。
使い方は…。ダリアナみたいに洗ってあげる訳にはいかないし…、見るのもダメだし…。
「ナイト、使い方教えてあげて?」
ナイトに丸投げしよ!
「分かった。」
話が終わり、2人はお風呂場に行く。それからしばらくして思った。
あ、普通に言って説明すればよかっただけじゃん!
……まぁ、いいか!
ルークたちを見送った後、ダリアナが興味深そうに聞いてきた。
「いくつも種類があるの?」
「はい。色々ありましたよ。私が持ってるのは、後3種類ですけど。」
「普通それくらい持っているものなの?」
「いや、どうかな?…私の場合、別のを使ってみようと思って買って、でも実際使ったら前のがいいなって。それの繰り返しが何度かあって…。」
「ふーん。ねぇ、他のも試してみたいわ。分けてくれる?」
「いいですよ。」
あ、でも何に入れようかな…。
そういえば、ポーション用の空き瓶があったな。それでいっか!後で準備しとこ。
しばらくして、ルークたちが戻って来た。
「どうでしたか?」
「そうですね…。すっきりした気がします。後、指通りがいいみたいです。」
肩まである髪を触りながら、感想を言うルーク。
「痒みがあったりは?」
「ないですね。」
そっか…。問題ないのか…。
いや、あったらあったで困るけどね。
「シズク?どうしたんだ?」
私の微妙な空気を察したのか、獣姿のスピネルが私の横に来てお座りし、ジッと私を見る。私はそんなスピネルの頭をなでなでした。
うん、かわいい。
「………。なぁ、もういいだろ?」
長めに撫でていたら、珍しくストップがかかった。撫でるのを止めると、振っていた尻尾がだらーんと垂れ、自分で止めといて残念そう。
うん、かわいい!
「で、どうしたんだよ?」
「ん?なに?」
「いや、なに?じゃなくてな…。」
??…あ、もふもふしてて忘れてた。
「あーいや、色々考えると…。……本当に売れるとして、用意出来るのは1日に容器10個分、月に300個出来るとして。…でもね、毎日使うと一月くらいでなくなるからさ。家族で使うならもっと早いか…。まぁ、気に入ったからまた買うってなった時に、商品が追いつかないんじゃって思ってね。」
どういう人たちに売るのかにもよるけど、広いと行き渡らないだろうし。消耗品だから起動に乗れば、辞める訳にいかなくなるだろうし、私が死ぬまで毎日の作業になる可能性が。……うん、面倒だ。
「とりあえず、今は貯めておけるような容器もないので、売るっていうのは保留でお願いします!」
ルークに勢いよく言ってみると、考える素振りをした後、仕方ないか…。といった顔をした。
「そうですね。色々考えていきましょうか。」
ほっ。とりあえず話は終わったかな?そのまま流れてくれればいいけど…。