2人の会話
シズクが洞窟に向かう少し前。
*フローラと魔王の会話*
「魔王様、昨夜はありがとうございました。」
フローラは魔王に近づき、軽く頭を下げ小声で話しかける。
「…なんの話だ。」
「あら、お忘れですか?私たちの大切なシズクを泣かせておいて。」
そう言われ、魔王は眉間にシワを寄せた。
「主を泣かせた私に、なぜ礼を言う?」
「…シズクは私たちの前では泣かないのです。不安や寂しさでいっぱいでしょうに…。我慢しているようで…。シズクにとって私たちは、守るべき存在、なのでしょう。」
「なぜだ?主を守るのがお前たちの役目だろう?それに、お前たちの方が強いはずだ。」
「はい、その通りです。…ですが、シズクにとって、私たちは[子]なのです。シズクは親として、我が子を守らなければと思っているようで…。」
頬に手をあて困っている、でも嬉しそうでもあるフローラ。
「…お前たちにとっては、何なのだ?」
「そうですね…。主であり、母であり、姉であり、妹でもある。…大切な…、大切な方です。」
ふわりと、花が咲くようにフローラは微笑み、その視線はシズクに向けられていた。
「本当なら、私たちにも弱い所を見せて欲しいのですが…。…今回、少しでも弱音を言えてよかったと思っていますので、魔王様には感謝しております。」
魔王に視線を戻し言うが、先ほどの笑みは消えていた。
本当なら、自分たちでどうにかしたかったのだろう。
「あら?どこに行くのかしら?失礼いたします。」
フローラはシズクが森の奥に進むのに気付き、後を追った。
魔王はそれをただ眺めていたが、その視線はシズクに向けられている。
「私は…。…私にとってはなんだ…?」