??? side ①―2
*??? side*
また、視界が歪み、次にいたのは横断歩道。
信号が赤に変わり、青年は信号待ちをしている。
手には小さな紙袋。
青年はそれを愛おしそうに見ていた。
信号が青になり、気づいた青年は歩き出す。
半分ほど渡った時だった。
キキーッ!……ドン!
音がして、何かがぶつかった。
さっきまで青年を見ていたのに。なぜ、俺は倒れている?
視線を動かすと、青年が持っていた紙袋を握っていた。
この体は青年のものか?
痛い…。体が動かない…。俺はこのまま死ぬのか?……イヤだ!しずく!俺の大切な妹。このまま会えなくあるなんてイヤだ!!
誰か、助けてくれ!最後に一目だけでもいい!しずくに会いたい!頼む誰か……だれ…か…。し…ず…く…。
青年の意識は闇へと沈む。
――――――――――――――――――――――――――――――
ガバッ!
ハァハァハァッ…。
「今のはなんだ…。」
飛び起き、まずは落ち着こうと荒い呼吸を整える。
ただの夢だ、と片付けるにはリアル過ぎる夢。
最後に聞いた青年の思いに、胸が苦しくなる。
「しずく…。妹…。………俺の?」
いや、俺に妹はいない…。
俺の両親はもういないのだから…。
それにあの景色。あんな場所、この世界にはないはずだ。
なら、なぜ見たこともないはずの物の名が分かった?
「…なぜ、俺は…あの子を…愛しいと思った?」
なぜ、涙が出る?
青年の思いに流されているのか?
「しずく…。」
名を口にすれば、心が暖かくなり、ふっと笑みがこぼれる。
「…しずく。………シズク?確か、あいつが言っていた名だ…。偶然…か?」
もう一度呟き。ふと、思い出した。
胸がざわつく。
自分も一緒行けばよかった…。そう後悔するなど、思わなかった。
…まぁいい。いつか、会う機会もあるだろう。
今は、この愛しい気持ちを胸に抱いて、もう一度眠ろう。
…あの子が笑っている夢を見れるように願いを込めて…。