??? side ①―1
*??? side*
夜が深け、眠りにつき、夢を見た。
高い建物、道を走る何か、ラインの引かれた道。
それらを空を飛んでいるのか、落ちているのか、分からないまま上から見ていた。
そんな状況でも頭はいたって冷静だった。
知らない場所だ…。いや、知っている?
ビル、車、横断歩道。
なんだ?ここはどこだ!?
知らないのに知っている光景に、混乱する。
その間にもだんだん地面が近づく。
着地したのは、2階建ての一軒家の前。
ガチャッ
呆然と家を眺めていると、扉からランドセルを背負った男の子が出て来た。
「行ってきます。」
家の中に向かい、そう言いながら道に出る。
「にーに!まって!しずもいく!!」
「こーら。しずくちゃんはお留守番よ。」
次に出てきたのは、小さな女の子と母親だろう。
「やー!にーにといっしょなの!!」
そう言うと、女の子は男の子にしがみつく。
「しずくちゃんはまだ学校には行けないのよ?」
「やー!!」
「困ったわねー。」
何を言っても離れようとしない女の子に、母親は困ったと頬に手を添え、考える素振りをしている。
「しずく、帰ったらたくさん遊んであげるから。ね?」
視線を合わせるために男の子はしゃがみ、女の子に笑顔で言った。
「……ほんと?」
「うん。」
「たくさん、た〜くさんよ?」
「いいよ。約束しよっか?」
そう言うと、互いに小指を出し。
「「ゆーびきーりげーんまーん、うーそついたーら、ほっぺたつーねり。ゆびきった!!」」
「えへへ。やくそくね!」
「うん!…それじゃあ、行ってくるね。いい子にしてるんだよ?」
「うん!いってらっしゃい!!」
歩き出した男の子が見えなくなるまで、女の子は手を振っていた。
その光景をただ眺めていると、グニャリと世界が歪む、自分がどこにいるのか、平行感覚が分からず身体がふらつく。
だが、それは長くは続かず、何事もなかったようにさっきと同じ家の前にいた。
ガチャッ、とまた扉が開く。
「行って来ま〜す。」
出てきたのは、制服を来た少女。
「しずく、ストップ!途中まで一緒に行こう。」
次に出てきたのは、スーツを来た青年だ。
「うん!」
青年に笑顔を向ける少女。互いに微笑み並んで歩く。
他愛ない話をしながら歩を進める。
「そうだ。誕生日、何が欲しい?」
「ん?うーん、何でもいいよ?強いて言うなら兄さんの財布に優しいもの、かな?」
「そんなの気にしなくていいんだぞ?」
「なに言ってるの!?去年、ブランドのカバンかな?って言ったら、店に連れていかれて、30万近いのにホントに買おうとして、ビックリしたんだからね!」
「…欲しいって言ったじゃないか…。」
「うっ。確かに言ったけど…。とにかく!兄さんは私を甘やかし過ぎ!欲しいって言ったからって、なんでも与えちゃダメなの!」
「分かったよ。…でもなー甘やかすのは兄の特権だからなー。止めるつもりはない!」
「……ハァー、分かった。兄さんはそういう人だよね…。」
「イヤか?」
「…イヤならこうやって一緒に歩いてないよ…。」
「ふっ、俺の妹は可愛いなー!!」
「もう…。それじゃあ、ここまでだね。…行ってらっしゃい、兄さん。気を付けてね!」
「あぁ、しずくも気を付けてな。」
そう言って、青年は少女の頭を優しく撫でる。
「ふふっ、行って来ます!」
二人は別々の道に歩き出す。