え?泊まるの!?
「そうか…。なら、明日湖の散策しようぜ!俺ら休みだしな!ってことで、今晩泊めてくれ!」
え?なぜ!?
「ガルム!迷惑よ!急にそんなこと言うなんて…。」
「何言ってんだよ!この森に入れる機会なんてないんだぞ!?噂も気になるし、見て回りたいじゃねーか!」
リズの正論にガルムは食って掛かる。
「噂?」
首を傾げているとルークが答えてくれた。
「この森の結界は魔石が作用している、と言われていまして。規模からしてかなりの量の魔石があるのでは?というものです。」
「へぇー、それが湖にあるってことですか?」
「確証はありません。ただ、ドラゴンの多くは死期が近づくと、この森に帰るようなので…。この森のどこかにはあるかもしれませんね。」
「ん?ドラゴンと魔石って関係があるんですか?」
「ドラゴンの亡骸の近くには、上質な魔石が出来るんですよ。…ドラゴンの強大な魔力が地に流れて出来る、と言われています。」
「へぇー。…なら、その場所はドラゴンのお墓ですね。安らかに眠れるように守っているのかも。」
微笑む私に対し、ルークは驚いたような表情を浮かべている。
「どうかしましたか?」
「……いえ、そう考えたことはありませんでした…。魔石は私たちにとって資源でしかないので…。とくにドラゴンのものは貴重で価値が高いですから…。」
「なら、魔石の採取は、ある意味墓荒らしってことか?」
「でも、私たちが行ける場所は、この森みたいに結界なんてないわよ?…なぜかしら?」
ルークの言葉にガルム、ダリアナと続き、なぜかダリアナは私に疑問をぶつける。
なんで私を見るの!?答えろってこと!?知らないよ!
…とはいえ、ダリアナ以外の視線も感じるし、何かは言った方がいいのか?
「……たぶん、ドラゴンたちは、この世界の生活に必要だって理解してて、自分のなら使っていいよって、ことでは、ないですか…ね?」
しどろもどろな答え方にはなったけど、これ以上の解答は望まないでよね!?私はドラゴンじゃないんだから!分からないよ!
「そうね…。見つかっているのは、生活に使われる属性のものがほとんどだもの。妥当な所でしょうね。」
ほっ、突っ込まれなかった。
「ま!森で見つけても取らなきゃ問題ないだろ?…ってことで、探してみようぜ!!」
…きっとガルムは1人でも行くんだろうな。まぁ、その内行こうと思ってたし、行くことに関しては、反対する理由ないんだけど…。
「…魔王様はどうしたいですか?」
やっぱり、彼らのボスの意見も聞かないとね!
「………好きにすればいい。急ぎの仕事はないからな。」
「決まりだな!世話になるぜ!!」
あ、そうですか…。
部屋はなんとかなるとして、夕飯とかどうしよう…。
とりあえず、簡単に部屋の説明をして、部屋割をしてもらった。
空いているのは、1階の2人部屋が2つと、2階の1人部屋が3つ。
湖の見えるバルコニー付きの部屋に魔王が、真ん中にリズ、残りがダリアナ。
2人部屋は、ルークとレグルが相部屋。
ガルムは1人だ。理由はうるさいから、だそうだ。
魔王一行が部屋を決めている間に、私たちはこっそり話し合いをしていた。
「本当によかったのか?」
ナイトが大丈夫なのか?と心配そうに聞いてくる。
「だって、断る理由ないし…。」
「今からでも追い出せばよろしいのでは?」
野宿でもさせればいいと、彼らが泊まることに反対のベリル。
そんなベリルを不思議に思うスピネル。
「??なんで、ベリルはそんな敵視してんだ?」
何で分からないの?とスピネルに呆れた目を向けるウィーナ。
「見てれば分かるじゃない…。」
「は?分かんねーよ!?」
「もう!鈍感ね!!」
分からないスピネルと、自分で気付きなさい!と教えようとしないとウィーナ。
言い合う2人を見守り、穏やかに微笑むフローラ。
「ふふっ、賑やかで何よりですね。」
そうだね。と、少し呆れつつも、私も微笑む。
とはいえ、いつまでもそうしている訳にもいかない。
「とにかく、一晩だけだから。みんな、よろしくね。」
改めてそういうと、皆1つ頷き了承してくれた。
『わかった〜!クア、おてつだいするよ!なにする?』
「クスッ、ありがとね。いつも通りお願い。」
『は〜い!』
微笑ましくクアを見ていると、フローラが耳打ちする。
「…シズク、畑や増えるアイテムに関しては内密にした方がいいのでは?」
「確かに…。畑に結界を張る?でも今からだと怪しいかな?うーん…。…でも、まだ見られてないし、今の状態(取り尽くした)を見られずに、朝を迎えれば大丈夫でしょ!」
下手に隠すと、ボロが出そうだし…。
階段に行くまでに、裏庭が見えるガラス戸があるけど、出なければ見えない!…はず。
まぁ、バレてもこの人たちが誰かに言いふらす、なんてしないと思うけど。いっそ、言った方が楽かな?
…よし、なるようになるってことで!流れに任せよう!