ここはどこにあるの?
まぁ、私がアイテムボックスを使えることに驚いた理由は分かった。
呆れてたのも、私にというよりシアに対してみたいだし。
とはいえ
「今後は人前で使うのはやめた方がいいかな…。」
ポツリと出た呟きをダリアナが拾う。
「あら、使っても大丈夫よ。ただし、ヒューマンの前で使う場合は、貴女に魔族の血が流れている、と思われても良ければだけど。」
なんか引っ掛かる言い方だな…。
「…魔族の血が流れていたら、何か不都合があるんですか?」
「あら、だってヒューマンの多くは魔族を嫌っているもの。嫌いな魔族の血が流れている、つまり見た目は同じだとしても、違う生き物だと認識している者が多いのよ。」
「違う生き物?……もし家族がそうだった場合は?」
「家族?そうね…。産まれた時の見た目にもよるかしら。先祖帰りで、見るからに魔族の血が入っていると分かれば、子を捨てる親はいるわ。…正直、空間魔法は難しいところね。産まれてすぐに分かるわけではないし…、便利だから一応受け入れられてはいるけど。毛嫌いしている人はいるわね。」
「そうですか……。女神様は、一部の国を除き、魔族とヒューマンの関係は良好って言ってましたけど、違うみたいですね…。」
「一応、和平を結んでいるからでしょうね。でも、一人一人の感情は違うものよ…。」
ダリアナが顔を伏せる。
怒っているのか、悲しんでいるのか、私には分からない…。
「だが、昔よりはマシだ。今は魔族とヒューマンが共に暮らしている街がある。すべてのヒューマンが魔族を嫌っているわけではないからな。」
「街?」
レグルが話を変え、私は街に興味を持った。
「あぁ、魔族とヒューマンの地の境にある、ペンタスと言う街だ。そこでは、種族関係なく、様々な者が暮らしている。」
「へぇ〜行ってみたいな!」
目を輝かせる私に、レグルは優しい目を向ける。
「街からだが、行くには馬で10日はかかる。まぁ、機会があれば行ってみるといい。」
馬で10日か…、結構かかるな…。
そもそも、この森ってどこにあるんだろ?
シアが、街まで歩いて1時間くらいって言ってたけど…。
「あの、この森に近い街って、魔族とヒューマン、どっちですか?」
「魔族の街だ。この森は城の裏側に位置するからな。」
「城?…魔王様の?」
「あぁ。」
レグルが頷く。
「ヒューマンの国はどこにあるんですか?」
「ペンタスより更に先だな。」
ってことは、ここは魔族領?
ヒューマンに会う確率、すっごい低いんじゃ…。
シアって、私をヒューマンと関わらせる気がないのか?
いや、利用されたくないから関わりたくないとは言ったけど、極端過ぎると思う…。
「どうした?……やはりヒューマンの方がいいか?」
考え込んでいるとレグルが心配そうに伺う。
「あ、いえ。知らずに街に行ってたら、不審者に思われたんじゃないかなって。魔族の街ならヒューマンはいないんでしょ?」
「いや、数は少ないがいる。…ただ、街に入るには身分証がいるんだが…。」
「え!?身分証…、持ってないです…。」
ガックリと肩を落とした。
「大丈夫よ。お金を払えば、検問所で発行してくれるから。」
そう、リズが教えてくた。
「……でも、あなたの場合、すでに入っていると言えるのよね…。」
ん?どういうこと?
「入ってる?」
「言ったでしょ?ここは城の裏側って。簡単に言えば、森から街に出ようと進むと、着くのは城の裏庭よ。」
「………え?それ大丈夫なんですか?不法侵入になるんじゃ…。」
「…そうね。ヒューマンが城に来るなんて、ないに等しいから…。あなたのことを聞いていた幹部たちならともかく、他に見つかれば捕まって、最悪殺されていたかも…。」
リズが物騒なことを口にする。
…………おかしいな。普通の生活を望んだのに、命の危機が思いの外近くに…。魔王一行が来なきゃどうなってたか……。怖っ!
「…皆さんが来てくれてよかったです。知らずに行っていたら、どうなっていたか…。」
最悪の事態を考え、遠くを見つめる私の耳に、魔王の静かな声で言った。
「…そうだな。女神から知らせがあったとはいえ、こうして話しをする事はなかったかもしれない…。」
ゆっくりと魔王に目を向ける。
それって……。やっぱり死んでたかもってこと!?…いや、さすがに…ね?
すぐにってことはないよね?一応、取り調べしてくれるだろうし、その間に魔王に知らせが行けば大丈夫だったよね!?
………とにかく、街に行こうって思わなくて良かった!!
危機な目には合いたくないし、敵と思われたくもないからね。
一旦落ち着こうと目を瞑り、深呼吸。
目を開けると魔王がこちらをじっと見ていた。
………なんだろ?
「えっと、何か?」
「……いや。」
目をそらし、無言になった魔王に首を傾げる。
そこに、タイミングよく?ガルムたちが戻って来た。
「おーい、出来たぞ!嬢ちゃん、これ焼いて食おうぜ!!」
そう言い、肉の塊を1つ渡された。
「あ、はい。ありがとうございます。焼くだけでいいですか?味付けは?」
「なんでもいいぜ?ガッツリ食いたいな!!」
じゃあ、ステーキでいいか…。
厚目に切って、表面焼いてオーブンだな。
「分かりました。」
話に夢中で止まっていた手を動かし、ステーキを焼いている間に、野菜やパンなどを切り、薄切りにした肉を炒める。味付けは塩コショウと醤油などで甘辛くした2種類。ドレッシングも用意してサンドイッチの準備は終わりだ。