お客かな?
さて、スピネルとナイトが戻って来る前にお昼作っとこ!
この数日、暇だからパンを作って過ごしてるんだよねー。
簡単にサンドイッチにしようかな?好きな具を、自分で挟んで食べられるようにしよ!まずは野菜からだ。
アイテムボックスから野菜を出そうとした時、違和感を感じ、ピタッ、と動きを止め、辺りの気配を探る。
森の結界の近くに、誰かが来たら分かるようにアイテムを置いていたのだが、それが反応したようだ。
スピネルたちではないな…。
「お客さんが来たみたい。」
私の言葉に皆がこちらを向き、フローラが首をかしげる。
「例の魔王でしょうか?人数は分かりますか?」
私は再び、気配察知に集中し、人数を探る。
「…6人だね。この中に魔王がいるのかな?」
「ですが、この森に入る許可を持つ者が、他にいる可能性もあります。警戒はしておきましょう。」
ベリルの言う通り。私たちはドラゴン以外、許可を持つ者を知らない。
…でも、魔王はなんで入れるんだろう?
ドラゴンたちはここで生まれたらしいけど…。………もしかして…、魔王も…?
「もう近くまで来ていますね、どうしましょうか?……シズク?」
「え?あっごめん。なに、フローラ?」
考え込んでいた私に、大丈夫ですか?と心配顔のフローラ。
大丈夫。と頷き、もう1度言ってもらう。
「近くまで来ているようですが、どうしましょう?」
うーん、赤竜が魔王が来るって言ったのは、シアが魔王にも私のことを話したってことだよね?
なら、ドラゴンたちみたいに様子見に来ただけかも、構える必要はないかな?
魔王じゃなかったら……。その時考えよう!
「せっかく来てくれたし、会うよ。今のところ、敵意は感じないし、ドラゴンたちみたいに様子見に来ただけだよ。…多分。」
最後は小声で言ったのに、ベリルには聞こえていたようで…。
「多分、ですか…。そうですね、相手の真意が分からない以上、私たちが悩んでも解決しません。
(…それに、相手が誰であれ、あなたを害そうとするなら、容赦はしない。)」
最後、ベリルが何か言ったみたいだけど、聞き取れなかった。一瞬、雰囲気が変わったような…。
「?なんて言ったの?」
聞き返した私に、ベリルは優しく笑う。さっきのは気のせいかな?
「誰が相手でも、あなたを守る、と。」
私は少しびっくりし、固まる。でも、すぐに「ありがとう。」と、笑顔を返した。
が、内心は。
(きゃー!!聞いた!?聞きましたか!?奥さん!!
ベリルが!うちのベリルが!私の子が、男前に成長しましたよ!!
いやーこれは女性にモテるだろうなー、詐欺をしないか心配なレベルだよ!
…………落ち着け、奥さんって誰だ…。冷静になれ…。)
と、暴走していた。
「もう家の近くだね。出迎えようか?」
気を取り直し、クア以外を連れ、外へ出る。